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第八章 COLD LIGHT
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時刻は深夜零時。
目的地に着いた老婆は、廃神社の近くに車を止める。
背を丸め、気味悪そうに懐中電灯で足元を照らすと、誰に言うでもなくつぶやいた。
「えーと、鳥居を過ぎてすぐ右……。あった、ここか」
砂地のせいもあり、老婆はおぼつかない足取りで、真っ暗闇のなかを進んでいく。
鳥居を抜け境内へ歩いていくと、藁で編んだ人形が木にぶら下がっていた。
「これだね……」
周囲に目をやり手を伸ばす。
だが次の瞬間、突如として老婆の体が前のめりとなる。
足元が抜け、地面に吸い込まれようとしたが、咄嗟に自生していた野バラの茎を掴んだ。
「あーれー、助けておくれー」
大声で助けを呼ぶも、今は深夜であり、しかも廃墟となった海沿いの神社。
何人たりとも通る気配はなく、老婆の悲鳴だけがこだましていた。
「助けておくれー。こんなの聞いてないよぉー」
なおも声をあげつづけている老婆。
すると松の陰からひとりの若い女性が現れた。なぜかスコップを持って。
「おばあちゃん。ごめん」
悲壮な表情を浮かべ、野バラを掴む老婆の手を蹴る。
女性は、もう一度謝ったあと、手にしたスコップで周囲の土を掛けていった。
『あーれー、どうなってんのー』
なにが起きたか理解できない模様で、老婆はひたすら声をあげている。
その頭上に立つ女は、塩を含んだ腐葉土を、一かぶせ、二かぶせしたところに、草むらを搔き分けてくる人影がいた。
上から下まで、ずぶ濡れとなった我らがヒロイン。七美七美であった。
「待ったあぁぁー」
「誰、あんた」
「ぜいぜい、さ、坂、坂之、坂之上アーケード、はぁはぁ――。坂之上アーケード警備隊隊長、七美七美さまよっ!」
後半になって息が整い、きちんと伝えられる。
印籠をかざす勢いで名を告げたものの、相手はキョトンフェイスのまま小首を傾げた。
「えーと。井関さんからの助っ人?」
「んー。むしろ敵。あと、そのひと平良さんじゃないから」
「えっ?」
謎の女性は落とし穴へと懐中電灯を当てる。
顔を寄せ、しばらく凝視したあと、かすかな悲鳴をあげた。
「さっき信号待ちしていたときにわかったの。あなたたちの計画は失敗よ」
『あたしゃ、ノブちゃんの友だちの久保田ですぅ』
「どういうこと、なんであんたが来たのよ」
『ノブちゃんは仏教徒だから神社に行けないらしくて、わだすが来たんですぅー』
スコップを抱き、膝から崩れ落ちる謎の女性。
またしても平良は、老人会の友達である久保田かな子を代理に立ててしまっていた。
「ジ・エンドね。もうすぐ仲間たちも到着するから観念なさい」
「……はい」
七美は勝ち誇った顔で女からスコップを取り上げる。
次いで愛用のタフネススマートフォンを内ポケットから出してくると『じ』と、登録された先に連絡を入れた。
「もしもーし、井関と共謀していた犯人を捕らえました。今から言う場所に来てくださーい」
『誰じゃ。その犯人というのは』
「もうひとり店を取られて、恨んでいる人物を忘れていましたよね」
『もうひとり?』
「麦仲あゆみ。麦仲の息子の奥さんです――」
目的地に着いた老婆は、廃神社の近くに車を止める。
背を丸め、気味悪そうに懐中電灯で足元を照らすと、誰に言うでもなくつぶやいた。
「えーと、鳥居を過ぎてすぐ右……。あった、ここか」
砂地のせいもあり、老婆はおぼつかない足取りで、真っ暗闇のなかを進んでいく。
鳥居を抜け境内へ歩いていくと、藁で編んだ人形が木にぶら下がっていた。
「これだね……」
周囲に目をやり手を伸ばす。
だが次の瞬間、突如として老婆の体が前のめりとなる。
足元が抜け、地面に吸い込まれようとしたが、咄嗟に自生していた野バラの茎を掴んだ。
「あーれー、助けておくれー」
大声で助けを呼ぶも、今は深夜であり、しかも廃墟となった海沿いの神社。
何人たりとも通る気配はなく、老婆の悲鳴だけがこだましていた。
「助けておくれー。こんなの聞いてないよぉー」
なおも声をあげつづけている老婆。
すると松の陰からひとりの若い女性が現れた。なぜかスコップを持って。
「おばあちゃん。ごめん」
悲壮な表情を浮かべ、野バラを掴む老婆の手を蹴る。
女性は、もう一度謝ったあと、手にしたスコップで周囲の土を掛けていった。
『あーれー、どうなってんのー』
なにが起きたか理解できない模様で、老婆はひたすら声をあげている。
その頭上に立つ女は、塩を含んだ腐葉土を、一かぶせ、二かぶせしたところに、草むらを搔き分けてくる人影がいた。
上から下まで、ずぶ濡れとなった我らがヒロイン。七美七美であった。
「待ったあぁぁー」
「誰、あんた」
「ぜいぜい、さ、坂、坂之、坂之上アーケード、はぁはぁ――。坂之上アーケード警備隊隊長、七美七美さまよっ!」
後半になって息が整い、きちんと伝えられる。
印籠をかざす勢いで名を告げたものの、相手はキョトンフェイスのまま小首を傾げた。
「えーと。井関さんからの助っ人?」
「んー。むしろ敵。あと、そのひと平良さんじゃないから」
「えっ?」
謎の女性は落とし穴へと懐中電灯を当てる。
顔を寄せ、しばらく凝視したあと、かすかな悲鳴をあげた。
「さっき信号待ちしていたときにわかったの。あなたたちの計画は失敗よ」
『あたしゃ、ノブちゃんの友だちの久保田ですぅ』
「どういうこと、なんであんたが来たのよ」
『ノブちゃんは仏教徒だから神社に行けないらしくて、わだすが来たんですぅー』
スコップを抱き、膝から崩れ落ちる謎の女性。
またしても平良は、老人会の友達である久保田かな子を代理に立ててしまっていた。
「ジ・エンドね。もうすぐ仲間たちも到着するから観念なさい」
「……はい」
七美は勝ち誇った顔で女からスコップを取り上げる。
次いで愛用のタフネススマートフォンを内ポケットから出してくると『じ』と、登録された先に連絡を入れた。
「もしもーし、井関と共謀していた犯人を捕らえました。今から言う場所に来てくださーい」
『誰じゃ。その犯人というのは』
「もうひとり店を取られて、恨んでいる人物を忘れていましたよね」
『もうひとり?』
「麦仲あゆみ。麦仲の息子の奥さんです――」
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