トラック使って逆転移! 人を撥ねそうになった俺は異世界でドラゴンを撥ねる

塀流 通留

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第4話 交通事故ドラゴン

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 アクセルの横に出てきた新たなペダルを左足でむと大和のトラック――今は人型に変型した『ノア』の足裏あしうらと、先ほどまでコンテナだった背中に背負せおったバックパックから青色の火(?)がき出す。

 ノアは大和とアレク、サツキを乗せたまま高度を上げ、竜騎兵りゅうきへいたちと同じ視線しせんの高さになった。

「ノア、今さらだけど質問だ……これどうやってるの? 俺、さっきのビームや電磁でんじ兵器へいきと同じく、バーニアなんてんだ覚えないんだけど……?」

 ――エンジンを私の能力で構造こうぞうから変型させました。
 ――炎のように見えるのは火ではなく魔力です。
 ――おもに風の精霊せいれいに力をしてもらっています。

「なるほど……よくわからんがそういうものだということは理解した。あとこの変型だけど元に戻れる? この形態けいたい、戦う分にはいいけど生活するにはメチャクチャ不便ふべんだからそこが心配なんだが……」

 ――大丈夫です。あなたのパーソナルスペースおよびコンテナの中身は時間と空間の精霊にたのんで一時的に別次元へ避難ひなんさせています。戦闘終了後、元に戻りますのでご安心を。

「よかった……まさか運転席で三人も寝泊ねとまりするわけにもいかないから本当に良かった……」

「大和! しゃべっていないで前に集中しろ!」
「魔力の収束しゅうそくを感じます! 攻撃が来ます!」
「安心しろよ、お二人さん。運転中のドライバーってのは安全第一なんだ。言われなくてもつねに集中している!」

 ――火炎球ファイアーボール

 正面の竜騎兵たちが魔法をはなった。
 一瞬の時間差で背後はいごひかえていた竜騎兵が上方へ移動すると、ななめ下に向けてブレス攻撃をり出す。

 前方と上方からの炎による同時攻撃。
 大和はアクセルとホバーペダルを同時に踏み込み、一瞬いっしゅんで彼らの背後を取った。
 攻撃、不発。

 ――な……!? い、いつの間にわれらの背後へ!?
 ――何という速度だ!

 竜騎兵たちの中で動揺どうようが広がっている。
 このすきのがさず大和は一撃入れることに決めた。

「ノア、現在使える兵器を教えてくれ」

 ――了解しました。現在実行可能な兵器は……ありません。先ほどの防御ぼうぎょ反撃はんげきにかなりのエネルギーを使用してしまいました。リチャージまであと数分かかります。

「OK、わかった。なら直接ちょくせつぶんなぐるのは?」

 ――問題ありません。

「了解!」

 取るべき手段が決定した。

「アレク! サツキ! 舌をむなよ!?」

 大和がペダルを踏み込んだ。
 竜騎兵団の最後列に一瞬でベタきすると、ノアのうでを思いっきりかせた。
 魔力をびた鉄塊てっかいに顔と腹を殴られ、ワイバーンが絶命して墜落ついらくする。

 ――くそぉっ! よくも仲間を!
 ――これでも食らえ!

「当たるかよそんなもん!」

 大和が大きくハンドルを切る。
 ノアが大きく左に飛んで、余裕よゆうを持って攻撃をかわす。

 ――おのれ! 魔力弓マジックアローだ! 嵐のように浴びせるのだ!
 ――魔力弓! 魔力弓! 魔力弓! 魔力弓!

