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第5章 壊れゆく関係と自覚
第5章 第4話 記憶(Sideカイゼル)
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sideカイゼル
ーーくそっ…
昂った体を鎮めるのに時間が欲しくて、わざと遠回りの、人気の少ない道を選ぶ。
さっき、結界に不穏な気配が飛び込んできたのを感じて、急いで駆けつければ、リィナに手を貸すクロードの姿があった。
ーー『マタ、ウバワレルノカ?』
あの姿を見た瞬間に体の奥底から、そんな声が聞こえてきて、喉が詰まって足が止まった。
その後は、いつもの…あれだ。
諦観に似た脱力に襲われた。
そして僅かばかり、二人に声をかけるのが遅れてしまった。
ーーそれにしても、魔素をコントロールできなかったのは、失敗だな…。最近はかなり気を付けていたが…
リィナに近づき過ぎないようにと、細心の注意を払っていたが…かえって裏目に出てしまった。
手を握ってしまえば、
『リィナが足りないと…』
本能が求めて蠢くのを止められなかった。
ーー嫉妬を押さえるのは、うまくなっていたはずなんだがな。
木の陰に滑り込むように身を潜め、背を預けて腰を降ろす。
ーーまずは、渦巻く青と紫の魔素を落ち着かせたい。
さっきまで繋いでいたあの手の感触を確かめるよう開いたり閉じたりを繰り返し、地面に落ちた薔薇の花弁をぼんやりと眺めていた。
そんな俺の目の前を青い蝶が湖面の上を滑るかのように、静かに目の前を横切って、森の奥へと消えていく。
初めてリィナの魔素を身の内に感じた時の愉悦を思い出し、身体が、また、温度を上げる。
それをなんとか鎮めようと、目を閉じれば、俺の意識は遠く過去へと、じわじわと誘われた。
ーー里菜は幼馴染だった。
里菜の両親は時々仕事で不在にするらしく、月に一度や二度は俺の家に泊まっていた。
だから、家族のように過ごす時間は長く、俺の記憶の中には、常に里菜がいる。
ーーそうだ。
いつだって、里菜は俺の側にいた。
どんな時も里菜は無邪気な笑顔を浮かべて、──何度も何度も「大好き」と言いながら、足元にじゃれついて付いて、離れなかった。
小さな手が俺の上着の裾を掴んで、一心に自分を見ろと引っ張って、一生懸命拙い言葉で色んな事を伝えてくるんだ。
口下手で自分のことをうまく話せない俺は、里菜と一緒にいるのは気が楽だった。
俺だって、ずっと年下の幼馴染の「大好き」を真に受けてた訳じゃない…
でも、里菜の純粋な好意は、嬉しくて、俺を少し得意げな気持ちにしていたのはーー事実だ。
瞼の裏で木漏れ日が揺れる気配がして、ふっと目を開けて空を見る。
俺の座る影に、陽光が差し込んでいた。
『お前はなんでもできるから』
ーー周りの奴らは良くそう言ってたな。
親父やお袋も、俺には特に厳しかった。
とにかく作法やら、礼儀やらを叩き込まれたもんだ。
俺にとって、できるようになるまで何かを繰り返すことはそれほど苦ではなかった。
正直なところ息苦しさを感じる時もあったが…
ーーそんな時は里菜の笑顔を見ていると楽になれたんだ。
木の葉を間から溢れる光を手で掬えば、ほんのりと温かく…里菜の笑顔を彷彿とさせた。
雲が風に靡いて、
手のひらの光は儚く消えた。
俺はまた、だらりと腕を降ろして、
木の幹に体を預ける。
ーー俺が中学に入って…里菜と陸人も中学年にもなると…変わっていった、けどな。
俺に纏わりついていた里菜は、うちにいる時は、次第に陸人と過ごす時間が増えた。
二人は、頭を突き合わせてタブレットをのぞき込んでいたり、宿題をしていたり…、学校のことなんかを、ああでもない、こうでもないと話しながら、賑やかに過ごしていた。
その姿を見る度に、
制服のブレザーがいつもより重く、
ネクタイが息苦しく感じられた。
