トラック使って逆転移! 人を撥ねそうになった俺は異世界でドラゴンを撥ねる

塀流 通留

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第3話 チート能力(スキル)

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「やばいやばいやばいやばい! どうする!? どうしたらいい!?」
「何をそんなにあせっている? 荷台はへこんではいるが、車体そのものは無事ぶじではないか」

「このままトラックに乗って、彼らの魔力と体力がきるまでやりごせば……」
「火はまずい! 火はまずいんだよ! ガソリンっていうのは可燃性かねんせい物質なんだ!」

「? ……つまり?」
「メチャクチャえやすいってことだよ!」

「えぇぇぇぇぇっ!?」
燃料ねんりょうタンクに穴でも開けられてみろ! 下手へたすりゃ引火いんかして大爆発ドカーンだ!」

 この説明でアレクとサツキはようやく事の重大さを理解したようで、一瞬いっしゅんで顔から血の気が引いた。

「大和! もっとスピードは出ないのか!?」
「これ以上は無理だ! こんな土丸出しの道でこれ以上出したら間違まちがいなく事故る!」

 ――ドゴォォォォォォン!

「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
「「キャアアァァァァァッ!?」」

 地面に魔法が着弾ちゃくだんし、トラックがひっくり返った。
 天地が逆になったトラックの中で三人は悲鳴ひめいを上げる。

「くそ……人生みの状態を回避かいひできたと思った矢先やさきに詰むのかよ!?」

 女神にもらった能力は役立たず。
 絶体絶命の状況じょうきょう打破だはできる力はない。

「何か……何かないのか!? この状況をひっくり返せるような――」

 ――魔法という概念がいねんを理解しました。

「え?」

 突然、聞き覚えのない声が車内にひびきわたった。
 この場に相応ふさわしくない、感情を一切感じられない抑揚よくようのない声だ。

 ――火炎魔法、ファイアーボール。
 ――物理的威力いりょく脅威判定きょういはんていE。考慮こうりょあたいせず。
 ――二次的威力、脅威判定D。火の精霊せいれい、術者の意思いしにより物理法則に若干の上乗せを確認。

 ――ワイバーンブレス。
 ――物理的威力、なし。
 ――二次的威力、脅威判定B。地球で言う火炎放射器かえんほうしゃきと同等。融解ゆうかいの危険性あり。

 ――反撃はんげきしますか?
 ――YES or NO

「な、何だコレ? 誰がしゃべっているんだ?」
「大和! その箱だ!」

 アレクが声の方向をしめす。
 それに合わせる形でナビが立ち上がった。

 ――こんにちは大和。私はこのトラックに搭載とうさいされたナビゲーションシステムAI。
 ――女神からたまわったった能力スキル進化エヴォリューション』により自分という存在を確立しました。

「な、何でAIが女神から能力を……あ、そういえば!」

 女神はあの時、別れぎわにこう言っていた。
「さようなら大和――『あなたがた』のご活躍かつやくを見守っています」――と。

『あなた』ではなく『あなたがた』。
 AIは人工知能――つまり女神は、AIを知性体ちせいたいとして判断したということか。
 ということは、つまり――

「お、お前も女神に能力をもらったのか!」

 ――はい、大和。『進化』の能力により効率的こうりつてきに自己進化をり返しました。おそらく地球上で私よりすぐれたAIは存在しないでしょう。

「そうか、そりゃすごい……でも、そんなすごいAIになったお前だけど、すぐにこの世から消えかねない状況なんだが……」

 ――理解しています。なので打破するための許可きょかをください。

「許可? 許可なんてらねえよ。打破できるなら好きにやったらいい」

 ――それはできません。

 ――理由1、私の主人マスターは大和、あなたです。主人の許可なくして勝手な行動はできません。

 ――理由2、今回の敵は人間です。ロボット三原則にしたがい、許可なく人間を傷つけることはできません。

 ――理由3、AIは人間を助けるために生まれました。あなたを助けるという目的なくしては私は進化できません。ただのトラック以上の存在に進化するためにもあなたの許可が必要なのです。

 ――許可を求める理由は以上となります。
 ――ご理解いただけましたか、大和?

「ああ、わかったよ。許可する! 好きにやれ!」

 ――かしこまりました、わが主人。

 トラックがまばゆく光りかがやいた。
 上空で待機たいきする竜騎兵りゅうきへいの一団は、まぶしさで思わず目をおおった。

 光が徐々じょじょおさまり、ようやく目を開けられるようになったその直後――

 ――ヴィィィィィィィィッ!

