エロゲーのモブが自我を持ちました

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62、学年交流会④

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屋上にやって来た鬼役の桐生先生、藤堂先輩、春日井くん3人は、何やら校舎内へ目を向けて様子を窺った後扉を閉めて施錠してしまいました。

何故鍵を閉める必要があるんでしょう?

俺は不思議に思ってもう少し様子を窺おうと思いましたが、両隣で俺を守るように陣取っていた不破先輩と生駒先輩が徐に立ち上がって3人の前に姿を現してしまいました。

そんな事をしたら見付かってしまいますし、更にはルール破りで怒られてしまいます。
と声を上げようとすると。


「3人とも遅すぎ!」


「ミノルが怖がっちまっただろーが」


まるで待ち合わせでもしていたかのような台詞に思わず不破先輩と生駒先輩を凝視してしまいます。


「他の鬼役の子とか、わざと見付かろうとする隠れ役の子とかが絡んできて振り切るのに時間食ったんすよ」


突然姿を現した2人に驚きを見せた様子も無く、春日井くんが困ったように肩を竦めています。

どういう事かさっぱり分かりません。
既に3人は俺の姿が見える位置まで移動しています。俺は状況が飲み込めず、5人をそれぞれ見渡して首を傾げてしまいました。


「田中くん、怖い思いをさせてごめんね?説明するから役割の事は忘れて話を聞いてくれるかい?」


藤堂先輩が優しく微笑みながら声をかけてくれます。状況が飲み込めず混乱する頭では答えは出ないと早々に諦め、俺は頷いて大人しく説明を受けることにしました。



ーーーーーーーーーー



扉付近に不破先輩と生駒先輩が陣取り、向こう側の様子を窺ってくれています。
俺と他の3人は、念の為先程まで隠れていた物陰に身を潜めて話をしていました。

要約すると

俺が体育館を出た後に、鬼役の生徒が騒ぎ始めたのが切欠とか。
内容的には先程扉向こうで騒いでいた一団の話の内容のようなもので、俺がターゲットにされていたようでした。
体育館で待機中注意はしたそうですが、聞き入れない輩もいるかもしれないという事と話の内容が物騒だった為、急遽不破先輩と生駒先輩に連絡を取り、俺を確保してもらい安全圏である立ち入り禁止区域の屋上へ避難してもらっていたとか。
屋上の鍵は一足先に接触できた春日井くんが不破先輩に渡したようでした。


「成る程、そう言う事だったんですか…」


どうやら俺は5人に助けてもらっていたようです。
俺は目の前に座る3人へ視線を向け、頭を下げてお礼を述べます。
扉付近に陣取っている2人にも後できちんとお礼を言わなくては。


「それにしても…何で俺がターゲットになるんでしょうね?」


ポツリと溜息交じりで呟いた俺の言葉に、目の前の3人は驚いたように目を見張り次いで同時に扉付近の2人へ視線を向けていました。


「田中くん、それ本気で言ってんの?」


驚いた表情は引っ込めましたが、信じられないものを見る目で春日井くんが尋ねてきます。俺は迷わず頷きました。


「まさか…ここまでとは…」


桐生先生が呆れてしまっています。
何故ですか。解せぬ、ですよ。


「田中くん、正直に言って欲しいんだけど…自分の見た目についてどう思っているのかな?」


藤堂先輩はへんな事聞きますね。分かりきった事じゃないですか。


「特徴のない普通の見た目ですかね。モブ顔というやつです」


俺の答えに3人は何故か呆れたように溜息を吐いてしまいました。
何ですか。本当の事でしょう。


「田中くん、鏡は見てるかい?」


失礼ですよ、藤堂先輩。毎朝身だしなみチェックで全身くまなく見てます。
ひょろい見た目に毎朝がっかりですよ。ちくしょう、です。……あれ?でも顔はあんまり意識して見てないような?でも変わらずのモブ顔でしたよ。多分。


「田中くんは一度しっかり自分の見た目を見た方がいいね。……田中くんは凄く色っぽ…可愛いんだよ」


何故言い直したんです。ちょっと正座しなさい、藤堂先輩。
春日井くんも桐生先生も頷かないで下さい。

正直、千歩譲って可愛いは分かります。好意を寄せてくれる5人は、欲目というもので俺を見てくれているでしょうから。
ですが、言いかけていた色っぽい、というものにはとんと見当が付きません。眼科医をオススメします。


「………良く分かりませんが、取りあえずきちんと鏡で確認してみます」


これ以上見た目云々で時間を割くほどではないと判断して、俺は話を切り上げます。
まだ終了まで時間はありますし、ずっと屋上にいるわけにはいきません。
その事を伝えると、藤堂先輩がまたも優しく微笑みながら頷いてくれました。


「その事なら心配いらないよ。田中くんにはつまらない結果になるかもしれないけどね」


そう言って目の前に座る藤堂先輩と春日井くんは赤い襷を外してそれぞれ差し出してきます。


「取りあえずは、私を除いたこの場の5人で襷を交換した方がお互いに面倒がなくて良いという判断に至りました」


桐生先生が詳しく話してくれました。
俺と桐生先生以外の4人は、ファンの方達にしつこく付きまとわれるのを回避するため。俺は早々に襷を交換して見付かった事にしてしまえば変な輩に絡まれずに実行委員としての仕事に専念できる。
そういった理由で、俺達5人はそれぞれ襷を交換したのでした。

交換する相手はじゃんけんで決めましたが……藤堂先輩と生駒先輩が物凄く嫌そうに交換していたのはちょっと笑えてしまいました。
すみません。



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