13 / 241
来た来た!
しおりを挟む
真夏の夜のあの日から、自分はコレが恐怖の大魔王だ。
外灯に虫が寄っていくのは普通。そのことには気にも留めていなかったが、そのうちの一匹がやけにテカテカしているのに気づいた。それが何故か、外灯から離れてこちらに飛んでくる。だいぶ離れているはずの自分の方に、何故か飛んでくる。こちらに来るたびギランギランしているのがはっきり見える。なんだあの羽虫?なんであんなテカって‥‥‥‥。
正体が解る範囲に飛んで来た時には、声にならない悲鳴が─────。
「─────はっ!思い出しては駄目よっ私!!─────あっ」
自分で自分を抱きしめていたら、何故か落下が始まった。
投げた大岩はこの窪みを支えていた一部で、それを無理やり引っこ抜いた訳で。
絶妙なバランスを保っていたこの場は、自分と共に崩落した。
「あ~びっくりした」
普通の人間ならば、ただでは済まない高さの崖も、今の自分にはちょっと靴が汚れた程度で済んでしまった。「は~やれやれ」と靴についた土を払っていると。
─────カサカサカサカサ
そいつは頭部を失ってなお足が動いていた。
「─────~~~~~っっっ(声にならない悲鳴)!!!」
─────問答無用で火を放った。
ゴオオォォと燃え盛る炎の中で、足のようなものがまだ動く。
「やだ!火力が足んない!あ、風だ風!」
ザアァァァと炎を囲むように大量の風が取り囲み、渦を巻きだした。炎プラス風
「あ、火災旋風だこれ‥‥‥‥」
更に勢いを増した高温の炎の中、奴の姿はやっと原型をとどめることなく崩れ去ったと同時に炎の柱も消えた。あ~よかった~。火消えなかったらどうしようかと思ったよ。
「‥‥‥‥その妙な気配。異世界人か」
突然話しかけられてそちらを向けば、さっきの獣が力なく頭を上げていた。
だいぶあちこちやられている様子から、立ち上がることすら出来ないようだ。なにより、いまだに血がふきだしていて、痛々しくって見ていられない。
ピコっとまた画面が出現して『フェンリルっすよ!フェンリル!この大きさから長命種っすね!これぐらいだと意思疎通ができますよっ!』えらい興奮した『鑑定』が出てきた。なにコイツ、ミーハーなの?とはいえ自分もファンタジー要素にテンションがだだ上がりだ。
「会話できるんだ。ね、傷直してみてもいい?」
「できるのか‥‥‥‥?」
やった事ないけどね~、と言いながら初めての『治癒』を使ってみた。みてもいい?って言ったじゃん!
─────結果。なんと無事出来ました。
しかし、獣が寝ているところを中心にしてお花畑が出現し、なんともファンシーな光景ができあがってしまった。
そよそよそよぐお花一杯の中心に寝ころぶフェンリル‥‥‥‥。あれ?これ無事じゃない?
「なんか釈然とせんが、あそこまで負った我の傷を直してくれたからには、礼を言おう」
あ、出来たんだ。実験台にしたのは内緒だ。なんかちょっと申し訳ない気分だけど。そんな気持ちを察知したのか『ナビ』が出現する。
『アレを差し上げてみてはどうですか』
おお、そうだな。いい事言う(?)なお前!
「傷は塞がっても、流れた血とか体力はすぐに戻んないでしょ?こういう時は甘いものよね!」
さっきしまった桃を、再びアイテムボックスから取り出す。
「─────お主、それはっ」
「はい、あ~ん『元気にな~れ』」
開いた口におまじないをしながら、桃ちゃんを放り込んだ。
フェンリルが思わず口を閉じた瞬間、─────カッ!と全身が白く発光した。
─────光るんかいっ!
外灯に虫が寄っていくのは普通。そのことには気にも留めていなかったが、そのうちの一匹がやけにテカテカしているのに気づいた。それが何故か、外灯から離れてこちらに飛んでくる。だいぶ離れているはずの自分の方に、何故か飛んでくる。こちらに来るたびギランギランしているのがはっきり見える。なんだあの羽虫?なんであんなテカって‥‥‥‥。
正体が解る範囲に飛んで来た時には、声にならない悲鳴が─────。
「─────はっ!思い出しては駄目よっ私!!─────あっ」
自分で自分を抱きしめていたら、何故か落下が始まった。
投げた大岩はこの窪みを支えていた一部で、それを無理やり引っこ抜いた訳で。
絶妙なバランスを保っていたこの場は、自分と共に崩落した。
「あ~びっくりした」
普通の人間ならば、ただでは済まない高さの崖も、今の自分にはちょっと靴が汚れた程度で済んでしまった。「は~やれやれ」と靴についた土を払っていると。
─────カサカサカサカサ
そいつは頭部を失ってなお足が動いていた。
「─────~~~~~っっっ(声にならない悲鳴)!!!」
─────問答無用で火を放った。
ゴオオォォと燃え盛る炎の中で、足のようなものがまだ動く。
「やだ!火力が足んない!あ、風だ風!」
ザアァァァと炎を囲むように大量の風が取り囲み、渦を巻きだした。炎プラス風
「あ、火災旋風だこれ‥‥‥‥」
更に勢いを増した高温の炎の中、奴の姿はやっと原型をとどめることなく崩れ去ったと同時に炎の柱も消えた。あ~よかった~。火消えなかったらどうしようかと思ったよ。
「‥‥‥‥その妙な気配。異世界人か」
突然話しかけられてそちらを向けば、さっきの獣が力なく頭を上げていた。
だいぶあちこちやられている様子から、立ち上がることすら出来ないようだ。なにより、いまだに血がふきだしていて、痛々しくって見ていられない。
ピコっとまた画面が出現して『フェンリルっすよ!フェンリル!この大きさから長命種っすね!これぐらいだと意思疎通ができますよっ!』えらい興奮した『鑑定』が出てきた。なにコイツ、ミーハーなの?とはいえ自分もファンタジー要素にテンションがだだ上がりだ。
「会話できるんだ。ね、傷直してみてもいい?」
「できるのか‥‥‥‥?」
やった事ないけどね~、と言いながら初めての『治癒』を使ってみた。みてもいい?って言ったじゃん!
─────結果。なんと無事出来ました。
しかし、獣が寝ているところを中心にしてお花畑が出現し、なんともファンシーな光景ができあがってしまった。
そよそよそよぐお花一杯の中心に寝ころぶフェンリル‥‥‥‥。あれ?これ無事じゃない?
「なんか釈然とせんが、あそこまで負った我の傷を直してくれたからには、礼を言おう」
あ、出来たんだ。実験台にしたのは内緒だ。なんかちょっと申し訳ない気分だけど。そんな気持ちを察知したのか『ナビ』が出現する。
『アレを差し上げてみてはどうですか』
おお、そうだな。いい事言う(?)なお前!
「傷は塞がっても、流れた血とか体力はすぐに戻んないでしょ?こういう時は甘いものよね!」
さっきしまった桃を、再びアイテムボックスから取り出す。
「─────お主、それはっ」
「はい、あ~ん『元気にな~れ』」
開いた口におまじないをしながら、桃ちゃんを放り込んだ。
フェンリルが思わず口を閉じた瞬間、─────カッ!と全身が白く発光した。
─────光るんかいっ!
343
あなたにおすすめの小説
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜
カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。
その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。
落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる