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安全地帯
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『我らが帝国軍は、さらに周辺国へ戦争を仕掛ける作戦をすでに計画している』
そんなことが新聞に載っていた。
それを見たロバートは、思わず二度見した。
しかし『政府が当然快くゴーサインを出すわけがなく。現在、軍部と政府で揉め合っている。両者の意見の対立は日に日に酷くなっていっている』とも書かれている。
ロバートもその情報に危機感を覚えた。
今の政府はキツネ族とは極力友好的な関係を保ちたいと考えているが、軍部は違う
キツネ族をこの世から排除するべき対象と考えている。
もし、軍部の意見が優先される様になったら…
いや、クーデターを起こして政権を奪った場合、
真っ先に元ヴォルペ共和国内に住んでいるキツネ族は抹殺されることだろう。
ロバートはすぐさまリサの元へ向かった。
「リサ、大事な話がある」
「今度は何よ? そんなに焦って…」
「この国から早く逃げるんだ、良いか」
リサは突然のことにキョトンとしている。
「急に何を言い出すのかと思ったら、どう言うことよ??」
「よく聞いてくれ、ルナ帝国の軍と政府が揉めてる。しかも今の政府は政策の失敗が重なってる上に、国民からの支持も低くなってきている。もし軍がクーデターでも起こせば、政権は簡単のひっくり返るだろう」
「別の良いんじゃないの?」
「いいや、軍部はキツネ族を絶滅させるつもりだ」
「どう言うことよ、政府はキツネ族に手出ししないって言ってたじゃない!」
リサがそう反論した。
「『今』の政府はな、でも軍部は違う… だから、逃げるんだ今のうちに」
「でも無理よ! 私たちはこの国から出られないもの!」
「しまった、そうだったな」
キツネ族は、一部の特殊な事情の者と金持ちを除き、自由に国外に移動することが規制されている。
もしこれを破った場合、間違いなく消される。
つまり国そのものが巨大な檻なのだ。
彼らはそこに閉じ込められているも同然だ。
このまま政権が変わるのは時間の問題だろうから、
どうにか早期に対策を練らねばならない…
「…ロバート、つまり私たちはオオカミに皆殺しにされるってことなの…?」
リサが恐る恐るそう聞いた。
ロバートは黙って小さく頷いた。
「…国外に出られないなら、どこかに身を隠すしか方法は…」
「どこかに隠れて暮らすなら、いくらでもアドバイスするよ」
ラタがそう言ってポケットから出てきた。
「確かにネズミ族ならそこら辺は専門分野か… じゃあ聞くが、君ならどこに隠れる」
「…う~ん、リサさんのサイズを考えると… 一番合理的なのは洞穴だけど、温度調整ができないからなぁ」
「長期間の滞在は無理… か、となるとある程度は『家』として機能しないとな」
その時、リサが何か閃いた様にこう呟いた。
「森の真ん中に廃村があったはずよ、少し山を登ることになるけど… きっとそこなら…」
「よし分かった、案内してくれ」
ロバートはリサをバイクに乗せ、その廃村を目指して進んだ。
道は相変わらずガタガタしているが、奥に進むほど道は荒れていき
おそらくもう誰も使っていないのであろう。
ついには道と呼べないほど草が生い茂る様になった。
リサ曰く、昔はこの道を使って森の木を街の工場へ運び出していたらしく、
昔のヒラリーは木材を加工する工業が発達していたらしい。
今から行こうとしている村は、その林業に関わるキツネが住んでいたようだが、木材加工業の低迷から需要を失い、一部の建物がその名残として今でも廃村として残っているそうだ。
道は徐々に険しくなっていき、
ついでに倒木が増えてきたので、バイクを諦めて歩いて進むことにした。
木々に覆われた道は湿っていてぬかるんでおり、空気は春先にも関わらずヒンヤリとしている。
しばらく進むと、森の中にも関わらず木が生えていない空間が現れた。
その空間から上を見上げると青空がのぞいている。
屋根だけの建物がが2、3件建っている。
おそらく木材を保管する倉庫のように使われていたに違いない
さらに奥に進むと、古びた感じの住宅が見えてきた。
しっかりした感じの建物で、今でも問題なく使えそうであった。
建物の周辺を見て回ると、カバーの掛かった機械を見つけた
ひどく錆び付いているようで、触った手が真っ赤になってしまった。
木を切り出す道具か、または運び出す類の道具だったのだろう。
肝心の家の方はどうなのか確かめるため、ドアに手をかけた。
鍵はそもそも付いていない。
林業の関係者しか訪れない場所だからこそお互いにある程度の信頼関係があったからなのだろうか?
