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春風は急に吹く
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空軍基地の近くのカフェでリサとお茶をしながら、ロバートは新聞を読んでいた。
カフェの前を通るオオカミ族の軍人がリサの姿を物珍しそうに見ながら通り過ぎていく。
「あなたも食べる?」
リサがそう聞くと、胸ポケットからラタが顔を出し、テーブルに飛び降りた。
「なあリサ、そいつは誰だい?」
ロバートはコーヒーを飲みながら、
皿の上でクッキーのかけらを抱えながら喜びの舞を踊っているラタを指差した。
「ラタって言うのよ、かわいいでしょ」
そう言ってラタの頭を優しく撫でた。
そんな二人を、通りを挟んで向かい側から監視している者がいた。
「アイツらどうしてやります?」
「へっ、仕返ししてやるに決まってるだろ」
「でも、あのキツネのかわい子ちゃんは関係なくないすか?」
「いいや、俺はあのオオカミ野郎に仲間を殺された。アイツに関わってる全員はキツネ族も含めて全て敵とみなす」
「そうすか、僕的には見逃してやっても…」
「そう言うところが甘いからお前はいつまで経ってもダメなままなんだ… 殺す、二人とも確実にな… まあ任せろ、作戦なら練ってある」
そのキツネ族は不気味な笑みを浮かべた。
「さて、今日は少し大切な話があって呼んだんだ」
ロバートの手には手のひらサイズの小箱が握られている。
「なに? どう言った話?」
リサがまじまじとロバートを見つめる。
ロバートもしっかりとリサの目を見つめる。
「あの、その… ほらさ、理由はどうであれ、こうして住む国が一つになった訳だから、ほら、その…」
ロバートは一回咳払いすると
「僕と…」
そう言って小箱を取り出そうとした時だった。
「すみません、ロバートさんですよね」
なんてタイミングだろうか、オオカミ族の若者がそう言って近づいて来た。
「ああ、確かに僕はロバートだが、今大事な時なんだ…すまないが後にしてくれないか?」
ロバートがうんざりしてそう答えた。
「どうしても伝えなければならないことがありまして…」
ロバートは仕方なく席を外すことにした。
「君は? どこかで会ったことがあるかな?」
「いいえ、アルトと申します」
若者はそう名乗った。
背中にライフルを背負っている。
「そうか…で、何の情報を持って来たんだ?」
「ここでは申し上げにくいので、少し場所を移動しましょう」
その青年はそう言ってリサを指差した。
「ああそう言うことか… 分かった、店の裏手に行こう」
ロバートがそう提案し、二人で店の裏手へと移動した。
「ーで、話の内容はなんだ? あそこだと話せないような内容となる訳だが…」
「簡単に言いますと… あのキツネ族の兄はレジスタンスの連中です」
「なんだと!? どう言うことだ?」
ロバートは驚いて、思わず聞き返した。
「ですから先ほど述べた通りです、ロバートさん」
「冗談じゃない、そんなことがあってたまるか」
「ですが、事実は事実です… ですからくれぐれもお気をつけを」
ロバートはしばらく黙ってうつむいていた。
「…君は、何者なんだ?」
「協力者、アドバイザーだと思っていただければ」
「なぜ僕に情報を渡した?」
「…ロス、彼は私の良い兄でした、僕のことをホントに大切にしてくれた」
ロバートには、彼の目に一瞬少し光るものが見えたような気がした。
青年は言い終わるとツバつき帽をキュッと被り直し、路地を抜けて大通りの人混みの中へと消えていった。
それからロバートは何事もなかったかのように席に着いた。
「ねえロバート… さっきのオオカミはあなたの知り合い?」
「いいや、でもまあ話は済んだから、もう大丈夫だ」
ロバートはそう笑顔で答えた。
その時、時計台の鐘が4時の時報を知らせた。
「…今日はありがとう、私そろそろ帰らなきゃ」
「えっ! あ、… そうか」
「じゃあ私の分の代金は今渡しとくわね」
彼女はそう言って財布を取り出そうとしが
「いやいや、いいよいいよ、今日は俺の奢りってことで俺が払っとくよ」
ロバートはそう言って代金を受け取るのを拒んだ。
「ホントに! ありがと」
リサはそう言うとロバートの頬に小さくキスをした。
