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第7章 禁足の地と解放
第7章 第4話 巫女
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「お母さん?」
「そうよ。里菜。」
微笑みながら目の前に立つ母は記憶の中の姿とはちょっと違っていて、私と同じ銀糸に紫の瞳だった。
服もこちらの世界の物を着ている。
白地に世界樹の葉の意匠を施された『巫女服』
それは、私と同じだ。
ーーやっぱり、お母さんも巫女だったんだ…
声や表情は私の遠い記憶の中にある姿のままで、優しい笑みは大好きな母と同じだ。
嬉しさと懐かしさ…そして、安堵に体の力が一瞬抜けそうになる。
母に手を伸ばそうとした瞬間に青白い光の玉が指先を掠めていった。
ーーこれは本当にお母さん?魔獣の見せた幻覚じゃないの?
びくりと腕に警戒が走って、緊張を宿したままに、その手が止まる。
そんな私の様子を見ながら、母はふっと笑った。
母がいつも身につけていた両耳のピアスが、闇の中でキラリと光った。
「大人になったわねえ。偉いわ、里菜。それでいいの、ここで会う者をすぐに信用してはダメよ。でも…会いたかったのよ、本当に」
顔をクシャクシャにして、涙を零しながら、私に手を伸ばしてきた。
でも、その手は私の体を抱きしめることもなくすうっと通り抜けていく。
「今、私は実態がないのよ。」
母は自分の両手を眺めながら悲しそうに目を伏せて言った。
そして、もう一度しっかりと私を見つめる。
「巫女の祈りを海生君に捧げなさい。彼の意識の内に入って、幻の世界から彼を現実に戻してあげるのよ。」
やっぱりこの人は本物の母なのだと直感する。
私の奥底で自分のものではない紫と水色の光が、流れ出すのを感じた。
これはきっと母の魔素だ…ちゃんと、反応している。時々感じていた違和感の答えが、ここにあった。
カイゼルの魔素が巡る時とはまた違う、温かな血潮が全身を満たしていくのを感じる。
「できるかな…私に。私…一度儀式失敗してるの…」
カイゼルを抱きしめる手にぎゅっと力が入る。その反対に私のこぼした弱々しい声は闇にかき消されそうだ。
「大丈夫よ、里菜。あなたならできるわ。私も手伝うわ。彼をそこに寝かせてあげて、さあ立ち上がりなさい。」
お母さんの声に導かれるように、カイゼルをそっと横たえて立ち上がる。右手にしっかりと神楽鈴を握り締めて、軽くしゃんと鳴らす。
お母さんは、私と同じ紫の瞳を細めて、懐かしそうに神楽鈴を眺めて笑った。
「色々と話はあるけどまた後でしようね、里菜。海生君はずっとあなたを守ってきてくれたんでしょう?」
優しく優しく微笑んで、でもどこか哀しそうに私を見つめる。
私は溢れ落ちる涙を止められず、ただ「うん」とだけ頷いた。
母の表情がすっと引き締まり、身体から光が溢れ始めた。空気が一変して、周囲を囲む青白い光がさっと遠巻きに逃げていく。
母の手には私と同じ鈴が握られていた。
「この場の魔素は私が整えます。さあ、世界樹の巫女よ、愛する者のために舞い、祈りなさい。」
しゃん!の力強く鈴が響き、その音に背を押されるように、私は地面に足を滑らせ、両手を伸ばしてゆっくりと舞い始めた。
母の鈴が鳴る度に、濁った空気は清められ、光の粒が私の周囲を回り始める。
そして、ただ静かにカイゼルを想う。
あまり変わらない表情や
私の気持ちを推し量ろうとする仕草、
甘く囁くその声を、
守ろうとしてくれたその背中を、
二人で紡いできた時間や思い出を全て。
私の内に流れる温かな青い魔素が、深淵へと堕ちていったカイゼルの意識の中へと連れて行ってくれる。
カイゼル、愛してるよ。
そして、二人で一緒に帰ってこよう。
「そうよ。里菜。」
微笑みながら目の前に立つ母は記憶の中の姿とはちょっと違っていて、私と同じ銀糸に紫の瞳だった。
服もこちらの世界の物を着ている。
白地に世界樹の葉の意匠を施された『巫女服』
それは、私と同じだ。
ーーやっぱり、お母さんも巫女だったんだ…
声や表情は私の遠い記憶の中にある姿のままで、優しい笑みは大好きな母と同じだ。
嬉しさと懐かしさ…そして、安堵に体の力が一瞬抜けそうになる。
母に手を伸ばそうとした瞬間に青白い光の玉が指先を掠めていった。
ーーこれは本当にお母さん?魔獣の見せた幻覚じゃないの?
