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秘密基地
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山道は日陰になっていたが、蒸すように暑く、足取りは重かった。
何度目の休憩時に僕はハルに聞いた。
「次はどこへ行くの」
「秘密基地」
ハルは汗を拭いながら答えた。
「もう少しだけど。ちょっと歩きにくいかもしれんけぇ、気ぃ付けてな」
そう言うと、落ちている長めの枝を2本拾って1本を僕にくれた。
休憩後、道なき道を長い枝で草を分けながら進んだ。
ハルは慣れているのか器用に草をわけていた。
僕はハルの動作をマネしてさらに歩きやすくした。
帰り道が少しでも楽になればと思った。
草をかき分けたのはそんなに長い距離ではなかった。
「着いたんよ」
ハルは長い枝を肩に乗せて振り返った。
僕はハルの横に並んで前をみた。
目の前には大きな木があって、僕くらいの子供が二人入れるくらい根元が開いていた。
そこにものすごく古びたビニールシートがドアのように塞いでいた。
「懐かしいー」
ハルは枝でビニールシートを外すと根元に近づいた。
ちょっとした雨も大丈夫そうだし、確かに秘密基地と呼べそうだった。
「あ、あれは何?」
僕は手も持った枝で秘密基地の中にある錆びた缶のようなものを指した。
「ああ、確かマナと当時大事なものを入れたような」
僕は缶に近づいてなるべく触れる部分が少ないように気を付けながら缶を開けた。
中には、コマやビー玉、それに古びた雑誌が入っていた。
雑誌には微かに女の人の裸が写っているように見える。
「違うんよ。これはマナが入れたんよ」
ハルは焦って声を上げた。
その時、僕とハルは同時に大きな羽音を聞いた。
You tubeやTVで聞いたことがある音。
多分、スズメバチだ。近くにいる。
音は僕のすぐ後ろで聞こえるとイヤな感触がした。
僕は怖くなって体が硬くなり動けなかった。
「ナツ、動かんといて」
ハルを見ると真剣な顔で僕の背中を見ていた。
僕もすぐに状況を理解した。
スズメバチが僕のTシャツの中に入っていた。
スズメバチは物凄い羽音を立てて飛び、Tシャツが盛り上がる。
「ハル、助けて」
消えそうな声でハルに助けを求める。
ハルは手に持っていた長い枝を持ち替えて何かを伺っていた。
「大丈夫やけぇ、絶対に動かんといて」
僕はハルの言う通り、じっとしていた。正直、怖くて動けなかった。
じっとしている時間は凄く長く感じられた。
「大丈夫やけぇ」
僕は絶対に刺されると思ったが、スズメバチはTシャツの脇の穴から出て行った。
「助かった」
僕は力が抜けた。
「まだ動かんといてな」
ハルの声は緊張が解けていない。僕は、急に怖くなってまた動けなかった。
「よっと」
ハルは枝を草の中へ突き刺した。
「うん、大丈夫」
「ナツ。そこからゆっくりと枝の先を見てみるんよ」
スズメバチが気になったが羽音は聞こえなくなったので、ハルに言われて場所へ目を凝らした。
「あっ!」
ハルの枝の先には蛇がいた。ハルの枝の先が少し二股に分かれていて蛇の頭を抑えていた。
「マムシ。間違えて近づいたり、踏んだりしたら危ないんよ」
「You tubeで見た。本当に頭が三角だね」
「毒蛇の特徴ね」
ハルは僕に離れるように言って、マムシを遠ざけた。
「なんか疲れたね。帰ろうか」
「うん。そうしてもらえると助かる」
ハルもさすがに疲れたようだ。僕はずっと前から限界だった。
帰りも枝を杖に僕らは歩いた。
疲れていたので、ほとんど会話は無かった。
でも家が見えてくるとハルが一言。