「へっ…?」
ロバートが真っ赤になってフリーズしている間に、リサはそそくさと店を立ち去った。
カフェの前を通るオオカミ族の軍人がリサの姿を物珍しそうに見ながら通り過ぎていく。
「あなたも食べる?」
リサがそう聞くと、胸ポケットからラタが顔を出し、テーブルに飛び降りた。
「なあリサ、そいつは誰だい?」
ロバートはコーヒーを飲みながら、
皿の上でクッキーのかけらを抱えながら喜びの舞を踊っているラタを指差した。
「ラタって言うのよ、かわいいでしょ」
そう言ってラタの頭を優しく撫でた。
そんな二人を、通りを挟んで向かい側から監視している者がいた。
「アイツらどうしてやります?」
「へっ、仕返ししてやるに決まってるだろ」
「でも、あのキツネのかわい子ちゃんは関係なくないすか?」
「いいや、俺はあのオオカミ野郎に仲間を殺された。アイツに関わってる全員はキツネ族も含めて全て敵とみなす」
「そうすか、僕的には見逃してやっても…」
「そう言うところが甘いからお前はいつまで経ってもダメなままなんだ… 殺す、二人とも確実にな… まあ任せろ、作戦なら練ってある」
そのキツネ族は不気味な笑みを浮かべた。
「さて、今日は少し大切な話があって呼んだんだ」
ロバートの手には手のひらサイズの小箱が握られている。
「なに? どう言った話?」
リサがまじまじとロバートを見つめる。
ロバートもしっかりとリサの目を見つめる。
「あの、その… ほらさ、理由はどうであれ、こうして住む国が一つになった訳だから、ほら、その…」
ロバートは一回咳払いすると
「僕と…」
そう言って小箱を取り出そうとした時だった。
「すみません、ロバートさんですよね」
なんてタイミングだろうか、オオカミ族の若者がそう言って近づいて来た。
「ああ、確かに僕はロバートだが、今大事な時なんだ…すまないが後にしてくれないか?」
ロバートがうんざりしてそう答えた。
「どうしても伝えなければならないことがありまして…」
ロバートは仕方なく席を外すことにした。
「君は? どこかで会ったことがあるかな?」
「いいえ、アルトと申します」
若者はそう名乗った。
背中にライフルを背負っている。
「そうか…で、何の情報を持って来たんだ?」
「ここでは申し上げにくいので、少し場所を移動しましょう」
その青年はそう言ってリサを指差した。
「ああそう言うことか… 分かった、店の裏手に行こう」
ロバートがそう提案し、二人で店の裏手へと移動した。
「ーで、話の内容はなんだ? あそこだと話せないような内容となる訳だが…」
「簡単に言いますと… あのキツネ族の兄はレジスタンスの連中です」
「なんだと!? どう言うことだ?」
ロバートは驚いて、思わず聞き返した。
「ですから先ほど述べた通りです、ロバートさん」
「冗談じゃない、そんなことがあってたまるか」
「ですが、事実は事実です… ですからくれぐれもお気をつけを」
ロバートはしばらく黙ってうつむいていた。
「…君は、何者なんだ?」
「協力者、アドバイザーだと思っていただければ」
「なぜ僕に情報を渡した?」
「…ロス、彼は私の良い兄でした、僕のことをホントに大切にしてくれた」
ロバートには、彼の目に一瞬少し光るものが見えたような気がした。
青年は言い終わるとツバつき帽をキュッと被り直し、路地を抜けて大通りの人混みの中へと消えていった。
それからロバートは何事もなかったかのように席に着いた。
「ねえロバート… さっきのオオカミはあなたの知り合い?」
「いいや、でもまあ話は済んだから、もう大丈夫だ」
ロバートはそう笑顔で答えた。
その時、時計台の鐘が4時の時報を知らせた。
「…今日はありがとう、私そろそろ帰らなきゃ」
「えっ! あ、… そうか」
「じゃあ私の分の代金は今渡しとくわね」
彼女はそう言って財布を取り出そうとしが
「いやいや、いいよいいよ、今日は俺の奢りってことで俺が払っとくよ」
ロバートはそう言って代金を受け取るのを拒んだ。
「ホントに! ありがと」
リサはそう言うとロバートの頬に小さくキスをした。
「へっ…?」
ロバートが真っ赤になってフリーズしている間に、リサはそそくさと店を立ち去った。
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