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お義兄様ルート
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森での生活に慣れ、日々楽しく過ごしていると、お兄様が一枚の手紙を持って現れた。
「連絡もなしに急に来て悪かったね」
「いえ、驚きましたが、大丈夫です。どうかされましたか?」
お兄様が、連絡もなしに会いに来るなんて、一体何があったのかしら……
それに、手に持っている手紙が誰からのものなのか……
「話が長くなりそうだから、お茶でも飲みながら話そう。レン、準備を頼めるかな?」
「はい。すぐに用意して参ります」
お茶の準備が整ったのを確認し、レンを下がらせてから、お兄様は口を開いた。
「メル、この手紙が今朝、父上に届いたんだよ」
そう言って、手紙をテーブルの上に置く。
お父様宛ての手紙を何故お兄様が持っているの……?
「それは……私に関係することですね?」
「そうだね……。王妃殿下からの手紙だよ」
「王妃殿下・・・ですか?」
王妃殿下が私に関することで手紙を……?
考えても、どんな理由があるのか分からない。
「簡単に言えば……メルがいつまでも婚約者を決めないから、第二王子殿下が、婚約者を決めずにいるんだよ。だから、早くメルに婚約者を作るようにということだよ」
「え? アルフォンス様が婚約者を決めないのは私のせいだとお考えなのですか?」
「これは、私からいう事ではないんだが……王妃殿下からこのような手紙を貰ってしまっては、話さないわけにはいかない。第二王子殿下は、メルと婚約したいと考えているんだよ」
え? どういう事かしら……?
アルフォンス様からそんな話は聞いた事がないし、あの夜、アンナ嬢と一緒に居たのに……
「あの……それは勘違いという事はありませんか?」
「勘違いじゃないよ。殿下から直接話を聞いているからね。ただ、メルが1年後に戻ってくるから、その時に話をして貰うつもりだったんだ。だが、そうも言っていられない状況になってね。メルは、どうしたい? 殿下と婚約してもいいと思っているのならば、その方向で話を進めることも出来るが……」
アルフォンス様と婚約……?
王族の婚約者が、私のように婚約解消したことのある令嬢ではいけない。
「流石に、私はアルフォンス様に相応しくありません。婚約を解消した身ですし……」
「殿下に対して、友情以外の感情はないのかな?」
「……親しくさせて頂いてましたが、特別な感情はありません。アルフォンス様とは良い友人でありたいと思っています」
「分かった。それなら……メルには、殿下以外の人と婚約して貰う事になるんだが……。メルには、幸せな結婚をして欲しいと思っているんだよ。こんな状況にならなければ、言うつもりはなかったんだが……」
そこでお兄様は言葉を止めると、立ち上がり、私の隣に腰を掛け、真っ直ぐに見つめる。
「メル、良く聞いて欲しい。メルの婚約者として私を考えて欲しい」
「……え、あの? 今なんて……?」
お兄様が私の婚約者? それは何の冗談なのかしら。
兄妹で、婚約なんて出来ないのに……
偽造婚約にもならないわ。
不思議に思っていると、お兄様は、そっと優しく私の両手を握った。
「メル……私たちは、兄妹じゃなくて、従兄妹なんだよ。メルは、父上の亡き妹の娘なんだ」
あまりの事実に、思考が止まる。
私は、あの家の子ではなかったの?
小さい頃に亡くなったお母様は、お兄様のお母様で、私のお母様はもっと前に亡くなっているということなの?
