ハルといた夏

イトマドウ

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フードコート

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 この日は、日中にハルが予定があるため、僕は、一人で居間にいた。
 昨日は色々あって疲れたいたし、夜には夏祭りがあって、ハルと一緒に行く予定だったので
 僕はゆっくり休んでいた。
 とはいえ、僕は夏祭りが待ちきれなくて、You Tubeでも縁日や花火の動画を見ていた。

「ボン、いるかぁ」
 玄関の方から叔父さんの声が聞こえた。
 僕は慌てて、玄関へ行った。
 叔父さんは黒いタンクトップに迷彩のズボンを履いていた。
 半袖の時よりも刺青が大きく見えている。
「何ですか」
「おお、おったおった。暇じゃろ。飯食いに行こうや」
 叔父さんの勢いに飲まれて、僕は叔父さんの車に乗った。
 叔父さんは車に乗るとサングラスをかけて、よりイカツクなった。
「ご飯って、何を食べるんですか」
「おう、お好み焼きじゃ、フードコートなんじゃけどな。ぼっけぇ旨いんじゃ」

 フードコードは混んでいたが開いている席が幾つかあった。僕らは2つ並んで空いている席を見つけた。
「ボン、ちょっと席取っといてくれや」
 叔父さんは背中越しに手をあげて、お店の方へ歩いていった。
 僕は、空いている席に座り、叔父さんの席にはカバンを置いた。
 叔父さんがくるまでスマホ見ようとすると茶色い髪の女の人があたりを見渡しながら歩いてくるのが見えた。
 僕の前までくると女の人は置いてあるカバンをどけて座ろうとした。
「すみません」
 僕は思わず声を上げる。女の人は流し目でこちらを見た。
「そこは、叔父さんの席で取っているんです」
「でも、今いないじゃん。あたしの連れが飯買ってくるからあんたもどいて」
 言っている意味が理解できなかった。
「あの、僕らが先に取った席なのでどいてください」
「あぁ、聞こえなかったの。あんた。迷惑だからどっかいって」
 女の人は一方的だった。
 僕は女の人の言葉に目を泳がせてしまった。他に空いている席があれば、そちらした方が良いのかと思った。
 でも・・・
「僕らが先にとって席なので、どいてください」
 さっきよりも大きな声でいった。
 チラチラとこちらを見る人たちもいた。
「うざいんだよ。このガキ」
 叩かれたりはしなそうだったけど、怖かった。
「おう、どうしたー」
 茶色い髪の男の人までやってきた。 
 大人2人に見下ろされ、僕はまだ動けなかった。
「でも、僕らが先に・・・」
 言葉を絞り出す。さっきみたいに大きな声がでない。
 その時だった。
「なんじゃ、ボン。何ぞ、あったんか?」
 今一番聞きたかった声がした。
 叔父さんはお好み焼きのパックと飲み物を持って立っていた。
 茶色の髪の2人は叔父さんを見るとすぐに、何も言わず立ち去った。
 叔父さんは、特に気にした様子もなく席に座り、お好み焼きを食べ始めた。
「ボンも食えや。焼きたてがぼっけぇ旨いんじゃ」
「うん」
 僕は泣きそうだったけど、叔父さんに知られたくなくて顔を隠すようにお好み焼きにがっついた。
「ぼっけぇガンバッたのぅ。じゃが、変な奴らもおおいからのぅ。あんまりムリすんなや」
「それはそうなんだけど」
「なんじゃ、席取られたらワシに怒られると思ったんか」
 叔父さんはこちらを見ることなく、お好み焼きを食べながら言った。
「そっか、怒られてたのか。ガッカリされると思ってさ」
 僕も叔父さんを見ることなくお好み焼きをがっつきながら返事をした。
 叔父さんは一瞬、箸を止めて僕を見たと思う。
「そうかぁ」
 叔父さんは一言だけ呟いた。
「ぼっけぇガンバッたのぅ、ナツ」
 今度は僕が箸を止めて叔父さんを見た。
「ありがとう。叔父さんもカッコ良かったよ。」
 それだけいうと僕らは黙ってお好み焼きを食べた。
 叔父さんの言う通り、お好み焼きは ぼっけぇ美味しかった。
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