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第32話
しおりを挟む「水?麦茶?」
「水がいい」
「ん」
優しいキスを何回かした後、よしよし、と撫でられる。
名残惜しそうに離れながら、蒼紫が飲み物を取ってきてくれた。
ローテーブルを挟んで、向かい側に座るかなと思ったら、隣に並んで座る。
「隣、なんだね」
「まーそうだな。くっついて座りたいし」
腕、掴まれて、引き寄せられる。
すごい近いし。
ドキドキしながら、蒼紫を見つめると、ちゅ、と頬にキスされる。
「たべよーぜ」
「ん」
お弁当の蓋を開けて、割り箸を割った。
「いただきます」
二人で一緒に食べ始める。
こんな近くで。……二人きりで。
「オレさ、蒼紫」
「うん」
「――まだ、信じられないんだよね」
「オレも。願望が叶いまくった夢見てる感じ」
顔を見合わせて、笑ってしまう。
「分かる。夢かなーて、思う」
「ん。だよな。なあ、涼、唐揚げ食べる?」
「食べるー。鮭食べる?」
「ちょっとだけ」
二人でお弁当の中身を交換して、ちょっとの間、黙って食べてから。
蒼紫が言った。
「好き嫌いとか、得意なことも苦手なことも、お互いほとんど知ってるよな」
「ん。知ってると思う」
「――言いそうなこととか、考えそうなことも分かるよな」
「うん」
「なのに―― お互い好きだったとか、大事なとこ、全然分かんなかったな」
そんな風に言われると。
確かに、他のことは全部分かるのに、とも思うけど。
「あー、でも、そこだけは、蒼紫にはバレないように、死ぬ気で隠そうとしてたからなぁ……」
「そこは、オレも。バレないように、女のことばっか話してたかも。疑われたくなくて」
「――絶対、分かんないよね」
「だな」
二人で、苦笑い。
ふ、と。蒼紫が箸を置いて、オレの頬に触れた。
「涼、オレのこと好き?」
「うん。好き」
素直に答えると、蒼紫は嬉しそうにくすっと笑った。
「どん位?」
「――どん位って……難しいけど」
「うん」
なんだか蒼紫がわくわくした顔で待ってて、とても可愛い。
「んと――ずーっと二人で居たい、位?」
一生懸命考えて、出てきた言葉を言ったら。
何やら、ふ、と笑われてしまった。
恥ずかしくなって、む、と膨れて見せてしまう。
「何で笑うの。……じゃあ蒼紫だったら、何て言うんだよ?」
ちょっとジト、と見つめると。
「んー……もう涼のこと誰にも見せずに、閉じ込めて、ひたすらオレが可愛がりまくりたい位?」
「――何それ」
オレも笑ってしまった。
ていうか、オレのがまだ普通じゃん。
閉じ込めてって、きたぞ、蒼紫。
「テレビで、皆がお前を見てると思うと、嫌」
「てか、お前にその世界に連れ込まれたんだけど」
「んでも、あん時は――」
蒼紫が一瞬口をつぐんで、それから、仕方なさそうに言葉をつづけた。
「ずっと居るには、それしかないと、思ったから」
その言葉には、オレも言葉が咄嗟に出てこない。
「もちろん、涼が歌もダンスも全然だったら諦めたけどさ。イケそうって思ったら、我慢できなかったし」
「――オレも。最初は絶対無理って思ったけど…… 頑張って蒼紫とずっと居れるなら、て思って……」
言うと、また頬にキスされる。
「でも、今はもう、閉じ込めたい」
「――はは。本気?」
「本気。見せたくないなー、涼のこと」
「じゃあオレ、引退する?」
そう言うと、少し考えた後、蒼紫が首を横に振った。
「だめ。一緒にずっとやってく」
両極端なことを言ってる。
見せたくないとか言って、芸能人一緒にやってくとか。
――おかしくなって、笑ってしまう。
「まあでも――オレも、一人占めしたい気は分かるかも」
「涼、分かる?」
「うん。分かる」
頷くと、蒼紫は、くす、と笑って、今度は唇にキスしてきた。
「なんかマジで。夢みてえって、思う」
「ん」
少し、離れた蒼紫の唇に、自分から少し近づいて、ちゅ、とキスした。
かなり、ドキドキしてると。
じっと見つめられて――ふ、と瞳が優しく緩む。
「――あーもう……涼」
むぎゅ、と抱き締められる。
「すげー、好き」
囁かれて。
なんか、幸せなのに、泣きそうになる。
違うか。幸せ過ぎて、泣きそう、なのかな。
「弁当たべるか」
すっかり置き去りになってたお弁当に、蒼紫が笑いながらそう言った。
「うん」
ゆっくり離されて。
また箸を持ち直して。
でもなんとなく、蒼紫を見上げたら。
すぐ気づいた蒼紫に、ふと、見つめ返されて。
「――」
優しく笑う蒼紫に、頬をすり、と撫でられる。
「キリ無えよな……食べちまお、涼」
「ん」
ほんと。
キリ、無い。
もう、ずっと見つめて良いんだって、思うと。
――なんか、目が、離せない。
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おおおおお。
急展開〜(*´ω`*)
急展開になると、
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たまにはこんな風に
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