「里菜も、もう子供じゃない。俺もだ。」
そんな風に何度も自分に言い聞かせて、納得させていた。
俺に向ける里菜の笑顔が天真爛漫なものから、はにかむようなものに変わって行く度に、胸の奥が軋んでいても。
その後に俺を見つけた里菜が、俺と一緒に何かをしたいとねだれば、その軋みはすぐに消えていったんだ。
ふぅっとやるせなさを吐き出しながら、空を仰ぎ見ると、雲の合間に赤黒い影が伸びていた。
ーー崩壊の予兆が、こんな昼間にまで現れるようになったのか…
そうだ。俺達はこれのせいで、ここに喚ばれたんだ。
俺が必死で保っていた均衡が、今まさにこいつのせいで崩れかけている。
八つ当たりにも似た苛立ちが湧いてくる。俺は舌打ちを呑み込んで、また瞼を閉じて、息を吐く。
そして、あの日のことも思い出す。
ーー里菜が家族になった日のことを。
あの日…あの事故のあった日は家族全員で病院に駆けつけた。
どうも、藤宮夫妻には身寄りらしい身寄りがいなかったらしい。
俺達以外は誰もおらず、うちの両親が医師から話を聞いたり、里菜に付き添ったりと走り回っていた。
そんな二人が手続きで不在にしている間、
里菜の側にいるために、
俺と陸人は病室に入った。
ーー里菜は一人病室で寝ていた。
あちこちに包帯を巻かれ、点滴の管がその細い腕に刺され、青白い顔で寝ている里菜。
顔をのぞき込むとその頬には幾筋もの涙の跡があった。
その涙の跡に胸が締め付けられて、
「ただ里菜を抱きしめてやりたい」
という衝動にかられてしまう。。
ぎゅっと拳を握りしめて、気持ちを抑えていると、里菜が目を覚ました。
里菜は俺達を見ると、全身を痛々しく震わせて泣き出して、止まらなくなった。
里菜の背をさすってやることも、優しい声をかけてやることもできず、俺はただ里菜を見ていた。
ーーあの時は情けなかったな…俺はいつも気の利いた言葉一つかけてやれないんだ。
泣きじゃくる里菜の様子が次第におかしくなっていった。徐々に呼吸も浅く喘ぐようなものに変わる。
ほんの少し…ほんの少し…
俺が躊躇っていた間。
陸人が迷いなく里菜の腕を取って先に声をかけた。
里菜に寄り添う陸人を見て、
ーー先を越された……と思った。
「そこは俺の居場所でーー
それは俺の役割だ。」
…そんな風に思ってしまったんだ。
「実の弟」と年の離れた「幼馴染み」に、だ。
ーーあれがただの嫉妬だったなんて、その時の俺には分かる訳がない。何の自覚もなかったんだ。
また一つ溜息をつけば、リィナの魔素が全身を緩やかに巡っているのを感じる。
なんだかやけに喉が渇く、が…まだここから動けそうにもない。
そしてまた、古いくせに色褪せもしない記憶の続きへと、意識は飛んでいく。
ーーそうだ。あれが初めての発作だった。
陸人に揺さぶられ、呼びかけられても反応もせず、発作はひどくなる一方だった。
ーーなのに、俺の声だけに里菜は反応した。
それがどれほど仄暗い喜びを俺にもたらしたのか…そんなものは誰も知らないだろう。
ーー何度も里菜に呼びかけたのは…俺の存在を刻み込みたかったのかもしれないな。
「なんて独占欲と執着なんだ。」
呆れたように呟けば、ゾワリと腹の底で黒い感情がさざ波をたてる。
恋心の自覚もなかったくせに…そんな自分自身に呆れてしまう。
だから、あんなにあっさりと「義兄になる」なんて言ってしまえたんだろう。
あの時は本気でなれると思ったんだ。
それでお前を守れると、
本気で思っていたんだ。
あんな時なのに、
「一人にしない」
そうお前に言った陸人に
ーー弟に負けたような気持ちになった。
だからだ。
だから約束してしまった。
ーー「義兄」になると。
里菜、覚えているか?
陸人はお前を一人にしないと約束したが、
俺はそのずっと前に
『ずっと一緒にいる』
と、お前と指切りをしたんだぞ。
ーー里菜、「家族」なら俺は、お前を喪うことは絶対にないだろう?
