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一匹オオカミ
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翌日
ロバートは起き上がるのがやっとだった。
彼にとってロスは同僚であり、そして良き友であった。
そんな彼を失ったロバートの心はズタボロであった。
バイクのエンジンをかけた瞬間、エンジンが甲高い悲鳴をあげたかと思うと、突然黒煙が上がった。
野晒しだったこのバイクを拾った時から、
ろくに整備をしていなかったため
ついにガタが来たのだろう。
バタバタ喚きながら、ついにエンジンが止まってしまった。
仕方なく、バイクを押しながら車両格納庫へと向かった。
そこには、先日の襲撃によって廃車になったトラックとバスが置かれていた。
「どうしたんだい? そのバイク」
整備兵の老人がそう言った。
「いやぁ、ついさっき故障して…」
「がたが来たんかな、どれ、ちょっと貸してみな」
年寄りの整備兵は、数人の整備士を呼び
バイクをいじり始めた。
その年老いた整備兵が若い整備兵に修理箇所と、やり方を教えていた。
「はっはっは、機械いじりの練習には、コレくらいが良いんだよ」
老兵がロバートにそう言った。
「ちょっと待てよ! 俺のバイクですよ、なに教材にしてるんですか!」
今にも飛びかかりそうなロバートを落ち着かせて。
「まあまあ落ち着きなさりな、まあ見ておれ」
ロバートはその時はいささか信じられなかったが、完成したバイクを見ると思わず息を呑んだ。
錆び付いていた各部品は新品同様の輝きを取り戻しており、壊れたエンジンは新しいものに付け替えられていた。
「昨日トラックが壊れたもんだから、部品と鉄板が有り余ってたんだ、
銃痕だらけだったボディも張り替えたのと、防弾版をつけた。
ちょっとばかし重くはなったが、
エンジンをそこら辺に転がってたルナ帝国製のやつに付け替えといた。
馬力は前のやつとは比べ物にならないぞ」
「うわぁ、すげぇや…」
「サイドカーの機関銃も、航空部隊で余ってた新品の機関砲に付け替えておいた。コレで火力も十分だ… あとはだなぁ、タイヤを変えたのと、スペアタイヤも取り付けておいたぞ」
老兵が自慢そうに説明した。
「あ、ありがとうございます」
「なあに、礼には及ばんよ」
ロバートはバイクを押して格納庫の外へ出た。
そしてバイクのエンジンを掛けると、格納庫の方へ手を振りながら走り去った。
ロバートの姿は、例の墓地にあった。
その墓地の規模はとても広く、一から探すのは難しいであろう。
『ミュラー・ロス 1942年3月27日 ここに眠る』
そう刻まれた墓石の前に花束を捧げた。
「ごめんよ… ちゃんとした葬式もしてやれなくて」
そう言って、ロスの形見の腕時計を見つめた。
それを丁寧に布で包み、カバンにしまった。
空軍基地へ戻る途中、市場の前の大通りで偶然リサを見かけた。
買い出しを終えて帰るところなのか、両手いっぱいの荷物を抱えている。
ロバートはバイクの速度を下げて、ゆっくりとリサを追い抜くと
バイクを歩道に寄せて停めた。
「よおリサ、乗って行くか?」
「ええ、ありがとう」
リサがサイドカーに抱えていた荷物を放り込んだ。
「バイク、随分と綺麗になったわね」
「ああ、実は直してもらったんだ」
「あら、よかったじゃない」
リサが荷物を積み込んでいる間に、ロバートは辺りをキョロキョロと見回していた。
何故かわからないが、周囲から敵対的な視線を感じてならない。
「なあリサ…気のせいかもしれないが、周りから敵意を感じるんだ…」
「え? そんなことないけど」
リサも辺りを見渡すが、何事もなさそうである。
リサが後ろに乗ると、ロバートはバイクを発進させた。
「気のせい…か」
「そう言えば、オオカミの軍人がキツネ族を殺してるのを見たって言う噂さっきの市場で耳にしたけど… それのせいかしら?」
「ああ…まったく酷い噂だ」
「きっとオオカミ族のことをよく思ってない人が流した噂でしょうね」
「政府も言ってただろ、キツネ族には手を出さないって」
「…そうよね」
ロバートのバイクは土煙を上げながら、未舗装の道を颯爽と駆け抜けた。
そして、リサの宿の前に着いて荷物を下ろし終わった後のことであった。
「ねえロバート、この間は何があったの? 何かが爆発したあと、あなた、すぐにバイクで走って行っちゃって…」
「気にすることじゃない、ちょっとした事故さ」
「でも銃声みたいなのも聞こえたわ…」
ロバートの表情が一瞬凍りついたが、
「銃声…? 何かが破裂した音は聞いたんだが」
そう素早く誤魔化した。
リサの認識では、ロバートはパイロットである。
軍人だとは微塵も思ってのいないだろう。
「そうよね、少し考えすぎたわ」
