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さらば親友よ
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ロバートはバイクに腰掛けながらリサと話していた。
「それで…どこに逃げていたんだ?」
「国外よ」
「具体的に言うと?」
「ガット王国よ」
「ああ、あの猫族の国か… いつしか行った記憶がある」
耳からの出血は止まる様子が無く、
傷口に冷たい風が吹きつけるたびにビリビリと痛んだ。
その時になってようやくリサがロバートの耳の傷に気がついた。
「…ロバート! その耳…怪我してるじゃない!」
「あ? コレか、ちょっとした傷さ」
「いったい何があったの?」
「気にすることじゃない」
「でも血が…」
「このくらい大丈夫さ」
しかしどうしてもそのことが気になって仕方がなかったリサは、救急キットを持って鍵が掛かっているはずの正面の玄関から現れた。
「…どこから入ったんだ、入り口は鍵がかかってただろ」
「裏口があるのよ」
「そんなものなかったぞ」
「気づかなくて当然よ、ツタで覆い隠してるもの」
リサはそう言いながら、救急キットの中から包帯と消毒液を取り出すとピンセットで摘み上げた綿に染み込ませ、傷口に押し当てた。
「うぅ…痛っ」
リサは手際良く消毒を終え、ロバートの左耳に包帯を巻いた。
ロバートはその左耳を軽く撫でた。
傷はしっかり覆われていて、さっきより痛みを感じない。
「どう? 少しは良くなったでしょ?」
「ああ、だいぶ良くなったよ」
「にしても、随分と深い傷ね…切り傷とも違うわ、本当に何かあったんじゃないでしょうね」
ロバートが返答に困っていた時であった。
遠くの方で爆発音が聞こえ、黒煙が立ち上った。
「…ロス、」
ロバートは、突然のことに戸惑うリサを置いて
バイクに飛び乗った。
急いでバスの方へ戻ったロバートだったが、
そこには目を背けたくなるような現実が広がっていた。
レジスタンスが再び攻撃してきただろうか、
バスとトラックが炎に包まれており、
オオカミの兵士が、負傷した兵士をトラックに乗せている。
さらに森の方に目をやると複数のキツネ族が倒れている。
そんな中、マシンガンを手にしたまま倒れているロスを見つけ、
そしてすぐさま彼に駆け寄った。
「ロス! しっかりしろ!!」
しかし、いくら呼びかけても揺さぶっても反応は全くない。
「しっかりしろよ! 目を開けてくれ!!」
腹部に目を落とすと、真っ赤に染まっている。
明後日の方向を見つめ続けているその目は、すでに輝きを失っていた。
「起きろよ、ほら、ほらっ!! このヤロウ! 起きろってば!!」
ロバートが膝から崩れ落ちた。
「しっかりしろ、ロス… おい! ロス、死ぬなぁぁぁ!」
ぴくりとも動かないロスを、ロバートは強く抱きしめた。
彼は腕の中に、まだ温もりを感じた。
ロバートは泣いた。
オスのオオカミとしての誇りや、気高さなど忘れて
気が済むまで大声で泣いた。
そして、天まで透き通るような声で、
空に向かって悔しそうに吠えた。
そんな寂しげな彼の後ろ姿を、周りのオオカミはただ見つめることしかできなかった。
ロバートはロスの亡骸を丁寧に抱き抱えると、トラックの荷台に乗せた。
それから
ロスの亡骸はオオカミ族の戦没者が眠る墓地へ埋葬された。
ルナ帝国内に住むロスの家族は、彼の葬式には来れなかった。
話によると、一人だけオオカミ族が尋ねたそうだが
彼の言っていた弟なのだろうか
そして、ロバートはそこに近づくことが出来なかった。
近づきたくなかったのだ。
ロスの死を認めたくなかったのだから仕方あるまい。
後日、捕虜として捕まえたレジスタンスから聞き出した情報により、ルナ帝国の銃火器製造メーカーであるイートン社が戦争終結とともに余った武器を直接売り付けていたことが判明した。
