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第2話 トラックとかタクシーの運転手はコミュ力高いイメージ
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「思ったより快適だな、このトラックとかいう乗り物は」
「ええ、馬車より揺れませんね。それに早いです」
「俺もちょっとそこは驚いている」
整備されているとはいえ土丸出しの地面なのに、どうして全然揺れないのだろう?
「元々揺れない乗り物ではないのか?」
「うーん、まあちゃんとサスペンション装備してるから揺れる方じゃないけど、ここまで揺れないのはちょっとおかしい」
「サスペンションというのは?」
「簡単に説明すると、こういった乗り物につける衝撃を吸収する装具だな。馬車とかにつけないのか?」
「つけないな。というか初耳だ、そんな装具」
「大和さんの世界は随分と文明が発達しているんですね」
「まあ、魔法とかないからな。そういった便利なものが無い分、生活向上のために先人たちが知恵を絞って開発したんだろうよ」
「魔法がない? それは……とても不便な世界だな」
「お前さんたちから見たらそうなのかもしれないけど、俺は魔法があるほうが結果的に不便な世界になると思うぞ。ざっと見た感じだけどこの世界、俺が居た世界より何百年も文明が遅れている」
地面むき出しの街道。
長年放置されている城塞。
存在していない文明の利器。
「たぶんだけど、魔法って個人の資質が大きいんじゃないか?」
「そうですね。才能に大きく左右されます」
「魔法が使える人間の割合って国全体のどのくらいなんだ?」
「全体の四割程度だと思うが……」
「じゃあ単純計算で四割の人間しかこの世界の発展に貢献できないってことだよな。魔法が便利っていうぐらいだから魔法文明なんだろう?」
「言われてみればそうですね……」
「全体の六割が使えない技術ならそりゃ発展が遅れると俺は思うぞ」
「なるほど……勉強になるな」
「素晴らしい博識と慧眼です。大和さんはもしや学者では?」
「ドライバーってさっき言ったろ? 向こうじゃ俺なんて普通だよ普通」
苦笑いをしながら巧みにハンドルを切る大和。
「二人がいたあの場所から目的地までどのぐらいあるんだ?」
「速馬で一週間と言ったところでしょうか」
「この世界の馬を俺たちの世界と同じと仮定した場合、えーと……馬の速足が平均13-15キロで1日に6時間移動できるとされているから1日最大90キロ……それで一週間だから大体約630キロ前後……でいいのか? でも俺らの世界の馬って品種改良されて走ることに特化してるしな……魔法やら何やらこの世界はあるしどのぐらい誤差があるかわかんねぇな……」
とりあえず四捨五入して約600キロと仮定しておこう。
大和はちらりと計器を見た。
「全然足りねえな、ガソリン……」
「ガソリン? ガソリンとは何だ?」
「ガソリンっていうのはトラックを動かすための燃料……つまり飯だ。人間も動物も何も食わなければ動けなくなるだろう? このトラックだって例外じゃない」
「食料なら城から脱出する際にそこそこ持ち出していますが?」
「残念だけど、機械に俺たちと同じものを食わせたらぶっ壊れるなあ」
「では、そのガソリンとやらが手に入らなければ……」
「乗り捨てるしかないな……」
残念だけど、動かなくなったらそうする以外にない。
せっかくコツコツとお金をつぎ込み、内装に手を入れたというのに。
長距離トラックドライバーの生活空間、もう一つの家とも言うべき場所を捨てなければいけなくなるとは。
「シートとかハンドルとか取り換えたし、カーナビもAI導入したし、天井裏にクーラーと空気清浄機、ベッドまで導入したのに……うぅ……俺泣きそ――」
――ドゴォォォォン!
「うぉぉぉぉぉぉっ!? 何だ何だ!?」
「敵襲か!?」
爆音とともに、突然大きな横Gが加わった。
トラックは大きく車体をくの字に曲げつつ街道をドリフト走行。
土煙を上げつつ街道沿いの木々をなぎ倒して、ようやくその車体を止めた。
三人はトラックから降りて状況を確認する。
「おいおい……何だよこれ? 荷台部分がベッコリ凹んでるんですけどぉ!? 板金ウン万円コースなんですけどぉ!?」
「これは魔法による攻撃……しかも、威力から見てかなりの使い手です」
「一体どこから……」
アレクがそう呟いた時、不自然な羽音が上空から聞こえた。
バッサバッサと――いまだかつてないほど大きな、全く聞き覚えのない空気を裂く音。
大和は上空を見上げた。
「ドラゴン……?」
「いや、ワイバーンだ! 叔父の竜騎兵団の追撃だ!」
「……! 二人とも! トラックの陰に隠れて!」
サツキがそう口にした瞬間、上空の竜騎兵たちも声を発した。
「「「「「「ファイアーボール」」」」」
剣の先からバスケットボールの倍くらいはあろうかという火球が6つ、大和たち目掛けて降りそそいだ。
それだけではない。
彼らの乗っている竜たちも、それに合わせてブレスを吐く。
――ドガガガガガガガガ!
――ズゴォン! ドゴォン!
――ゴオォォォォォォッ!
