ハルといた夏

イトマドウ

文字の大きさ
8 / 9

ハルとナツ

しおりを挟む
 思わず走り出して、神社からでた。神社からでると人の数は極端に減った。
 そばには誰もいないバス停があったので、バス停のベンチに座った。
 とりあえず、冷静になろうと思った。
 心臓はバクバクなっているし、何で急に走り出したのか自分の行動が信じられなかった。
 深呼吸をするが、バクバクがドキドキに変わっただけで全然落ち着かなかった。
「ナツ」
 ドキドキが一瞬ドキッ大きく脈打ち止まるかと思った。
「ハル・・・」
「どしんよ。急に」
 ハルは僕の隣に座った。口調はとても優しかった。
「急に、ごめん、ごめんなさい」
「いいんよ。でも、どうしたんね」
 僕は、自分の中でも全然まとまっていなかったけど、一気に思っていることを話した。
「ハルが困ってると思ったんだけど、ちがくて・・・」
「ハルがあの人を好きなだと分かって、ハルの邪魔しちゃったと思って・・・」
 消え入りそうな声しか出なかった。
 ハルは、もの凄く驚いた顔をしていた。でもすぐに優しい笑顔を浮かべて頭をかいた。
「・・・そっか。ナツにバレるとは思わなかったんよ」
 ハルは正直に認めた。
「僕、初めて人の気持ちがわかったかも。でも、人の気持ちがわかっても全然うれしくない」
「ほうか。ナツもわかるようになったんやね」
「でもな、そんな単純なものでもないんよ」
 ハルは僕を見つめながら言った。
「ナツは、あたしの恋愛感情っていう気持ちはわかって、私に伝えた」
「だけど、あたしがそれを言って欲しくなかったっていう気持ちはわからんかったじゃろ?」
 僕は黙ってうなずいた。
「少しだけ人の気持ちがわかっても、それだけじゃどうしようもないんよ」
「さっきの人な上野ゆーて、あたしのクラスメイト。で、マナの好きな人で、マナが好きな人。まだ付き合ってへんけど相思相愛」
「えっ?」
「あたしは2人のこと好きやから目で追ってしまうんよ。そうやってよく見てると2人の気持ちが色々わかってしまうんよ」
「そのうえで、今のあたしの行動があるんよ。これが正しいのかあたしにもわからないんよ。でも、あたしは今の距離感が一番好きなんよ」
 そう言って、ハルは両手を上にあげて伸びをする。
「で、ナツ、あたしのこと好きやろ?」
「えっ?」
「あたしの気持ちに気づくってことは、それだけあたしを見てたってことやろ?」
 ハルは僕を見て微笑んだ。
「そうなのかな。よくわからないよ。人を好きになるとか」
「ただ、ハルといるのは楽しいし、ハルが困っているのはイヤだ。ハルには笑っててほしい。でも、ハルがあいつといるのは少しイヤっていうかモヤモヤするんだ」
「・・・これって好きなのかな」
 ハルが打ち明けてくれたことで僕は思っていることを素直に言った。
 言った後、恥ずかしくなって下を向いた。
「うーん、どうなんやろうね。実はあたしもよくわからないんよ。でも、ナツがあたしのために考えてくれたこと、行動してくれたことはとても凄いことだと思うんよ」
 ハルは僕の頭を撫でてくれた。
「ハルは、ぼっけぇ優しいんよ」
 僕の中にもいろんな気持ちがあるんだろうけど、少なくとも今はうれしい気持ちでいっぱいだった。

 その後、ハルとくだらない会話をしてたら夏祭りが終わってしまった。
 結局、あんず飴しか食べれなかったけど、お腹いっぱいというか、とても満たされた気持ちだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...