リサはそう言ってコツンと頭を叩いた。
そのあと彼はリサと別れ、空軍基地へバイクを走らせた。
ロバートは起き上がるのがやっとだった。
彼にとってロスは同僚であり、そして良き友であった。
そんな彼を失ったロバートの心はズタボロであった。
バイクのエンジンをかけた瞬間、エンジンが甲高い悲鳴をあげたかと思うと、突然黒煙が上がった。
野晒しだったこのバイクを拾った時から、
ろくに整備をしていなかったため
ついにガタが来たのだろう。
バタバタ喚きながら、ついにエンジンが止まってしまった。
仕方なく、バイクを押しながら車両格納庫へと向かった。
そこには、先日の襲撃によって廃車になったトラックとバスが置かれていた。
「どうしたんだい? そのバイク」
整備兵の老人がそう言った。
「いやぁ、ついさっき故障して…」
「がたが来たんかな、どれ、ちょっと貸してみな」
年寄りの整備兵は、数人の整備士を呼び
バイクをいじり始めた。
その年老いた整備兵が若い整備兵に修理箇所と、やり方を教えていた。
「はっはっは、機械いじりの練習には、コレくらいが良いんだよ」
老兵がロバートにそう言った。
「ちょっと待てよ! 俺のバイクですよ、なに教材にしてるんですか!」
今にも飛びかかりそうなロバートを落ち着かせて。
「まあまあ落ち着きなさりな、まあ見ておれ」
ロバートはその時はいささか信じられなかったが、完成したバイクを見ると思わず息を呑んだ。
錆び付いていた各部品は新品同様の輝きを取り戻しており、壊れたエンジンは新しいものに付け替えられていた。
「昨日トラックが壊れたもんだから、部品と鉄板が有り余ってたんだ、
銃痕だらけだったボディも張り替えたのと、防弾版をつけた。
ちょっとばかし重くはなったが、
エンジンをそこら辺に転がってたルナ帝国製のやつに付け替えといた。
馬力は前のやつとは比べ物にならないぞ」
「うわぁ、すげぇや…」
「サイドカーの機関銃も、航空部隊で余ってた新品の機関砲に付け替えておいた。コレで火力も十分だ… あとはだなぁ、タイヤを変えたのと、スペアタイヤも取り付けておいたぞ」
老兵が自慢そうに説明した。
「あ、ありがとうございます」
「なあに、礼には及ばんよ」
ロバートはバイクを押して格納庫の外へ出た。
そしてバイクのエンジンを掛けると、格納庫の方へ手を振りながら走り去った。
ロバートの姿は、例の墓地にあった。
その墓地の規模はとても広く、一から探すのは難しいであろう。
『ミュラー・ロス 1942年3月27日 ここに眠る』
そう刻まれた墓石の前に花束を捧げた。
「ごめんよ… ちゃんとした葬式もしてやれなくて」
そう言って、ロスの形見の腕時計を見つめた。
それを丁寧に布で包み、カバンにしまった。
空軍基地へ戻る途中、市場の前の大通りで偶然リサを見かけた。
買い出しを終えて帰るところなのか、両手いっぱいの荷物を抱えている。
ロバートはバイクの速度を下げて、ゆっくりとリサを追い抜くと
バイクを歩道に寄せて停めた。
「よおリサ、乗って行くか?」
「ええ、ありがとう」
リサがサイドカーに抱えていた荷物を放り込んだ。
「バイク、随分と綺麗になったわね」
「ああ、実は直してもらったんだ」
「あら、よかったじゃない」
リサが荷物を積み込んでいる間に、ロバートは辺りをキョロキョロと見回していた。
何故かわからないが、周囲から敵対的な視線を感じてならない。
「なあリサ…気のせいかもしれないが、周りから敵意を感じるんだ…」
「え? そんなことないけど」
リサも辺りを見渡すが、何事もなさそうである。
リサが後ろに乗ると、ロバートはバイクを発進させた。
「気のせい…か」
「そう言えば、オオカミの軍人がキツネ族を殺してるのを見たって言う噂さっきの市場で耳にしたけど… それのせいかしら?」
「ああ…まったく酷い噂だ」
「きっとオオカミ族のことをよく思ってない人が流した噂でしょうね」
「政府も言ってただろ、キツネ族には手を出さないって」
「…そうよね」
ロバートのバイクは土煙を上げながら、未舗装の道を颯爽と駆け抜けた。
そして、リサの宿の前に着いて荷物を下ろし終わった後のことであった。
「ねえロバート、この間は何があったの? 何かが爆発したあと、あなた、すぐにバイクで走って行っちゃって…」
「気にすることじゃない、ちょっとした事故さ」
「でも銃声みたいなのも聞こえたわ…」
ロバートの表情が一瞬凍りついたが、
「銃声…? 何かが破裂した音は聞いたんだが」
そう素早く誤魔化した。
リサの認識では、ロバートはパイロットである。
軍人だとは微塵も思ってのいないだろう。
「そうよね、少し考えすぎたわ」
リサはそう言ってコツンと頭を叩いた。
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