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第七章 人を呪わば穴二つ
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「隊長。少々よろしいでしょうか」
神妙な面持ちをして、三倉が病室へと入ってきた。
てっきり水溜の部屋にいると高を括っていた七美は、慌ててワインボトルを足元に隠した。
「…………………………どうした」
笑顔は強ばり、額には粘土質の汗を浮かべている。
いつもの三倉なら、この微妙な返事の間隔から、異常を感じ取ったであろうが、今はそれどころではない様子だった。
「井関幹恵の殺害を交換したのは、ご主人である可能性はありませんか」
「なんで?」
「先ほどロビーでご主人とお会いしたのですが、なにか違和感がありまして……」
「たしかに交換となると、ご老人でも殺せる相手でなければならない。しかしご主人が奥さんを殺す動機はあるのか?」
「保険金という線はございませんか」
「うーん、金銭が目当てではないと思うの――」
もしも掛けられているのが多額であったなら、真っ先に警察は受け取り手である夫を調べるであろう。
だがそれについて、高橋はなにも報告してこなかったので、ごく一般的な額であると判断していた。
「それでは女性関係なんて如何でしょう」
「まだ見えていないだけで、じゅうぶんあるわね」
犯人は吉野木で確定しているが、不自然な点だらけ。
井関夫妻に関しては、警察も徹底的に調査しているはずだが、ときとして見落としている場合もある。
いまだ出揃っていない情報を収集するのは、たしかに大切でもあり、七美はそっと腕を組んだ。
「では隊長。まず麦仲が殺害された時間帯、井関のご主人はどこにいたか調べるのはどうでございましょう」
もしも井関翔一朗にアリバイがなければ、麦仲殺しの容疑者ともなり得る。
早く三倉に出ていってもらいたいのも手伝い、七美はその提案に乗った。
「よしっ、任せる。じいさん……じゃなかった高橋さんにも、その線で調べてもらうよう連絡しておくから行ってきて。朗報を期待しているわ」
「かしこまりました」
三倉は三歩下がると、丁寧に礼をする。
引き戸が閉められ、完全にいなくなったのを見届けると、やおら足元へと手を伸ばし、隠していたワインボトルを出してきた。
「あぶなかったー」
「ふたたび申しわけありません。大木場さんと一緒でかまいませんか」
またも扉が開き、三倉と目が合う。没収された。
神妙な面持ちをして、三倉が病室へと入ってきた。
てっきり水溜の部屋にいると高を括っていた七美は、慌ててワインボトルを足元に隠した。
「…………………………どうした」
笑顔は強ばり、額には粘土質の汗を浮かべている。
いつもの三倉なら、この微妙な返事の間隔から、異常を感じ取ったであろうが、今はそれどころではない様子だった。
「井関幹恵の殺害を交換したのは、ご主人である可能性はありませんか」
「なんで?」
「先ほどロビーでご主人とお会いしたのですが、なにか違和感がありまして……」
「たしかに交換となると、ご老人でも殺せる相手でなければならない。しかしご主人が奥さんを殺す動機はあるのか?」
「保険金という線はございませんか」
「うーん、金銭が目当てではないと思うの――」
もしも掛けられているのが多額であったなら、真っ先に警察は受け取り手である夫を調べるであろう。
だがそれについて、高橋はなにも報告してこなかったので、ごく一般的な額であると判断していた。
「それでは女性関係なんて如何でしょう」
「まだ見えていないだけで、じゅうぶんあるわね」
犯人は吉野木で確定しているが、不自然な点だらけ。
井関夫妻に関しては、警察も徹底的に調査しているはずだが、ときとして見落としている場合もある。
いまだ出揃っていない情報を収集するのは、たしかに大切でもあり、七美はそっと腕を組んだ。
「では隊長。まず麦仲が殺害された時間帯、井関のご主人はどこにいたか調べるのはどうでございましょう」
もしも井関翔一朗にアリバイがなければ、麦仲殺しの容疑者ともなり得る。
早く三倉に出ていってもらいたいのも手伝い、七美はその提案に乗った。
「よしっ、任せる。じいさん……じゃなかった高橋さんにも、その線で調べてもらうよう連絡しておくから行ってきて。朗報を期待しているわ」
「かしこまりました」
三倉は三歩下がると、丁寧に礼をする。
引き戸が閉められ、完全にいなくなったのを見届けると、やおら足元へと手を伸ばし、隠していたワインボトルを出してきた。
「あぶなかったー」
「ふたたび申しわけありません。大木場さんと一緒でかまいませんか」
またも扉が開き、三倉と目が合う。没収された。
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