ハルといた夏

イトマドウ

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夏祭り

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 夏は17時半を過ぎても全然明かるかった。
 祭りは18時からで盆踊りと出店が中心らしい。
 僕は特別にお小遣いをもらって、あとはハルを待つだけだった。
 ハルは先ほど家に帰ってきて、今準備をしている。

「お待たせ」
 ハルは紺色の浴衣を着ていた。
 都内でも祭りはあるし浴衣を着ている人を見たことは沢山あるけど、知っている人が浴衣を着ているのは初めてだった。
 僕は服だけでこんなに印象が変わることに驚いた。
「ナツの浴衣もあればよかったんだけどね。あたしのお古は女性用じゃけぇ」
「僕はいいよ。何か恥ずかしい」
「祭りの恥はかき捨てなんよ。っていうか、恥なんかな」
 ハルは自分の浴衣姿を見た。
「ハルは良いんだけど、僕は男だし、着た事ないし」
 僕は、こんな時に何て言えば良いのかわからなかったけど何とか言葉を絞りだした。
「男だからとか、よくわからんのじゃけど、そうなんかな」
 ハルは笑いながら聞いていた。
「さて、行こうか。あんず飴が待ってるんよ」
 僕たちは夏祭りがやっている神社へ向かった。

 神社に近づくにつれて、人が多くなってきた。思った以上に男の人でも浴衣を着ているの人がいて驚いた。
 僕の町内会の夏祭りとは全然雰囲気が違う。
「小晴!」
 ハルを呼ぶ声が後ろから聞こえて僕たちは振り返った。声の主は薄紅色の浴衣を着た女性だった。
 小走りで近づいてきた。
「マナ!」
 二人は両手をつないでピョンと飛び跳ねた。
「お互い、間に合ってよかったんよ」
「ほんと、そうやね。あ、この子がナツ君やね」
 突然、僕の名前を呼ばれた。
「どうも」
 とりあえず頭を下げる。
「そうなんよ。従弟のナツ。こちらはマナであたしの親友」
 マナという名前には、どこかで聞いた気がした。
「ああ、秘密基地のエロ本の人」
「え?」
 マナさんはきょとんとしていた。
「秘密基地?あんたあんな所へ連れて行ったん?」
「まぁ、色々あっての流れなんよ」
「それにエロ本って・・・あれは小晴が入れたじゃろ?」
「え、そうじゃったっけ?」
「ほうよ。隊長命令ってゆうとったじゃろ」
 その時の光景が鮮明に思い浮かぶ。
「きっと隊長にも複雑な事情があったんよ」 
「何言ってんよ、あんたのことじゃろが。あ、そんなことよりも」
 そこまで言うと、マナさんはハルの耳元に口を近づけた。
「上野おった?」
「上野来てるん。見てないんよ」
「また聞きなんやけど来るみたいなんよ」
「そうなんね。見たら連絡するけんね」
「ありがとう。じゃ、あたしはそろそろ行くわ」
「じゃあね」
 マナさんは手を振って神社に向かう人達の中に消えて行った。
 
「うわ」
 神社の階段を上ると思わず声が漏れた。
 境内には出店が並び、本殿前には大きな櫓ができていた。
 櫓からは提灯が沢山吊り下げられて、とてもキレイだった。
 鳥居の向こうは、まさに日常とは異なっていた。
 境内は沢山の人がいた。僕はハルから離れないようにすぐ後ろを歩いた。
 ハルは、出店をキョロキョロと見渡して、あんず飴の出店を見つけた。
「見つけたんよ」
 ハルは振り返ると僕の手を取って足を速めた。
 僕は驚いたけど、ハルの邪魔にならないようについて行った。
 無事にあんず飴を買って、食べていると
 「春日!」
 男の人の声に、ハルはビクッと反応した。
 僕も声の方を向く。
 そこには、Tシャツにハーフパンツの男の人が経っていた。
 背が高く眼鏡をかけていた。
「来とったんか」
「うん、まぁ」
 ハルは照れくさそうに下を向いていた。
「浴衣、似合っとるよ」
「なんね。そんなことゆーても、なんもでんよ」
 ハルは男の人に目も合わさず答えていた。
 僕はハルが困っているのかと思った。
 昼間のフードコートで少し強気になっていたのかもしれない。
 僕は無意識というか、何となく男の人とハルの間に男の人に向かう形で立っていた。
「ん、この子は、なんね?」
「この子は私の従弟なんよ」
 ハルの言葉に男の人は笑った。
「ほうか。カッコいい、ナイトやな。いや、今日は武士って言った方が雰囲気にあってるな」
「何ゆーてるん。ナツも違うんよ」
「あ!」
 ハルの仕草や表情を見ていて僕はある事に気が付いた。
 ハルと目が合うと、気が付いたことが間違いないと確信した。
 確信すると、熱帯夜とは違う熱さが体の内から湧き上がってきた。
 僕は我慢できなくなってその場から走りだした。
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