家の中は薄暗く、少々しっけていてカビ臭かった。
「コレじゃあ中が見えにくいな… 何か灯りを持って来れば良かったんだが…」
そう呟いた瞬間、ポッと赤い光が灯った。
「どう? 少しは明るいでしょ?」
リサが嬉しそうに言った。
赤い光の正体は狐火だったのだ。
「…でもリサ、君は尻尾が一本しか無いじゃないか」
「あら、ロバートったら物知りね」
キツネ族には普通種と魔族の二種類が存在している。
普通のキツネ族は尻尾は一本と決まっているが
魔族は基本的に尻尾は二本以上と決まっている。
その魔族は尻尾の数に応じて魔力に違いがあるらしく、
確か九本が最大だったはずだ。
つまり俗に言う九尾の狐はキツネ魔族の中でも最大レベルの魔力を操ることができるというわけだ。
この魔族には、特別な能力が備わっており
この狐火の関しても、魔族の特権と言える技の一つだ。
ロバートはそう本で読んだことがある。
「この尻尾はね、私のお母さんが切ったの… 元々は3本あるわ」
そう言ってリサは自分の尻尾眺めた。
「魔族だと気づかれないために切ったのか」
「ええ、普通のキツネのフリをしていた方が生活しやすいからね」
ロバートはリサの狐火をじっと見つめた。
「それにしても随分と安定してるな… 他には何か使えるのか? ほら、空を飛べるとか」
リサは首を横に振った。
「いいえ、小さい頃から教わって練習しなければそう言った魔力は使えないのよ」
リサはそう言って手のひらからもう一つ狐火を生み出し、ロバートの方へ飛ばした。
「狐火ぐらいなら私でも出せるわ… でね、私の家系の狐火はちょっと特殊で、生命に反応してそれを追いかける習性があるの」
ロバートが試しに少し歩くと、その狐火も彼の後を追って動く。
「なるほど、こりゃ便利だ」
ロバートはそう言って照らされた家の中を見回した。
目立った損傷などはないようで、掃除すれば住めるだろう。
リサもなかなか気に入ったようだ。
「建物の問題はないようだな…」
「でも、食料はどうするのよ、街まで買いに行けるとは思えないわ」
「…それは俺がどうにかする、あとはこの家に最低限住める用意だけ持ってくれば完璧だな」
それから、リサと一緒にバイクに乗り
元来た道を辿った。
リサを家に送り届けてしまうと、ロバートはその勢いで海へ向かった。
そしてハンドルの上に腕を組んでその上に顎を乗せながら青い海を眺めた。
そんなことが新聞に載っていた。
それを見たロバートは、思わず二度見した。
しかし『政府が当然快くゴーサインを出すわけがなく。現在、軍部と政府で揉め合っている。両者の意見の対立は日に日に酷くなっていっている』とも書かれている。
ロバートもその情報に危機感を覚えた。
今の政府はキツネ族とは極力友好的な関係を保ちたいと考えているが、軍部は違う
キツネ族をこの世から排除するべき対象と考えている。
もし、軍部の意見が優先される様になったら…
いや、クーデターを起こして政権を奪った場合、
真っ先に元ヴォルペ共和国内に住んでいるキツネ族は抹殺されることだろう。
ロバートはすぐさまリサの元へ向かった。
「リサ、大事な話がある」
「今度は何よ? そんなに焦って…」
「この国から早く逃げるんだ、良いか」
リサは突然のことにキョトンとしている。
「急に何を言い出すのかと思ったら、どう言うことよ??」
「よく聞いてくれ、ルナ帝国の軍と政府が揉めてる。しかも今の政府は政策の失敗が重なってる上に、国民からの支持も低くなってきている。もし軍がクーデターでも起こせば、政権は簡単のひっくり返るだろう」
「別の良いんじゃないの?」
「いいや、軍部はキツネ族を絶滅させるつもりだ」
「どう言うことよ、政府はキツネ族に手出ししないって言ってたじゃない!」
リサがそう反論した。
「『今』の政府はな、でも軍部は違う… だから、逃げるんだ今のうちに」
「でも無理よ! 私たちはこの国から出られないもの!」
「しまった、そうだったな」
キツネ族は、一部の特殊な事情の者と金持ちを除き、自由に国外に移動することが規制されている。
もしこれを破った場合、間違いなく消される。
つまり国そのものが巨大な檻なのだ。
彼らはそこに閉じ込められているも同然だ。
このまま政権が変わるのは時間の問題だろうから、
どうにか早期に対策を練らねばならない…
「…ロバート、つまり私たちはオオカミに皆殺しにされるってことなの…?」
リサが恐る恐るそう聞いた。
ロバートは黙って小さく頷いた。
「…国外に出られないなら、どこかに身を隠すしか方法は…」
