「溺愛ビギナー」◆幼馴染みで相方。ずっと片想いしてたのに――まさかの溺愛宣言!◆

星井 悠里

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第13話

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 とにかく深呼吸。

「とりあえず。うん。――そうだね、歌ってこようね」
「おう――つか、涼、顔戻せって。そんな顔でテレビなんか死んでもださねーからな」

「そんな顔ってなんだよ……っ つか、誰のせいだよっ」
「……オレだけど、その顔見ていいのはオレだけ。二度と、他の誰にも見せんな」

 分かってはいたけど、ほんとにオレ様な……。
 マジで、何言ってるか、分かんない。蒼紫のせいじゃんかー!

「もう……っ」

 そんな顔ってどんな顔だよっ。もう。

 蒼紫に背を向けて、鏡を見るために歩き出した瞬間。
 その背後で、急にばちん、という音が響いた。

 驚いて振り返ると、蒼紫が両手で両頬を叩いているところ。

「……蒼紫……?」
「ちょっと、自分にも、喝。 お前にキスしたの嬉しくて……すげーにやけそうだから」

 そんなことよりオレが気になるのは。

「……っていうか、叩くなよ、顔。手形がついた顔のが、テレビ出せないだろ。なんか結構強く叩いたよね」
「ああ、つい……だってすげーにやけそうだったから」

「もー、ばか、蒼紫」

 もう。ほんとにもう。
 なんかバカな会話してたら、熱が少し引いてきた。


「蒼紫、オレ、顔、戻った?」
「――ん、まあ。さっきよりはマシだけど……とりあえず、向かってる内に戻るかな。急ごう」

 二人で楽屋を出て、スタジオに向かう。廊下を歩いていくと、白い蛍光灯に照らされた白い壁が続いてる。
 なんだか、見慣れた廊下なのに、さっきまでとは別世界みたいな。

 すごい、浮かれてるのではないだろうか、オレ。

 全然、現実感は無いし、まだ蒼紫の本意も分かんないし。
 だけど。

 好きって言ってくれた言葉だけは。
 あの瞳だけは、信じられる。
 嘘とかふざけてたり、そういうんじゃないのは、分かる。

 誰かすれ違う度、「お疲れ様です」と声が飛んでくる。
 それだけ現実っぽいんだけど……隣を急いでる蒼紫をちらっと見上げる。

「――」

 なんか無言で見つめ合ってしまった。
 ああ、また、心臓が。鼓動が速すぎて、苦しい。
 
「あっ、二人とも!」

 途中で、智さんに遭遇。
 ……なんだか、すごくホッとしてしまった。あ、なんか。現実だ。智さん。

「よかった、今、迎えに行こうかと思ってたところだよ」

 智さんのホッとしたような笑顔。
 蒼紫が、すみません、と言ってる。素直に謝るなんて珍しい。

「って、涼、どうかした?」
「……え……」

「なんかすごくぼーっとした顔してるけど? 熱とかないよね?」
「ないです、元気です!」
「そう?」

 ただ、さっきの出来事が、頭をぐるぐる回ってしまってる。

 隣を歩く蒼紫は、智さんが来てからは、オレとは目を合わせない。
 なんでもなかったような顔をして、前を見て歩いている。

 ……さっきまで、あんなに、強引に。
 抱き寄せて、キス――。

「……っっ」

 ……さっきのは、全部現実だったんだろうか。
 夢だったみたいにも思えるけど。

 でも、体が浮かぶみたいな、感覚が、全身から消えない。
 キスの感覚が、まだ口の中に、残ってるみたいで。

 蒼紫の、真剣な、まなざしが、心の中から、消えない。


 スタジオの扉の前に着くと、中から、せわしなく人が動く音。
 一瞬、立ち止まった。


「大丈夫か?」

 蒼紫に声を掛けられる。蒼紫は、まだオレを見ずに、扉をまっすぐに見てる。
 オレは、すう、と息を吸った。


「――うん、大丈夫。いこ」



 オレは、ふ、と唇を引き締めた。
 隣で蒼紫が少し笑ったのが、雰囲気で分かった。




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