「遅い!」

 バックギアに入れてアクセルを踏む。
 一瞬でノアは大きく後退こうたいし、魔力弓の射程外しゃていがい脱出だっしゅつした。

「実際の矢ならこうはいかなかっただろうけどな。魔法は個人の資質ししつに左右される……威力いりょくや速度も個人でちがうからけるのなんて簡単だぜ。なあ二人とも?」

「う……………あー」
「話し、かけないで……くだ、さい……は、きそう……」

 大和が後ろを見ると、アレクとサツキはぐったりしていた。
 急速きゅうそくな横G&縦Gのせいで三半規管さんはんきかんをやられてしまったらしい。
 乗り物いする異世界人の図。

「ノア、 そろそろ二人がやばそうだ。早く終わらせないと後部シートがえらいことになる」

 ――私としても吐瀉物としゃぶつよごされるのはご遠慮えんりょしたいところです。

「敵兵力の残存ざんぞんは?」

 ――残り三十七。

「兵器類のリチャージは?」

 ――現在八十パーセント。使用しますか?

「ああ。ただし使うのは電磁バリアのほうだ。ノア、電磁バリアを展開てんかいしてくれ」

 ――攻撃をよけられるのに展開する必要はないと考えますが?

「誰が回避かいひに使うと言った? 電磁バリア急速展開! ブースト機能きのうもフルスロットルだ!」

 ――ゴオオオオオオオオォォォォォッッッッ!

 大和の声に合わせ、ノアの身体からだは青白く発光。
 足裏と背中のブースターから野獣やじゅう雄叫おたけびのような爆音が上がる。

「行くぞ! 目標、目の前の敵全部! 異世界トラックらしく一人残らずね飛ばせ!」

 クラッチを踏んでギアを変更へんこう
 最高速の六速に入れる。

 青白く発光しているノアが強力な、触れた瞬間黒焦くろこげになる電磁場をまとって竜騎兵たちへ特攻。

 ガインッ! ガインッ!――と、行っては戻り行っては戻り、上下左右、三次元上のあらゆる方向から何度も何度も、敵の姿が見えるかぎり体当たりを繰り返した。

 三十七騎もいた竜騎兵たちはノアの速度に対応できず、人間もワイバーンも例外なく、全員黒焦げになった後に撥ね飛ばされて粉々になり、空の藻屑もくずとなって存在をこの世から消した。

「名付けて、超電磁ヴォルテック特攻スタンピード。トラックらしい派手はでな必殺技だろ?」

 ――トラックは人を撥ねるものという認識にんしきあらためてください。
 ――トラックへの大きな風評被害ふうひょうひがいです。

「悪い悪い、異世界転移なんてさせられちまうとな?」

 敵の残存数はゼロ。
 戦闘終了を確認。
 大和は大きくため息をつくと、シートの背もたれにりかかった。

 ――大丈夫ですか大和? ずいぶんとまいっているように見えますが?

「ああ、大丈夫。大丈夫だよ……ただ、ちょっとな」

 自分たちは全員無事生きびた。
 だがしかし、その結果自分は人を殺した。

 そのことは受け入れなければならない。
 受け入れ、割り切る。

「ノア、変型をいてくれ。今日は早めに休みたい」

 ――了解しました。ごゆっくりお休みください。

 光につつまれ、ノアは元の2トントラックの姿に戻った。
 大和はシートベルトをはずすと、先ほどから静かな後部座席を確認する。

「……休む前に掃除そうじかな? においが充満じゅうまんしたらえらいことになる」

 ――そうしていただけると助かります。

 気絶きぜつした二人のシートベルトを外す。
 大和は二人をかつぎ上げ、屋根裏やねうらのベッドに寝かせようとした。
 そこで大和はアレクの違和感いわかんに気づく。

「ん?」

 ――どうしました大和?

 汚れた服を脱がそうとした時だった。
 大和は自分が大きな勘違かんちがいをしていたことを知った。

「ノア、こいつ……女だ!」

 服のボタンを外した瞬間、その下にかくれていた大きな胸が自由を求めて飛び出したのだ。
 文字もじ通り、ボロンッて。
 こんな大きな胸を押さえつけていたら、そりゃあ苦しいし酔うだろう。

「男女の主従しゅじゅうかと思ったら女同士かよ……そこでお家騒動そうどうとか……もう、お約束すぎるなあ」



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 性別を隠した美少女ヒロイン好きなんですよね。
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