「どこかに隠れて暮らすなら、いくらでもアドバイスするよ」
ラタがそう言ってポケットから出てきた。
「確かにネズミ族ならそこら辺は専門分野か… じゃあ聞くが、君ならどこに隠れる」
「…う~ん、リサさんのサイズを考えると… 一番合理的なのは洞穴だけど、温度調整ができないからなぁ」
「長期間の滞在は無理… か、となるとある程度は『家』として機能しないとな」
その時、リサが何か閃いた様にこう呟いた。
「森の真ん中に廃村があったはずよ、少し山を登ることになるけど… きっとそこなら…」
「よし分かった、案内してくれ」
ロバートはリサをバイクに乗せ、その廃村を目指して進んだ。
道は相変わらずガタガタしているが、奥に進むほど道は荒れていき
おそらくもう誰も使っていないのであろう。
ついには道と呼べないほど草が生い茂る様になった。
リサ曰く、昔はこの道を使って森の木を街の工場へ運び出していたらしく、
昔のヒラリーは木材を加工する工業が発達していたらしい。
今から行こうとしている村は、その林業に関わるキツネが住んでいたようだが、木材加工業の低迷から需要を失い、一部の建物がその名残として今でも廃村として残っているそうだ。
道は徐々に険しくなっていき、
ついでに倒木が増えてきたので、バイクを諦めて歩いて進むことにした。
木々に覆われた道は湿っていてぬかるんでおり、空気は春先にも関わらずヒンヤリとしている。
しばらく進むと、森の中にも関わらず木が生えていない空間が現れた。
その空間から上を見上げると青空がのぞいている。
屋根だけの建物がが2、3件建っている。
おそらく木材を保管する倉庫のように使われていたに違いない
さらに奥に進むと、古びた感じの住宅が見えてきた。
しっかりした感じの建物で、今でも問題なく使えそうであった。
建物の周辺を見て回ると、カバーの掛かった機械を見つけた
ひどく錆び付いているようで、触った手が真っ赤になってしまった。
木を切り出す道具か、または運び出す類の道具だったのだろう。
肝心の家の方はどうなのか確かめるため、ドアに手をかけた。
鍵はそもそも付いていない。
林業の関係者しか訪れない場所だからこそお互いにある程度の信頼関係があったからなのだろうか?
家の中は薄暗く、少々しっけていてカビ臭かった。
「コレじゃあ中が見えにくいな… 何か灯りを持って来れば良かったんだが…」
そう呟いた瞬間、ポッと赤い光が灯った。
「どう? 少しは明るいでしょ?」
リサが嬉しそうに言った。
赤い光の正体は狐火だったのだ。
「…でもリサ、君は尻尾が一本しか無いじゃないか」
「あら、ロバートったら物知りね」
キツネ族には普通種と魔族の二種類が存在している。
普通のキツネ族は尻尾は一本と決まっているが
魔族は基本的に尻尾は二本以上と決まっている。
その魔族は尻尾の数に応じて魔力に違いがあるらしく、
確か九本が最大だったはずだ。
つまり俗に言う九尾の狐はキツネ魔族の中でも最大レベルの魔力を操ることができるというわけだ。
この魔族には、特別な能力が備わっており
この狐火の関しても、魔族の特権と言える技の一つだ。
ロバートはそう本で読んだことがある。
「この尻尾はね、私のお母さんが切ったの… 元々は3本あるわ」
そう言ってリサは自分の尻尾眺めた。
「魔族だと気づかれないために切ったのか」
「ええ、普通のキツネのフリをしていた方が生活しやすいからね」
ロバートはリサの狐火をじっと見つめた。
「それにしても随分と安定してるな… 他には何か使えるのか? ほら、空を飛べるとか」
リサは首を横に振った。
「いいえ、小さい頃から教わって練習しなければそう言った魔力は使えないのよ」
リサはそう言って手のひらからもう一つ狐火を生み出し、ロバートの方へ飛ばした。
「狐火ぐらいなら私でも出せるわ… でね、私の家系の狐火はちょっと特殊で、生命に反応してそれを追いかける習性があるの」
ロバートが試しに少し歩くと、その狐火も彼の後を追って動く。
「なるほど、こりゃ便利だ」
ロバートはそう言って照らされた家の中を見回した。
目立った損傷などはないようで、掃除すれば住めるだろう。
リサもなかなか気に入ったようだ。
「建物の問題はないようだな…」
「でも、食料はどうするのよ、街まで買いに行けるとは思えないわ」
「…それは俺がどうにかする、あとはこの家に最低限住める用意だけ持ってくれば完璧だな」
それから、リサと一緒にバイクに乗り
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