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第四章 雨に唄えば
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一方、七美は外を眺めていた。
「雨か……ずぶ濡れになりたいな……」
いつも彼女は、タフネスタイプのスマートフォンを愛用している。
なぜなら雨が降るとベランダに出ていき、ステップを踏んでいるから。
かなしいこと、つらかったことをすべて流し、疲れ果てるまで踊るのが好きだった。
「それにしても、『あのひとから手を引け』って、どういうこと?」
夕方から寝ていたせいで、目が冴えてしまっている。
彼女は御神木で見た、白装束の女性を思い返しては、首を捻っていた。
「思いあたる節は……ないわねぇ」
脳内で作り上げた幻覚である以上、きっとなにかが潜在意識下にある。
しかしどれだけ記憶の糸を手繰ってみても、あのセリフの意味がわからなかった。
「だいいち『あのひと』って誰よ」
もしも自身に付き合っているひとがいるなら理解はできる。
何者かに恨まれているのを、無意識のうちに察知し、それがエモーショナルとなって現れたのだと。
「……あれ? よく考えたら、あんまりモテた記憶もないわね」
地元では、『令嬢』と呼ばれる身分であり、近寄りがたいと言われていた。
単なる思い違いの可能性もあり、これ以上は深く考えないよう、大好きなロックバンドの曲をスマートフォンから静かに流した。
ふと気がつけば、外は『しとしと』から、『ぽつりぽつり』に変わっている。
音だけではなく、雨の匂いまで好きだったので、「残念」と口を尖らせた。
「よーし、いっちょワインでも買ってくるかー」
病院で借りた寝巻の上から、鮮やかなパステルオレンジのパーカーを羽織る。
近くのコンビニエンスストアに出かけようと、スニーカーに足を通した途端、急に靴ひもを結ぶのが煩わしくなり、けっきょくはベッドに寝転んだ。
「まぁ、いいや、明日にしよっと」
「雨か……ずぶ濡れになりたいな……」
いつも彼女は、タフネスタイプのスマートフォンを愛用している。
なぜなら雨が降るとベランダに出ていき、ステップを踏んでいるから。
かなしいこと、つらかったことをすべて流し、疲れ果てるまで踊るのが好きだった。
「それにしても、『あのひとから手を引け』って、どういうこと?」
夕方から寝ていたせいで、目が冴えてしまっている。
彼女は御神木で見た、白装束の女性を思い返しては、首を捻っていた。
「思いあたる節は……ないわねぇ」
脳内で作り上げた幻覚である以上、きっとなにかが潜在意識下にある。
しかしどれだけ記憶の糸を手繰ってみても、あのセリフの意味がわからなかった。
「だいいち『あのひと』って誰よ」
もしも自身に付き合っているひとがいるなら理解はできる。
何者かに恨まれているのを、無意識のうちに察知し、それがエモーショナルとなって現れたのだと。
「……あれ? よく考えたら、あんまりモテた記憶もないわね」
地元では、『令嬢』と呼ばれる身分であり、近寄りがたいと言われていた。
単なる思い違いの可能性もあり、これ以上は深く考えないよう、大好きなロックバンドの曲をスマートフォンから静かに流した。
ふと気がつけば、外は『しとしと』から、『ぽつりぽつり』に変わっている。
音だけではなく、雨の匂いまで好きだったので、「残念」と口を尖らせた。
「よーし、いっちょワインでも買ってくるかー」
病院で借りた寝巻の上から、鮮やかなパステルオレンジのパーカーを羽織る。
近くのコンビニエンスストアに出かけようと、スニーカーに足を通した途端、急に靴ひもを結ぶのが煩わしくなり、けっきょくはベッドに寝転んだ。
「まぁ、いいや、明日にしよっと」
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