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第六章 十三人目
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平良は仏壇に向かい、念仏を唱えている。
寝食すら忘れ、一心不乱に。
我に返り、時計を見ると、正午を差している。
昨晩は吉野木と別れたあと、ひたすら夫の写真の前で正座をしていた。
「どうか、どうか、彼が上手くやってくれますように――」
皮膚が切れるくらい懸命に摩り、幾度となく頭を垂れる。
ベランダに一羽のカラスがとまり、不吉な声で鳴いた。
「……少しだけ休ませてもらうとするかねぇ」
窓に目をやると、空は厚い雲に覆われている。
この天候が吉となるか凶と出るかわからずにいると、食卓に置いていた携帯電話がけたたましい音とともに振動を始める。
ディスプレイには『公衆電話』とあり、コインの落ちる音とともに低い声が受話器からもれてきた。
『首尾は、どうだっぺ?』
方言が強いものの、まだ若い男性なのがわかる。
囁くように小さく、それでいてドスの効いた重い声でもあった。
「予定通り、今晩、決行いたします。あの……」
『どうしたど?』
「約束のほう、よろしくお願いいたします」
『んだんだ。あれはおだがい裏切らねぇための保険だべ』
「……わかりました」
『まがせだ。あとは頼んだべな』
それだけを伝え終えると、通話が切れる。
わずか十五秒の会話だった。
寝食すら忘れ、一心不乱に。
我に返り、時計を見ると、正午を差している。
昨晩は吉野木と別れたあと、ひたすら夫の写真の前で正座をしていた。
「どうか、どうか、彼が上手くやってくれますように――」
皮膚が切れるくらい懸命に摩り、幾度となく頭を垂れる。
ベランダに一羽のカラスがとまり、不吉な声で鳴いた。
「……少しだけ休ませてもらうとするかねぇ」
窓に目をやると、空は厚い雲に覆われている。
この天候が吉となるか凶と出るかわからずにいると、食卓に置いていた携帯電話がけたたましい音とともに振動を始める。
ディスプレイには『公衆電話』とあり、コインの落ちる音とともに低い声が受話器からもれてきた。
『首尾は、どうだっぺ?』
方言が強いものの、まだ若い男性なのがわかる。
囁くように小さく、それでいてドスの効いた重い声でもあった。
「予定通り、今晩、決行いたします。あの……」
『どうしたど?』
「約束のほう、よろしくお願いいたします」
『んだんだ。あれはおだがい裏切らねぇための保険だべ』
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『まがせだ。あとは頼んだべな』
それだけを伝え終えると、通話が切れる。
わずか十五秒の会話だった。
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