COLD LIGHT ~七美と愉快なカプセル探偵たち~

つも谷たく樹

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第三章 呪いのルール

 ‐2‐

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「あの男のひと……。まだ立ってる……」

 洋食屋の窓から、華奢な少年店員が外を見つめている。
 顔色もすぐれず、ずっと電柱にもたれているので、気が気でならなかった。

「どうしたの?」

 ときおり外を眺めている彼を見て、厨房から女性がやって来る。
 七美たちが訪れると、かならず挨拶に訪れる、妙齢のシェフだった。

「昨晩お越しになられたお客さまですが、昼過ぎから立っているんです。誰かを待っているのかな……」

 釣られてシェフも窓へと目をやるが、特に興味なさげ。
 次いで周囲を見回し、ほかの店員がいないのを確認すると、祈るように両手を合わせた。

「それで、例の件はどうなったの。うまくやってくれている?」
「は、はい。すみません。なかなかタイミングが合わなくて……」
「お願いね。君だけが頼りなの」
「はい――」

 色白で美しい少年は、申しわけなさそうに返事をして、ほかの店員たちと開店の準備を始める。
 カトラリーをテーブルに並べつつ、もう一度、窓の外へと目をやった。

「一緒に来たおばあちゃん、気味の悪いことを言っていたな……。たしか『ナイフは時間をかけ、ゆっくりゆっくり刺さるんだ。きっと奴は痛みで、もがき苦しんで死ぬだろうよ』って――」

 外は、厚い雲が急ぐように流れていく。
 電柱に立つ男は、相変わらず憂鬱ゆううつな表情を浮かべたままだった。
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