俺が恐れているのは、
お前の側にいられなくなることだ。
ーーそれは俺が自分を失うことと等しいんだ…
重苦しい溜息を吐き出して、ゆっくりと立ち上がる。
空を染めた赤く黒い不気味な予兆は、今は雲に隠れて見えなくなっていた。
ーー俺もこのまま全てを明かさずに生きていく。
ーーくそっ…
昂った体を鎮めるのに時間が欲しくて、わざと遠回りの、人気の少ない道を選ぶ。
さっき、結界に不穏な気配が飛び込んできたのを感じて、急いで駆けつければ、リィナに手を貸すクロードの姿があった。
ーー『マタ、ウバワレルノカ?』
あの姿を見た瞬間に体の奥底から、そんな声が聞こえてきて、喉が詰まって足が止まった。
その後は、いつもの…あれだ。
諦観に似た脱力に襲われた。
そして僅かばかり、二人に声をかけるのが遅れてしまった。
ーーそれにしても、魔素をコントロールできなかったのは、失敗だな…。最近はかなり気を付けていたが…
リィナに近づき過ぎないようにと、細心の注意を払っていたが…かえって裏目に出てしまった。
手を握ってしまえば、
『リィナが足りないと…』
本能が求めて蠢くのを止められなかった。
ーー嫉妬を押さえるのは、うまくなっていたはずなんだがな。
木の陰に滑り込むように身を潜め、背を預けて腰を降ろす。
ーーまずは、渦巻く青と紫の魔素を落ち着かせたい。
さっきまで繋いでいたあの手の感触を確かめるよう開いたり閉じたりを繰り返し、地面に落ちた薔薇の花弁をぼんやりと眺めていた。
そんな俺の目の前を青い蝶が湖面の上を滑るかのように、静かに目の前を横切って、森の奥へと消えていく。
初めてリィナの魔素を身の内に感じた時の愉悦を思い出し、身体が、また、温度を上げる。
それをなんとか鎮めようと、目を閉じれば、俺の意識は遠く過去へと、じわじわと誘われた。
ーー里菜は幼馴染だった。
里菜の両親は時々仕事で不在にするらしく、月に一度や二度は俺の家に泊まっていた。
だから、家族のように過ごす時間は長く、俺の記憶の中には、常に里菜がいる。
ーーそうだ。
いつだって、里菜は俺の側にいた。
どんな時も里菜は無邪気な笑顔を浮かべて、──何度も何度も「大好き」と言いながら、足元にじゃれついて付いて、離れなかった。
小さな手が俺の上着の裾を掴んで、一心に自分を見ろと引っ張って、一生懸命拙い言葉で色んな事を伝えてくるんだ。
口下手で自分のことをうまく話せない俺は、里菜と一緒にいるのは気が楽だった。
俺だって、ずっと年下の幼馴染の「大好き」を真に受けてた訳じゃない…
でも、里菜の純粋な好意は、嬉しくて、俺を少し得意げな気持ちにしていたのはーー事実だ。
瞼の裏で木漏れ日が揺れる気配がして、ふっと目を開けて空を見る。
俺の座る影に、陽光が差し込んでいた。
『お前はなんでもできるから』
ーー周りの奴らは良くそう言ってたな。
親父やお袋も、俺には特に厳しかった。
とにかく作法やら、礼儀やらを叩き込まれたもんだ。
俺にとって、できるようになるまで何かを繰り返すことはそれほど苦ではなかった。
正直なところ息苦しさを感じる時もあったが…
ーーそんな時は里菜の笑顔を見ていると楽になれたんだ。
木の葉を間から溢れる光を手で掬えば、ほんのりと温かく…里菜の笑顔を彷彿とさせた。
雲が風に靡いて、
手のひらの光は儚く消えた。
俺はまた、だらりと腕を降ろして、
木の幹に体を預ける。
ーー俺が中学に入って…里菜と陸人も中学年にもなると…変わっていった、けどな。
俺に纏わりついていた里菜は、うちにいる時は、次第に陸人と過ごす時間が増えた。
二人は、頭を突き合わせてタブレットをのぞき込んでいたり、宿題をしていたり…、学校のことなんかを、ああでもない、こうでもないと話しながら、賑やかに過ごしていた。
その姿を見る度に、
制服のブレザーがいつもより重く、
ネクタイが息苦しく感じられた。
「里菜も、もう子供じゃない。俺もだ。」
そんな風に何度も自分に言い聞かせて、納得させていた。
俺に向ける里菜の笑顔が天真爛漫なものから、はにかむようなものに変わって行く度に、胸の奥が軋んでいても。
