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第3章 キャンプ

「愛しい」*蓮

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「なんか、二人が仲良しなのが不思議。ぱっと見、全然タイプ違うから」

 続けて、南にもそう言われて、苦笑い。
 そんなに全然違う――――…… まあ、違うといえば、違うか。


「それ言ったら、女子3人も、タイプ違くないか?」

「あー……うちらは、確かにタイプ違うけど…… それがいいのかも」
「気を使わなくてもいいんだよね、なんか皆それぞれ違って」

 南と松本が言って、坂井がそれにうんうん頷いてる。

「おんなじ感じだよ。タイプは違うけど、楽」

 樹のことを思い出しながら、ふ、と笑って、そう言うと。
 ちら、と山田がオレを見て、クスクス笑いだした。

「横澤の話になると、なんか、笑うよなー、お前」
「――――……」

「ほんと、仲いいんだろうなーて感じ」
「……まあ、仲良くなきゃ一緒に暮らしてないし」

「あ、そうそう、二人で暮らしてるって聞いたー何でー?」

 さらに南が突っ込んでくる。

「何でって……んー…… オレは料理出来るけど洗濯とかあんまりやってこなくて、樹が逆だったから…… 暮らしてみようかって話になったて感じ」
「え~? それだけで、同居決める??」

「……決めたんだよな……」

 そう。
 ……それと。

 樹と一緒にいる時の空気が、好きだったから。

 同居のあれやこれや色々聞かれながら、適当に答えながら。
 パーキングで車を停めると、少し離れた所に、佐藤も車を停めた。

 皆が降りて、佐藤の車の方に歩いていく。
 車の鍵を閉めて、オレもそちらへ向かう。

「佐藤、運転お疲れ。全然大丈夫だったね」
「あとは顔と肩の力を抜くだけだな。力み過ぎだっつーの」

 佐藤に言ってる樹の声が聞こえる。それにつけくわえて、森田がおかしそうに笑ってるのが聞こえて、山田や女子達も楽しそうに笑ってる。

 オレが近づくと、ふっとこっちを見た樹が、ぱ、と笑顔になった。


「蓮、お疲れ」
「……ん」

 ……何なの。その笑顔。
 オレを見て、ふわふわ笑うとか。


 ――――……何で樹って、こんなに可愛いのかな。


「蓮は緊張した?」

 樹の隣に並ぶと、そんな風に聞いてくる。してないよ、と笑うと、そっか、良かった、とまた笑顔。

「とりあえず、店行こうぜ」
 皆に声をかけて、歩き出す。

「うん。コーヒー飲みたいな」

 樹も言って、オレの隣に並んで歩き出した。
 当然みたいに隣に並んでくれるだけで、なんでか嬉しくて。
 
「カフェオレ飲む?」
「うん」

 なんとなく2人で先に進もうとしたのだけれど。
 急に、樹の肩に、腕が回ってきた。


「樹、オレもコーヒー飲みに行く」

 森田が、そんな風に言う。うん、なんて樹が笑う。

「でも重いから腕やめて」
「なんだよいいじゃんか」

「やだ、重い」

 そんなやりとりの末、森田がやっと樹から腕を外す。


 ……もやもやする心が、落ち着かない。

 つか、森田って、樹って呼んでたっけ。
 なに、この数十分でそんな仲良くなった訳。


「そっちの車は盛り上がってたか?」

 何も気づかない森田は、そんな風にオレに聞いてくる。


「楽しかった?」
「……まあ、な」

「そっか。こっちも結構楽しかった。樹、結構しゃべんのな。おとなしい奴なのかと思ってた。なんか変な突っ込み入れてくるし。面白え」

 クスクス笑って、森田が言う。

「変な突っ込みなんて入れてないし」

 森田を見て、樹がそんな風に言って、笑ってる。


 ――――……樹が皆と仲良くなるのは、すごくいいと思うんだけど……
 それとは反対に、オレとだけ仲いいんでも、いいんだけどな。とか。
 思ってしまう自分が、なんだかなあと、ちょっと沈む。


「コーヒー飲みに行く奴いるー?」

 森田が後ろのやつらにも声を掛けにいって、樹と二人になった。

 すぐに、樹が下からオレを見上げてくる。


「蓮、疲れてる?」
「ん?」

「運転、ほんとは疲れちゃった?」

 じ、と見上げてくる樹を見てると、なんだか急に和む。


「疲れてないよ。何か食べる? オレ腹減った」
「うん」

 ふわ、と笑む樹。

 ちょっとの時間離れただけなのに。
 ……なんか、大事なものと離れてて、やっと再会できた気分。


 オレ、どんだけなのかな……。
 苦笑いが浮かぶ。


「蓮、お店あっちだね、いこ」


 くい、と引かれて。一緒に歩き出した。



 樹は――――……そんな風には、思わないのかな。
 なんて。少し聞いてみたくなるけれど。

 面倒くさいと思われたら嫌だなと思って、聞くのをやめた瞬間。


「なんか、蓮が久しぶりな気がする……って、大げさか。可笑しいよね」


 なんて言って、クスクス笑う樹の事が。

 すごく愛しくなったって、もうこれは、どうしようもない気がした。







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