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61、学年交流会③
しおりを挟む屋上への扉をガチャガチャと開けようとしていた一団は、尚も騒ぎつつ会話を続けていました。
「一応開けて探してみねー?」
「でも外側から鍵掛けられねぇじゃん」
「田中、実行委員っぽかったし鍵くらい持ってんじゃね?」
「なにそれずりー!」
「もしいたらお仕置きだな」
「サディストのヤル気が上がってる!」
ゲラゲラと笑いながら話される内容に愕然とします。
実行委員で田中という名字は俺しかいません。
俺はようやく身の危険を感じて無意識に肩を組まれたままだった不破先輩の服を握ってしまってました。
「大丈夫だ」
不破先輩は、扉へ向けていた視線を俺に向けて優しく微笑んでくれます。
「もうすぐ援軍が来るから安心していいよ」
生駒先輩も俺の髪をそっと撫でてくれました。2人とも俺を安心させるように普段と変わりない様子で接してくれます。
未だに扉の向こう側では危ない一団が何やら話してますが、俺は何とか落ち着き肩の力を抜いてそっと小声で2人に尋ねました。
「あの、援軍って…どなたですか?」
俺の言葉を聞いた2人は再び顔を見合わせ…今度は不敵にニヤリと笑みを浮かべます。
その時、扉の向こう側から聞き慣れた声が響いてきました。
「そこは立ち入り禁止区域ですよ。何をしているんです?」
あの声は…。
「桐生先生?」
桐生先生の声がした途端、ガチャガチャとドアノブを弄っていた音もゲラゲラと笑っていた不快な声もピタリと静かになりました。
「そこは屋上です。立ち入り禁止区域に隠れ役の生徒は入れないルールですし鬼役の君たちはサボりか何かですか?だったら襷を返却してもらって今すぐ職員室に連行しますが」
扉の向こうで何が行われているかは分かりません。
ただ、桐生先生の言葉を聞いた一団は、口々に何かを言い捨てて去って行く気配は感じました。
そしてすぐ後にカチャリと解錠する音が聞こえ扉が開くと桐生先生、藤堂先輩、春日井くんが屋上へと姿を現しました。
3人が一緒だという事に多少の驚きはありましたが、それよりも立ち入り禁止区域だと言って追い返したにも関わらず屋上へ入ってきた事に驚きました。
しかも、3人は赤い襷を付けていて一目で鬼役だと分かる出で立ち…。
実行委員でありながら立ち入り禁止区域に入ってルールを破り、更には30分しか経っていないにも関わらず見付かってしまうかもしれないという。
俺の学年交流会は終わりを告げるようです……。
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