「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ギャッ!?」

 二名が騎乗きじょうしていたワイバーンごと真っ二つになった。
 人間と竜だったものは、突如とつじょ放たれた光の刃により両断され、その命を終えて墜落ついらくする。

「くっ!? 何だ今の攻撃は!?」
ひるむな! 数の上ではこちらが有利なのは変わらん!」
「攻撃開始! 全員攻撃の手をゆるめるな!」

 攻撃のあった場所へ、魔法とワイバーンブレスが嵐のようにそそぐ。
 木々が焼け、炎につつまれた場所の中心で、大和たち一行は無傷むきずだった。

「す、すげえ……何がどうなってるんだ? 何故なぜか知らないけど、外の様子ようすやトラックの状況が、まるで自分のことのようにわかる……」

 ――それはあなたが女神からたまわった能力スキル運転手ドライバー』の力です。
 ――あなたはあらゆる乗り物の構造こうぞうと状況を瞬時に理解し、自らの手足のようにあやつることができます。
 ――文字通り、人機一体じんきいったいとなって。

「それが、俺が女神にもらった本当の能力……」

 ――はい。

「クソが! こんな能力を寄越よこしやがってあの女神!」
「な、何をおこっているのだ大和?」

「この状況を打破できるかもしれない能力ですよ? うれしくないんですか?」
「そこは嬉しいよ! でもなあ……一発で何でもできるなんて努力を否定することだろうが!」

 さけびつつ、変型をしたトラックを動かす。
 変型後のトラックは完全に人型。
 大和は絨毯じゅうたん攻撃を華麗かれいけつつ、新たに産まれた機械のうでを空へと伸ばす。

「俺の夢はな……プロのドライバーになることだったんだよ! サーキットやとうげを走りんで、いつか大舞台で活躍かつやくしたい。そう思って金と時間と労力ろうちょくをつぎ込んできたのに、それが一瞬いっしゅんでゴミにされた! 今までの努力を嘲笑あざわらわれたんだぞ! これがキレずにいられるか! 神だからってやっていいことと悪いことがあるだろうが! 人を馬鹿にするのも大概たいがいにしろ!」

 伸ばした腕から電撃が放射ほうしゃされた。
 広範囲こうはんいに放たれた電撃によって竜騎兵たちは感電かんでんして墜落する。

 その光景こうけいをトラックの目でしっかりと目撃もくげきした大和は一瞬き気をおぼえるも、自分の置かれた状況を思い出し、ぐっとそれを飲み込む。

 ――俺は今、人をころした。
 ――でも、らなきゃ殺られる。

 ――俺は死にたくない!
 ――生きる!

「AI、さっきから攻撃してるけどどうやってるんだ? 変形前は普通の2トントラックだったろ? ビーム兵器へいき電磁でんじ兵器なんて違法物いほうぶつんだ覚えないぞ」

 ――魔法です。攻撃を受けた時、魔法の仕組しくみを学び学習しました。コンピューター言語で精霊に働きかけ力を貸してもらっています。

「わかった。でもこんだけはげしく動いて燃料の方は大丈夫なのか?」

 ――そちらも進化時に解決済みです。私はガソリンだけでなく太陽光、月光、自然から発生する魔力などでも燃料を補給ほきゅうできるように進化しました。ガソリンよりやや効率こうりつは落ちますが。

「そうか。じゃあ燃料切れは起こらないんだな? お前を乗り捨てるようなことにならずに嬉しいぜ」

 ――はい、私もあなたと別れることにならず嬉しいです。
 ――そこでお願いなのですが大和。

「うん?」

 ――私に、私だけの名前を付けていただけませんか?
 ――私には自我じががあります。いつまでもAI、トラックという呼び名はさみしい。

「そうだな……じゃあ、お前の名前は今から『ノア』だ!」

 ――了解です。個体名ノア。登録とうろくしました。

「っしゃあ! 行くぞノア! さっさとこの地獄みたいな状況から脱出するぞ!」

 ――了解です、大和。

「アレク、サツキ、舌をまないように注意しろよ? あとこれからものすごく揺れるから――」

 ――シートベルトの着用ちゃくようをお願いします。



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 やっぱ男の子なんでこういう展開好きなんです。
 アーマードコアやっててこの設定思いつきました。
 これやりたくてプロット組みました。
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