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虫取り
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次の日、僕は何故かハルと会話したいと思い、話のネタになるようなことを探していた。
すると、ハルがやってきて声をかけてくれた。
「ナツ、虫取りに行くで」
「虫取り?」
「カブトとクワガタね。やったことあるん?」
「ないけど、You tubeで見たことはある」
ハルは肩をすくめた。
「ちっ、ちっ、ちっ、生息場所とか探して見つけるってことも経験して初めて虫を知っているって言えるんよ」
僕の顔の前で人差し指を振った。その手には、千円札が何枚か挟まっていた。
「その千円は何?」
「これは、報酬というかジュース代というか・・・」
父さんに買収されたのか。
僕は心の中で父さんに感謝した。
「いいよ。行こう」
家を出るとあたり一面に山が見える。少し歩けば山につきそうに見えた。
この景色を見ると、虫ならどこにでもいそうな感じがした。
「で、どこに行くの?」
「あたしが現役のころに使っとったええ場所があるんよ」
「現役って何?」
僕は思わず、突っ込んでしまった。
「虫取りは、小学校の卒業と共に引退したんよ。1日限りの現役復帰やね」
ハルは遠い目をしていた。
「やるからには、当時を思い出してやるわ。今からあたしのことは隊長と呼ぶんよ」
「噓でしょ?」
昨日と雰囲気が全然違う。
「やるからには、楽しまんとね」
ハルは意気揚々と歩いていった。
そういって、家から3分も歩かないうちにハルは止まった。
「手始めは、ここよ」
目の前には大きな木が一本生えている。
「まだ、全然家があるよ?」
「田舎じゃねぇ、こんなところでも1匹くらいは落ちてくるんよ」
そう言ってハルは幹を踵で押すように蹴って揺らした。
気は太くあまり揺れたように見えなかったが、黒いものが上から降ってきてハルの肩に落ちた。
「うわっ」
一瞬、黒い虫が皆が嫌いなアレに見えて、思わず声を上げてしまった。
よく見ると顎に挟みがついている。ノコギリクワガタのオスだった。
急にクワガタが肩に落ちてきてもハルは落ち着いたもので木を揺らし続けていた。
「昔はもっととれたんじゃけど。腕が鈍ったんかねぇ」
成果はノコギリクワガタのオス1匹、カブトムシのメスが1匹だった。
「いや、凄いと思うよ。こんな取り方初めてみたよ」
「ふふ、次の場所はこんなものじゃないよ。現役時代に見つけたとっておきの場所なんよ」
ハルは、満足気に歩き出した。僕は、落ちてきた虫をスマホで撮影して逃がした。
・・・・・・
「あれぇ」
一面の空き地を見てハルは、気の抜けた声を発した。
「ここに大きなクヌギの木がたくさんあったんよ」
山道を進み、ちょっとした冒険のように歩いてきた僕らの終着地は開けた空き地だった。
空き地の隅にはショベルカーや重機が停められていた。
「開発されたんだね」
僕はハルに言った。
「思い出の場所がまた一つ・・・」
ショックだったのだろう。ハルは言葉を絞り出していた。
空き地を見渡すと反対側は道路が整備されていた。
「向こうから来れば、山道を歩かなくて良かったね」
ハルは肩を震わせながら真剣な顔で僕に話しかけた。
「もう一か所行ってもええ?」
「それは構わないけど」
ハルは再び山道へ向かって歩き出した。
すると、ハルがやってきて声をかけてくれた。
「ナツ、虫取りに行くで」
「虫取り?」
「カブトとクワガタね。やったことあるん?」
「ないけど、You tubeで見たことはある」
ハルは肩をすくめた。
「ちっ、ちっ、ちっ、生息場所とか探して見つけるってことも経験して初めて虫を知っているって言えるんよ」
僕の顔の前で人差し指を振った。その手には、千円札が何枚か挟まっていた。
「その千円は何?」
「これは、報酬というかジュース代というか・・・」
父さんに買収されたのか。
僕は心の中で父さんに感謝した。
「いいよ。行こう」
家を出るとあたり一面に山が見える。少し歩けば山につきそうに見えた。
この景色を見ると、虫ならどこにでもいそうな感じがした。
「で、どこに行くの?」
「あたしが現役のころに使っとったええ場所があるんよ」
「現役って何?」
僕は思わず、突っ込んでしまった。
「虫取りは、小学校の卒業と共に引退したんよ。1日限りの現役復帰やね」
ハルは遠い目をしていた。
「やるからには、当時を思い出してやるわ。今からあたしのことは隊長と呼ぶんよ」
「噓でしょ?」
昨日と雰囲気が全然違う。
「やるからには、楽しまんとね」
ハルは意気揚々と歩いていった。
そういって、家から3分も歩かないうちにハルは止まった。
「手始めは、ここよ」
目の前には大きな木が一本生えている。
「まだ、全然家があるよ?」
「田舎じゃねぇ、こんなところでも1匹くらいは落ちてくるんよ」
そう言ってハルは幹を踵で押すように蹴って揺らした。
気は太くあまり揺れたように見えなかったが、黒いものが上から降ってきてハルの肩に落ちた。
「うわっ」
一瞬、黒い虫が皆が嫌いなアレに見えて、思わず声を上げてしまった。
よく見ると顎に挟みがついている。ノコギリクワガタのオスだった。
急にクワガタが肩に落ちてきてもハルは落ち着いたもので木を揺らし続けていた。
「昔はもっととれたんじゃけど。腕が鈍ったんかねぇ」
成果はノコギリクワガタのオス1匹、カブトムシのメスが1匹だった。
「いや、凄いと思うよ。こんな取り方初めてみたよ」
「ふふ、次の場所はこんなものじゃないよ。現役時代に見つけたとっておきの場所なんよ」
ハルは、満足気に歩き出した。僕は、落ちてきた虫をスマホで撮影して逃がした。
・・・・・・
「あれぇ」
一面の空き地を見てハルは、気の抜けた声を発した。
「ここに大きなクヌギの木がたくさんあったんよ」
山道を進み、ちょっとした冒険のように歩いてきた僕らの終着地は開けた空き地だった。
空き地の隅にはショベルカーや重機が停められていた。
「開発されたんだね」
僕はハルに言った。
「思い出の場所がまた一つ・・・」
ショックだったのだろう。ハルは言葉を絞り出していた。
空き地を見渡すと反対側は道路が整備されていた。
「向こうから来れば、山道を歩かなくて良かったね」
ハルは肩を震わせながら真剣な顔で僕に話しかけた。
「もう一か所行ってもええ?」
「それは構わないけど」
ハルは再び山道へ向かって歩き出した。
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