荒野のオオカミと砂漠のキツネ

Haruki

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再会

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ロバートは再びバイクに跨ると
軽くエンジンを吹かしてから、その場を後にした。

空軍基地のゲートを通過して、元の道へ出ると
元来た道を逆戻りし始めた。

彼が目指している場所はリサの宿屋だった。
正確に言えばリサの宿屋ではないかも知れないが、今は気にしないでおこう。

空軍基地へ向かっている時に、宿の建物が残っている事は確認していた。
リサと別れたあの日から、かれこれ半年ほどの月日が流れていた。

リサに会えると確信した訳ではないが、一応寄ってみることにした。

ビリビリと痛む耳を押さえながら、バイクを宿屋の前に停めた。
宿屋の前に立ち、ドアを開けようとしたが
いつもとは違い鍵がかかっていた。
改めて看板を見上げると、そこには休業中と書かれた看板がさらにその上からぶら下がっていた。

試しにドアをノックしてみたが中からの応答はなかった。
仕方がないので正面のドアの横にある窓のカーテンの隙間から中を覗き込んだ。

窓からは受付周りを見ることができたが、人の気配はなく、中は廃墟の様だった。

「…流石に居ないか」

ロバートが窓枠を拳で軽く小突き
深いため息と共に肩を落とした。
その時であった。

「俺の家に何の用だ? この小賢しい盗人め!」

ロバートが振り返ると、そこには散弾銃を構えたキツネ族の青年が立っていた。

「俺は盗人じゃない、しかもここは『リサ』って名前のキツネ族の家だ」

「なんでオオカミ族のお前がリサのことを知っている!?」

「知ってて悪かったな! じゃあ聞き返すが、そちらこそなんでリサのことを知ってるんだ!」

「リサは俺の妹だ! 知ってて当然だ!!」

「……妹?」

「ああ、俺は…お前の言うリサの兄だ、文句あるか」

その時リサが息を切らせながら走ってきた。

「兄さん、何で、走ったのよ」

「この盗人が家の中を覗き込んでたんでな」

キツネ族の青年は銃口をロバートに突きつけながら彼女に向かって得意げに語った。

「リサじゃないか、おい、こいつを早くどうにかしてくれ!」

「ロバート!」

リサが驚いてロバートの方を見つめた。

「リサ… ちょっと待て、このオオカミと知り合いなのか?」

「ええそうよ! だから早くその銃を下ろして!」

青年は素直に、しかし不服そうな表情で銃を下ろした。

「ほら、あっち行って」

リサがそう言って青年を追い払った。

「チェッ、なんでいつもこうなんだよ…」

彼はブツブツ言いながら海の方へ歩いて行った。

「…随分と久しぶりね、ロバート」

「ああ、半年ぶりぐらいかな」

それからリサがロバートに抱きついた。

「俺も会いたかったよ」

「心配してたのよ、ずーっと来てくれなくて…」

リサが泣きながらそういった。
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