「メルの母親は、メルに良く似た美しい人でね。騎士と恋に落ちて、家を出たんだよ。2人はメルがお腹に宿り、それは喜んでいたと聞いたよ。だけどね……騎士が馬車の事故に巻き込まれて帰らぬ人となったんだ。その時、メルの母親は、臨月でね……。最愛の人を亡くしたショックで、みるみる弱って行ったんだ……」
そういうと、お兄様は、言葉を区切り、握られた手に力が入る。
「とても出産に耐えられる体ではなかったんだ……。それでも、生まれたメルを見て、とても幸せそうに微笑んでいたよ。メルティアナという名前は、メルの父親である騎士が考えた名前なんだよ」
お母様……お父様……
そんな事があったなんて、私は何も知らずに……
「そ……うだったのですね。あの、少し混乱していて……」
「急な話だったからね。でも、メルには、もう話しておかなければいけないと父上と話をしてね……。急に、婚約者を決めなければいけないと話した後に、こんな話をしたんだ。混乱してもしょうがない。それでも……メルの気持ちを待ってあげられない状況で悪いと思っている。メルが嫌でなければ、私と婚約して欲しい」
王妃殿下から手紙がお父様に届くくらいだもの、私の気持ちがどうこう言っている場合ではないのは、分かる。
分かるけど……どうしても気持ちが追いつかない。
色々な感情が入り混じり、涙が零れ落ちる。
そんな私に、お兄様はそっとハンカチで涙を拭う。
「メル。こんな状況でもっと混乱させるような事をいう事になるけど、私の気持ちを聞いて欲しい」
これ以上に、混乱するような話?
お兄様の気持ち……?
「私は、今まで妹としてメルの事を大事にしてきた。でも、それだけはなく、メルのことを1人の女性としても愛しているんだ。今までは、メルが幸せになれるなら、相手は私ではなくても良いと思っていたし、従兄妹であることを打ち明けるつもりもなかったんだ。私と婚約したからと言って、メルに私を愛するように無理強いするつもりもない。ただ、私はメルと婚約出来る事は嬉しいことなんだと知っておいて欲しい」
まさか……お兄様が私のことを愛してくれていたなんて……
私は本当の兄妹だと思っていたのだから、お兄様に兄妹以上の感情を抱いたことはなかった……
それでも……もう私に選択肢はない。
お兄様が、私を愛してくれていると言ってくれているのであれば、今はそれに甘える事にする。
もう今は、これ以上、何も考えられない。
「お兄様……宜しくお願い致します」
そういうと、お兄様は、私の指先に軽く口付けを落とした。
「連絡もなしに急に来て悪かったね」
「いえ、驚きましたが、大丈夫です。どうかされましたか?」
お兄様が、連絡もなしに会いに来るなんて、一体何があったのかしら……
それに、手に持っている手紙が誰からのものなのか……
「話が長くなりそうだから、お茶でも飲みながら話そう。レン、準備を頼めるかな?」
「はい。すぐに用意して参ります」
お茶の準備が整ったのを確認し、レンを下がらせてから、お兄様は口を開いた。
「メル、この手紙が今朝、父上に届いたんだよ」
そう言って、手紙をテーブルの上に置く。
お父様宛ての手紙を何故お兄様が持っているの……?
「それは……私に関係することですね?」
「そうだね……。王妃殿下からの手紙だよ」
「王妃殿下・・・ですか?」
王妃殿下が私に関することで手紙を……?
考えても、どんな理由があるのか分からない。
「簡単に言えば……メルがいつまでも婚約者を決めないから、第二王子殿下が、婚約者を決めずにいるんだよ。だから、早くメルに婚約者を作るようにということだよ」
「え? アルフォンス様が婚約者を決めないのは私のせいだとお考えなのですか?」
「これは、私からいう事ではないんだが……王妃殿下からこのような手紙を貰ってしまっては、話さないわけにはいかない。第二王子殿下は、メルと婚約したいと考えているんだよ」
え? どういう事かしら……?
アルフォンス様からそんな話は聞いた事がないし、あの夜、アンナ嬢と一緒に居たのに……
「あの……それは勘違いという事はありませんか?」
「勘違いじゃないよ。殿下から直接話を聞いているからね。ただ、メルが1年後に戻ってくるから、その時に話をして貰うつもりだったんだ。だが、そうも言っていられない状況になってね。メルは、どうしたい? 殿下と婚約してもいいと思っているのならば、その方向で話を進めることも出来るが……」
アルフォンス様と婚約……?