イートン社の社長は、敵組織を支援したと言う罪で処刑された。
「それで…どこに逃げていたんだ?」
「国外よ」
「具体的に言うと?」
「ガット王国よ」
「ああ、あの猫族の国か… いつしか行った記憶がある」
耳からの出血は止まる様子が無く、
傷口に冷たい風が吹きつけるたびにビリビリと痛んだ。
その時になってようやくリサがロバートの耳の傷に気がついた。
「…ロバート! その耳…怪我してるじゃない!」
「あ? コレか、ちょっとした傷さ」
「いったい何があったの?」
「気にすることじゃない」
「でも血が…」
「このくらい大丈夫さ」
しかしどうしてもそのことが気になって仕方がなかったリサは、救急キットを持って鍵が掛かっているはずの正面の玄関から現れた。
「…どこから入ったんだ、入り口は鍵がかかってただろ」
「裏口があるのよ」
「そんなものなかったぞ」
「気づかなくて当然よ、ツタで覆い隠してるもの」
リサはそう言いながら、救急キットの中から包帯と消毒液を取り出すとピンセットで摘み上げた綿に染み込ませ、傷口に押し当てた。
「うぅ…痛っ」
リサは手際良く消毒を終え、ロバートの左耳に包帯を巻いた。
ロバートはその左耳を軽く撫でた。
傷はしっかり覆われていて、さっきより痛みを感じない。
「どう? 少しは良くなったでしょ?」
「ああ、だいぶ良くなったよ」
「にしても、随分と深い傷ね…切り傷とも違うわ、本当に何かあったんじゃないでしょうね」
ロバートが返答に困っていた時であった。
遠くの方で爆発音が聞こえ、黒煙が立ち上った。
「…ロス、」
ロバートは、突然のことに戸惑うリサを置いて
バイクに飛び乗った。
急いでバスの方へ戻ったロバートだったが、
そこには目を背けたくなるような現実が広がっていた。
レジスタンスが再び攻撃してきただろうか、
バスとトラックが炎に包まれており、
オオカミの兵士が、負傷した兵士をトラックに乗せている。
さらに森の方に目をやると複数のキツネ族が倒れている。
そんな中、マシンガンを手にしたまま倒れているロスを見つけ、
そしてすぐさま彼に駆け寄った。
「ロス! しっかりしろ!!」
しかし、いくら呼びかけても揺さぶっても反応は全くない。
「しっかりしろよ! 目を開けてくれ!!」
腹部に目を落とすと、真っ赤に染まっている。
明後日の方向を見つめ続けているその目は、すでに輝きを失っていた。
「起きろよ、ほら、ほらっ!! このヤロウ! 起きろってば!!」
ロバートが膝から崩れ落ちた。
「しっかりしろ、ロス… おい! ロス、死ぬなぁぁぁ!」
ぴくりとも動かないロスを、ロバートは強く抱きしめた。
彼は腕の中に、まだ温もりを感じた。
ロバートは泣いた。
オスのオオカミとしての誇りや、気高さなど忘れて
気が済むまで大声で泣いた。
そして、天まで透き通るような声で、
空に向かって悔しそうに吠えた。
そんな寂しげな彼の後ろ姿を、周りのオオカミはただ見つめることしかできなかった。
ロバートはロスの亡骸を丁寧に抱き抱えると、トラックの荷台に乗せた。
それから
ロスの亡骸はオオカミ族の戦没者が眠る墓地へ埋葬された。
ルナ帝国内に住むロスの家族は、彼の葬式には来れなかった。
話によると、一人だけオオカミ族が尋ねたそうだが
彼の言っていた弟なのだろうか
そして、ロバートはそこに近づくことが出来なかった。
近づきたくなかったのだ。
ロスの死を認めたくなかったのだから仕方あるまい。
後日、捕虜として捕まえたレジスタンスから聞き出した情報により、ルナ帝国の銃火器製造メーカーであるイートン社が戦争終結とともに余った武器を直接売り付けていたことが判明した。
イートン社の社長は、敵組織を支援したと言う罪で処刑された。
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