三人の周囲は一瞬で炎に包まれ地獄絵図となった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー--------------------------------------------------------------
トラックとかタクシーの運転手って会話上手い人多いイメージ。
圧倒的コミュ強者。
怖い話や面白い話を聞きたい。
「ええ、馬車より揺れませんね。それに早いです」
「俺もちょっとそこは驚いている」
整備されているとはいえ土丸出しの地面なのに、どうして全然揺れないのだろう?
「元々揺れない乗り物ではないのか?」
「うーん、まあちゃんとサスペンション装備してるから揺れる方じゃないけど、ここまで揺れないのはちょっとおかしい」
「サスペンションというのは?」
「簡単に説明すると、こういった乗り物につける衝撃を吸収する装具だな。馬車とかにつけないのか?」
「つけないな。というか初耳だ、そんな装具」
「大和さんの世界は随分と文明が発達しているんですね」
「まあ、魔法とかないからな。そういった便利なものが無い分、生活向上のために先人たちが知恵を絞って開発したんだろうよ」
「魔法がない? それは……とても不便な世界だな」
「お前さんたちから見たらそうなのかもしれないけど、俺は魔法があるほうが結果的に不便な世界になると思うぞ。ざっと見た感じだけどこの世界、俺が居た世界より何百年も文明が遅れている」
地面むき出しの街道。
長年放置されている城塞。
存在していない文明の利器。
「たぶんだけど、魔法って個人の資質が大きいんじゃないか?」
「そうですね。才能に大きく左右されます」
「魔法が使える人間の割合って国全体のどのくらいなんだ?」
「全体の四割程度だと思うが……」
「じゃあ単純計算で四割の人間しかこの世界の発展に貢献できないってことだよな。魔法が便利っていうぐらいだから魔法文明なんだろう?」
「言われてみればそうですね……」
「全体の六割が使えない技術ならそりゃ発展が遅れると俺は思うぞ」
「なるほど……勉強になるな」
「素晴らしい博識と慧眼です。大和さんはもしや学者では?」
「ドライバーってさっき言ったろ? 向こうじゃ俺なんて普通だよ普通」
苦笑いをしながら巧みにハンドルを切る大和。
「二人がいたあの場所から目的地までどのぐらいあるんだ?」
「速馬で一週間と言ったところでしょうか」
「この世界の馬を俺たちの世界と同じと仮定した場合、えーと……馬の速足が平均13-15キロで1日に6時間移動できるとされているから1日最大90キロ……それで一週間だから大体約630キロ前後……でいいのか? でも俺らの世界の馬って品種改良されて走ることに特化してるしな……魔法やら何やらこの世界はあるしどのぐらい誤差があるかわかんねぇな……」
とりあえず四捨五入して約600キロと仮定しておこう。
大和はちらりと計器を見た。
「全然足りねえな、ガソリン……」
「ガソリン? ガソリンとは何だ?」
「ガソリンっていうのはトラックを動かすための燃料……つまり飯だ。人間も動物も何も食わなければ動けなくなるだろう? このトラックだって例外じゃない」
「食料なら城から脱出する際にそこそこ持ち出していますが?」
「残念だけど、機械に俺たちと同じものを食わせたらぶっ壊れるなあ」
「では、そのガソリンとやらが手に入らなければ……」
「乗り捨てるしかないな……」
残念だけど、動かなくなったらそうする以外にない。
せっかくコツコツとお金をつぎ込み、内装に手を入れたというのに。
長距離トラックドライバーの生活空間、もう一つの家とも言うべき場所を捨てなければいけなくなるとは。
「シートとかハンドルとか取り換えたし、カーナビもAI導入したし、天井裏にクーラーと空気清浄機、ベッドまで導入したのに……うぅ……俺泣きそ――」
――ドゴォォォォン!
「うぉぉぉぉぉぉっ!? 何だ何だ!?」
「敵襲か!?」
爆音とともに、突然大きな横Gが加わった。
トラックは大きく車体をくの字に曲げつつ街道をドリフト走行。
土煙を上げつつ街道沿いの木々をなぎ倒して、ようやくその車体を止めた。
三人はトラックから降りて状況を確認する。
「おいおい……何だよこれ? 荷台部分がベッコリ凹んでるんですけどぉ!? 板金ウン万円コースなんですけどぉ!?」
「これは魔法による攻撃……しかも、威力から見てかなりの使い手です」
「一体どこから……」
アレクがそう呟いた時、不自然な羽音が上空から聞こえた。
バッサバッサと――いまだかつてないほど大きな、全く聞き覚えのない空気を裂く音。
大和は上空を見上げた。
「ドラゴン……?」
「いや、ワイバーンだ! 叔父の竜騎兵団の追撃だ!」
「……! 二人とも! トラックの陰に隠れて!」
サツキがそう口にした瞬間、上空の竜騎兵たちも声を発した。
「「「「「「ファイアーボール」」」」」
剣の先からバスケットボールの倍くらいはあろうかという火球が6つ、大和たち目掛けて降りそそいだ。
それだけではない。
彼らの乗っている竜たちも、それに合わせてブレスを吐く。
――ドガガガガガガガガ!
――ズゴォン! ドゴォン!
――ゴオォォォォォォッ!
三人の周囲は一瞬で炎に包まれ地獄絵図となった。
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トラックとかタクシーの運転手って会話上手い人多いイメージ。
圧倒的コミュ強者。
怖い話や面白い話を聞きたい。
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