王族の婚約者が、私のように婚約解消したことのある令嬢ではいけない。
「流石に、私はアルフォンス様に相応しくありません。婚約を解消した身ですし……」
「殿下に対して、友情以外の感情はないのかな?」
「……親しくさせて頂いてましたが、特別な感情はありません。アルフォンス様とは良い友人でありたいと思っています」
「分かった。それなら……メルには、殿下以外の人と婚約して貰う事になるんだが……。メルには、幸せな結婚をして欲しいと思っているんだよ。こんな状況にならなければ、言うつもりはなかったんだが……」
そこでお兄様は言葉を止めると、立ち上がり、私の隣に腰を掛け、真っ直ぐに見つめる。
「メル、良く聞いて欲しい。メルの婚約者として私を考えて欲しい」
「……え、あの? 今なんて……?」
お兄様が私の婚約者? それは何の冗談なのかしら。
兄妹で、婚約なんて出来ないのに……
偽造婚約にもならないわ。
不思議に思っていると、お兄様は、そっと優しく私の両手を握った。
「メル……私たちは、兄妹じゃなくて、従兄妹なんだよ。メルは、父上の亡き妹の娘なんだ」
あまりの事実に、思考が止まる。
私は、あの家の子ではなかったの?
小さい頃に亡くなったお母様は、お兄様のお母様で、私のお母様はもっと前に亡くなっているということなの?
「メルの母親は、メルに良く似た美しい人でね。騎士と恋に落ちて、家を出たんだよ。2人はメルがお腹に宿り、それは喜んでいたと聞いたよ。だけどね……騎士が馬車の事故に巻き込まれて帰らぬ人となったんだ。その時、メルの母親は、臨月でね……。最愛の人を亡くしたショックで、みるみる弱って行ったんだ……」
そういうと、お兄様は、言葉を区切り、握られた手に力が入る。
「とても出産に耐えられる体ではなかったんだ……。それでも、生まれたメルを見て、とても幸せそうに微笑んでいたよ。メルティアナという名前は、メルの父親である騎士が考えた名前なんだよ」
お母様……お父様……
そんな事があったなんて、私は何も知らずに……
「そ……うだったのですね。あの、少し混乱していて……」
「急な話だったからね。でも、メルには、もう話しておかなければいけないと父上と話をしてね……。急に、婚約者を決めなければいけないと話した後に、こんな話をしたんだ。混乱してもしょうがない。それでも……メルの気持ちを待ってあげられない状況で悪いと思っている。メルが嫌でなければ、私と婚約して欲しい」
王妃殿下から手紙がお父様に届くくらいだもの、私の気持ちがどうこう言っている場合ではないのは、分かる。
分かるけど……どうしても気持ちが追いつかない。
色々な感情が入り混じり、涙が零れ落ちる。
そんな私に、お兄様はそっとハンカチで涙を拭う。
「メル。こんな状況でもっと混乱させるような事をいう事になるけど、私の気持ちを聞いて欲しい」
これ以上に、混乱するような話?
お兄様の気持ち……?
「私は、今まで妹としてメルの事を大事にしてきた。でも、それだけはなく、メルのことを1人の女性としても愛しているんだ。今までは、メルが幸せになれるなら、相手は私ではなくても良いと思っていたし、従兄妹であることを打ち明けるつもりもなかったんだ。私と婚約したからと言って、メルに私を愛するように無理強いするつもりもない。ただ、私はメルと婚約出来る事は嬉しいことなんだと知っておいて欲しい」
まさか……お兄様が私のことを愛してくれていたなんて……
私は本当の兄妹だと思っていたのだから、お兄様に兄妹以上の感情を抱いたことはなかった……
それでも……もう私に選択肢はない。
お兄様が、私を愛してくれていると言ってくれているのであれば、今はそれに甘える事にする。
もう今は、これ以上、何も考えられない。
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