その後に俺を見つけた里菜が、俺と一緒に何かをしたいとねだれば、その軋みはすぐに消えていったんだ。
ふぅっとやるせなさを吐き出しながら、空を仰ぎ見ると、雲の合間に赤黒い影が伸びていた。
ーー崩壊の予兆が、こんな昼間にまで現れるようになったのか…
そうだ。俺達はこれのせいで、ここに喚ばれたんだ。
俺が必死で保っていた均衡が、今まさにこいつのせいで崩れかけている。
八つ当たりにも似た苛立ちが湧いてくる。俺は舌打ちを呑み込んで、また瞼を閉じて、息を吐く。
そして、あの日のことも思い出す。
ーー里菜が家族になった日のことを。
あの日…あの事故のあった日は家族全員で病院に駆けつけた。
どうも、藤宮夫妻には身寄りらしい身寄りがいなかったらしい。
俺達以外は誰もおらず、うちの両親が医師から話を聞いたり、里菜に付き添ったりと走り回っていた。
そんな二人が手続きで不在にしている間、
里菜の側にいるために、
俺と陸人は病室に入った。
ーー里菜は一人病室で寝ていた。
あちこちに包帯を巻かれ、点滴の管がその細い腕に刺され、青白い顔で寝ている里菜。
顔をのぞき込むとその頬には幾筋もの涙の跡があった。
その涙の跡に胸が締め付けられて、
「ただ里菜を抱きしめてやりたい」
という衝動にかられてしまう。。
ぎゅっと拳を握りしめて、気持ちを抑えていると、里菜が目を覚ました。
里菜は俺達を見ると、全身を痛々しく震わせて泣き出して、止まらなくなった。
里菜の背をさすってやることも、優しい声をかけてやることもできず、俺はただ里菜を見ていた。
ーーあの時は情けなかったな…俺はいつも気の利いた言葉一つかけてやれないんだ。
泣きじゃくる里菜の様子が次第におかしくなっていった。徐々に呼吸も浅く喘ぐようなものに変わる。
ほんの少し…ほんの少し…
俺が躊躇っていた間。
陸人が迷いなく里菜の腕を取って先に声をかけた。
里菜に寄り添う陸人を見て、
ーー先を越された……と思った。
「そこは俺の居場所でーー
それは俺の役割だ。」
…そんな風に思ってしまったんだ。
「実の弟」と年の離れた「幼馴染み」に、だ。
ーーあれがただの嫉妬だったなんて、その時の俺には分かる訳がない。何の自覚もなかったんだ。
また一つ溜息をつけば、リィナの魔素が全身を緩やかに巡っているのを感じる。
なんだかやけに喉が渇く、が…まだここから動けそうにもない。
そしてまた、古いくせに色褪せもしない記憶の続きへと、意識は飛んでいく。
ーーそうだ。あれが初めての発作だった。
陸人に揺さぶられ、呼びかけられても反応もせず、発作はひどくなる一方だった。
ーーなのに、俺の声だけに里菜は反応した。
それがどれほど仄暗い喜びを俺にもたらしたのか…そんなものは誰も知らないだろう。
ーー何度も里菜に呼びかけたのは…俺の存在を刻み込みたかったのかもしれないな。
「なんて独占欲と執着なんだ。」
呆れたように呟けば、ゾワリと腹の底で黒い感情がさざ波をたてる。
恋心の自覚もなかったくせに…そんな自分自身に呆れてしまう。
だから、あんなにあっさりと「義兄になる」なんて言ってしまえたんだろう。
あの時は本気でなれると思ったんだ。
それでお前を守れると、
本気で思っていたんだ。
あんな時なのに、
「一人にしない」
そうお前に言った陸人に
ーー弟に負けたような気持ちになった。
だからだ。
だから約束してしまった。
ーー「義兄」になると。
里菜、覚えているか?
陸人はお前を一人にしないと約束したが、
俺はそのずっと前に
『ずっと一緒にいる』
と、お前と指切りをしたんだぞ。
ーー里菜、「家族」なら俺は、お前を喪うことは絶対にないだろう?
俺が恐れているのは、
お前の側にいられなくなることだ。
ーーそれは俺が自分を失うことと等しいんだ…
重苦しい溜息を吐き出して、ゆっくりと立ち上がる。
空を染めた赤く黒い不気味な予兆は、今は雲に隠れて見えなくなっていた。
ーー俺もこのまま全てを明かさずに生きていく。
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