「色々あったけど、楽しかったんよ」
ハルは笑っていた。
その顔に僕の疲れは少しだけ和らいだ。
何度目の休憩時に僕はハルに聞いた。
「次はどこへ行くの」
「秘密基地」
ハルは汗を拭いながら答えた。
「もう少しだけど。ちょっと歩きにくいかもしれんけぇ、気ぃ付けてな」
そう言うと、落ちている長めの枝を2本拾って1本を僕にくれた。
休憩後、道なき道を長い枝で草を分けながら進んだ。
ハルは慣れているのか器用に草をわけていた。
僕はハルの動作をマネしてさらに歩きやすくした。
帰り道が少しでも楽になればと思った。
草をかき分けたのはそんなに長い距離ではなかった。
「着いたんよ」
ハルは長い枝を肩に乗せて振り返った。
僕はハルの横に並んで前をみた。
目の前には大きな木があって、僕くらいの子供が二人入れるくらい根元が開いていた。
そこにものすごく古びたビニールシートがドアのように塞いでいた。
「懐かしいー」
ハルは枝でビニールシートを外すと根元に近づいた。
ちょっとした雨も大丈夫そうだし、確かに秘密基地と呼べそうだった。
「あ、あれは何?」
僕は手も持った枝で秘密基地の中にある錆びた缶のようなものを指した。
「ああ、確かマナと当時大事なものを入れたような」
僕は缶に近づいてなるべく触れる部分が少ないように気を付けながら缶を開けた。
中には、コマやビー玉、それに古びた雑誌が入っていた。
雑誌には微かに女の人の裸が写っているように見える。
「違うんよ。これはマナが入れたんよ」
ハルは焦って声を上げた。
その時、僕とハルは同時に大きな羽音を聞いた。
You tubeやTVで聞いたことがある音。
多分、スズメバチだ。近くにいる。
音は僕のすぐ後ろで聞こえるとイヤな感触がした。
僕は怖くなって体が硬くなり動けなかった。
「ナツ、動かんといて」
ハルを見ると真剣な顔で僕の背中を見ていた。
僕もすぐに状況を理解した。
スズメバチが僕のTシャツの中に入っていた。
スズメバチは物凄い羽音を立てて飛び、Tシャツが盛り上がる。
「ハル、助けて」
消えそうな声でハルに助けを求める。
ハルは手に持っていた長い枝を持ち替えて何かを伺っていた。
「大丈夫やけぇ、絶対に動かんといて」
僕はハルの言う通り、じっとしていた。正直、怖くて動けなかった。
じっとしている時間は凄く長く感じられた。
「大丈夫やけぇ」
僕は絶対に刺されると思ったが、スズメバチはTシャツの脇の穴から出て行った。
「助かった」
僕は力が抜けた。
「まだ動かんといてな」
ハルの声は緊張が解けていない。僕は、急に怖くなってまた動けなかった。
「よっと」
ハルは枝を草の中へ突き刺した。
「うん、大丈夫」
「ナツ。そこからゆっくりと枝の先を見てみるんよ」
スズメバチが気になったが羽音は聞こえなくなったので、ハルに言われて場所へ目を凝らした。
「あっ!」
ハルの枝の先には蛇がいた。ハルの枝の先が少し二股に分かれていて蛇の頭を抑えていた。
「マムシ。間違えて近づいたり、踏んだりしたら危ないんよ」
「You tubeで見た。本当に頭が三角だね」
「毒蛇の特徴ね」
ハルは僕に離れるように言って、マムシを遠ざけた。
「なんか疲れたね。帰ろうか」
「うん。そうしてもらえると助かる」
ハルもさすがに疲れたようだ。僕はずっと前から限界だった。
帰りも枝を杖に僕らは歩いた。
疲れていたので、ほとんど会話は無かった。
でも家が見えてくるとハルが一言。
「色々あったけど、楽しかったんよ」
ハルは笑っていた。
その顔に僕の疲れは少しだけ和らいだ。
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