びくりと腕に警戒が走って、緊張を宿したままに、その手が止まる。
そんな私の様子を見ながら、母はふっと笑った。
母がいつも身につけていた両耳のピアスが、闇の中でキラリと光った。
「大人になったわねえ。偉いわ、里菜。それでいいの、ここで会う者をすぐに信用してはダメよ。でも…会いたかったのよ、本当に」
顔をクシャクシャにして、涙を零しながら、私に手を伸ばしてきた。
でも、その手は私の体を抱きしめることもなくすうっと通り抜けていく。
「今、私は実態がないのよ。」
母は自分の両手を眺めながら悲しそうに目を伏せて言った。
そして、もう一度しっかりと私を見つめる。
「巫女の祈りを海生君に捧げなさい。彼の意識の内に入って、幻の世界から彼を現実に戻してあげるのよ。」
やっぱりこの人は本物の母なのだと直感する。
私の奥底で自分のものではない紫と水色の光が、流れ出すのを感じた。
これはきっと母の魔素だ…ちゃんと、反応している。時々感じていた違和感の答えが、ここにあった。
カイゼルの魔素が巡る時とはまた違う、温かな血潮が全身を満たしていくのを感じる。
「できるかな…私に。私…一度儀式失敗してるの…」
カイゼルを抱きしめる手にぎゅっと力が入る。その反対に私のこぼした弱々しい声は闇にかき消されそうだ。
「大丈夫よ、里菜。あなたならできるわ。私も手伝うわ。彼をそこに寝かせてあげて、さあ立ち上がりなさい。」
お母さんの声に導かれるように、カイゼルをそっと横たえて立ち上がる。右手にしっかりと神楽鈴を握り締めて、軽くしゃんと鳴らす。
お母さんは、私と同じ紫の瞳を細めて、懐かしそうに神楽鈴を眺めて笑った。
「色々と話はあるけどまた後でしようね、里菜。海生君はずっとあなたを守ってきてくれたんでしょう?」
優しく優しく微笑んで、でもどこか哀しそうに私を見つめる。
私は溢れ落ちる涙を止められず、ただ「うん」とだけ頷いた。
母の表情がすっと引き締まり、身体から光が溢れ始めた。空気が一変して、周囲を囲む青白い光がさっと遠巻きに逃げていく。
母の手には私と同じ鈴が握られていた。
「この場の魔素は私が整えます。さあ、世界樹の巫女よ、愛する者のために舞い、祈りなさい。」
しゃん!の力強く鈴が響き、その音に背を押されるように、私は地面に足を滑らせ、両手を伸ばしてゆっくりと舞い始めた。
母の鈴が鳴る度に、濁った空気は清められ、光の粒が私の周囲を回り始める。
そして、ただ静かにカイゼルを想う。
あまり変わらない表情や
私の気持ちを推し量ろうとする仕草、
甘く囁くその声を、
守ろうとしてくれたその背中を、
二人で紡いできた時間や思い出を全て。
私の内に流れる温かな青い魔素が、深淵へと堕ちていったカイゼルの意識の中へと連れて行ってくれる。
カイゼル、愛してるよ。
そして、二人で一緒に帰ってこよう。
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