ハルといた夏

イトマドウ

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「母さん、ナツ、週末からばあちゃんの家に行かないか」
 夕食中に父さんが口を開いた。
「そんなこと聞いてないけど」
 母さんは箸を動かす手を止めない。
「今、初めて行ったから。だから、行かないかってさ・・・」
「行かない選択肢は無いんでしょ」
「う、すまん」
 父さんが頭をさげた。
「いいけど、嫁の動きとか期待しないでよ」
「そんなの全然いらないから。顔を見せるだけでいいんだ」
 嬉しそうに頭を上げる。
「で、急にどうしたの?」
「いや、去年はハルちゃんの高校受験があったから遠慮したんだけどさ。
 顔を出せるときは出したいんだよね。何だかんだばあちゃんも年だからさ」
「ナツも良いだろ。田舎も楽しいぞ」
「ふーん」
 母さん同様、箸を止めずに返事をした。僕はYou tubeがあれば、どこでも何も問題ない。
「どのくらい行くの?」
「えーと、水曜は外せない会議があるから木曜日朝に出発。それで日曜の朝に向こうを出れば、夜には帰ってこれる感じかな」
「木曜日ね。もっと早く言ってよね。3泊4日だと荷物も多いんだから」
「ごめん」
 終始、頭を下げている父さん。よくある我が家の一家団欒だった。
 
 帰省日の当日は、朝が早かった。前日も夜更かししてYou tubeを見ていたので、眠い。
 まぁ、これも僕の作戦だった。車の中で寝ようと思っていた。
 母さんは、父さんにアレコレと指示して、父さんが、忙しく動いていた。
 
 いざ、車に乗って走り出すと、いつものように父さんと母さんの好きな曲を流して、二人で鼻歌を歌っている。
 曲達は僕が生まれる前に売れたものなので、車の中でしか聞いたことがない。
 僕は母さんのお腹の中にいることから聞いている曲を子守歌代わりに目を閉じた。

 ばあちゃんの家は、山が多かった。県には、海もあるそうなんだけど僕は言ったことがない。
 車だと半日はかかる距離で、着いたのは夕方だった。
 途中、SAで昼食を取ってひたすら車で移動。父さんと母さんは交代で運転をしてやっと着いた。
 僕は、ずっと寝続けることはできなかったので、起きてからは田舎に変わりゆく景色を見て過ごした。
 動かなくても疲れるもので、車から降りると僕は深呼吸をして伸びをした。
 夕日が山に被っていて、とてもキレイな光景だった。
 横を見ると父さん、母さんも伸びをしていた。
 
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