【キスの意味なんて、知らない】

星井 悠里

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第3章 キャンプ

「ヤバい」*蓮

 意識……?
 樹は何を意識してるんだ?

 意識しないようにしてたのに、って、さっき言ってた。


 ――――……色んな意味に取れて。


 都合よく解釈すれば、
 その意識は、オレと、同じ意識、なのかなとも思うけれど。

 ――――……勝手な解釈はやめておこうとも思った。




 入浴施設からの帰り道、森田と歩いてる樹が、何だかすごく可愛い顔をしてたので、なにやら気になって。不自然だけど、待ったりしてしまった。

 あほすぎる、オレ。


 ――――……独占欲、無いタイプだと、自分の事、思ってたのに。
 嫉妬とか、無縁だと、本気で思っていた。


 もちろん、綺麗だし、可愛いし、良い子だしと、その時々で、付き合う理由はあったし、それで、相手を好きにもなってるつもりだった。
 でも、独占したいとか、誰かと話してるのに嫉妬するとか、そういう気持ちは一切湧いてこなくて。
 むしろ、何の意味もなく話してる女友達にまで妬かれると、途端に面倒になったのを思い出す。

 ヤキモチ妬かれたら冷める、なんて。 
 過去のオレは、最低だったかも。


 というか――――…… たぶん、そこまで好きじゃなかったんだと、今は思う。失いたくないとか、誰かに奪われたくないとか、思えていなかった。


 何の他意もない男と、樹が楽しそうにしてるのを見て気になるなんて、もはやただのバカだと思うのだけれど。


「星、見てる?」なんて聞いて、ごまかしたら、ふわ、と笑って樹が頷いた。


 もうなんか、ほんとに可愛くて、だめだ。



 その後、森田に部屋を一緒にするか聞かれて。
 ――――……樹が一緒が良いと、言ってくれて。

 もうそこからは、ほんとは早く2人きりになりたくて、しょうがない。
 の、だけれど。


 ――――……まあ、そうもいかない。
 皆で来てる訳で。

 ログハウスの中で、皆で一緒に話す。

 まあ、こういうのは嫌いじゃない。というか、すごく好きだった。
 適当にいろんな話をして、笑って、騒ぐ。

 ――――……今も、嫌いでは、ない。


 のだけれど。
 ――――……また樹と離れてしまった。


 まあ……無理無理隣に座るわけにもいかないし。
 ……皆で来たらしょうがないのだけれど。



「なー加瀬―!」

 山田が樹の隣から、オレを呼ぶ。

「何か食べたいー」
「何かって?」

 目の前にお菓子や、つまみっぽいものは置いてある。

「肉食いたい」
「はー?」

「オレもなんか食いたい。ちょっと腹へった」
「加瀬の料理うまいって、樹が言ってたしー」

 森田と佐藤まで乗っかってくる。

「……まあいっか。……樹も食べたい?」

 聞くと、樹が楽しそうに笑いながら、うんうん、と頷いてる。


 ああ、もう。可愛い。
 ……早く話したい。


 ……けどしょうがない。

 がた、と立ち上がる。


「待ってろ」

 樹以外の男三人、ちらと見て、そう言うと、「はーい」と良い返事。


「加瀬くん、手伝う?」

 坂井が言ってくる。

「良いよ。座ってて。 簡単なもの作るから」
「……ん」

 テーブルを離れ、キッチンに向かう。


 小鍋にたっぷりのオリーブオイルを入れて、チューブのニンニクを落とし、弱火であぶって、香りを立てる。

 ほんとは普通にニンニクと鷹の爪とかほしいけど……ま、これでいいや。
 そこに残ってたもも肉と、エリンギをつっこんで、塩を少し入れて、待機。

 他に何か作れるか……っても、
 大したもの残ってねーしな。
 
 キャベツと豚肉かー……焼けばいいか。焼き肉のたれ、あるしな。


 もう一つフライパンを出して、今度は薄くオリーブオイルを入れて、豚肉に火を通す。


「加瀬くん、やっぱり手伝うよ」

 坂井がやってきた。

「あー……じゃあ、適当に取り皿、出してくれる?」
「うん」

 せっせと取り皿をだして、運んでいく。
 それを横目に、肉に火が通ってきたので、キャベツを追加。
 適度な所で、焼き肉のたれを絡めて、完成。

 大きめの皿にざーと、盛り付けて、戻ってきた坂井に渡す。

「持ってってやってくれる?食べてていいから」
「うん! ……すっごい美味しそう」
「炒めただけだよ」
「加瀬くん、ほんと、すごいなあ……」


 なんて、言いながら、坂井がそれを届けると、うまそーだの、いただきまーすだの聞こえてくる。


 鶏肉の方をみると、もうこっちも大丈夫。火を止める。
 鍋敷き片手に、小鍋をそのまま持って、戻る。


「加瀬、超、うまい! 飯がほしい」
「それは無い」

 笑って返すと、「分かってるけどー」と山田が騒いでる。


「これ鍋熱いから、気をつけろよ」

 言って、鍋を真ん中に置くと、皆興味津々でのぞき込む。


「これ何て料理?」
「アヒージョ」

「知らん!」
「オレもしらねー」
「あたしもしらないー」

 女子達までそんなことを言ってる。

「樹は知ってんの?」

 佐藤が樹に聞いてる。

「うん。……てか、蓮が、たまに作ってくれるから、知ってる」
「これうまいの?? 油に浮いてる……」

 森田のそんな台詞に、苦笑いしていると。

「美味しいよ」

 樹がクスクス笑って、森田を見て笑ってる。


 ――――……樹が楽しそうで、良いのだけど。
 ……森田に、そんな、楽しそうな笑顔を向けられると、面白くない。


「うまーい!」
「加瀬、天才」

 大げさな誉め言葉に、「それはよかった」と返しながら、席に座る。

「加瀬くんの、これね」
「あ、ありがと」

「とっとかないと、全部なくなっちゃいそうだったから……」

 坂井がクスクス笑う。

「つーか、結構な量のキャベツと豚肉使ったんだけど……すげーな」
「ほんとに美味しかったから」

「それはどーも」
 坂井の言葉に、笑ってそう返す。

 まあ、普通の炒め物だけど。
 飢えてるとうまいよな。

 ……つか、風呂の前に結構食ってたはずだけどなー……。

 なんて思いながら、肉を口に入れてると。不意に。

「樹、あーん」

 そんな声が聞こえてきて、何となくそっちを見る。


「え?」
「ほれ、この鶏肉で最後だから」
「……あー……  っあ、ち」

 森田に、あーんで食べさせられてる樹に、ぷち、と何かが切れる。

 森田は彼女いるっつってたし、何の意味もないのは、分かってる。
 ――――……が。そういう問題ではない。

 口に突っ込まれた鶏肉が熱かったみたいで、樹が、口元押さえてふうふう息を吐いてる。

「森田、ほんとやだ、熱いっつの……」
「だって、樹が食べてなかったから」

「ちょっと食べたから良かったのに……つか、熱い。 唇と舌、やけどした」

 べー、と舌を出して、そこに、コップで水を流してる。


「んー……氷欲しい……  蓮、ごめん、氷って残ってる?」
「……ああ、たぶん」

 がたん、と立ち上がって、またキッチンに向かう。

 ――――……はー。
 落ち着け。

 ……なんか色々と、クるものがあって、ムカつくけど。
 ……落ち着けオレ。

 必死で落ち着こうとしてるオレのもとに、樹がやってきた。

「蓮ごめんね、氷、ある?」
「……ん、残ってるよ」

 冷凍庫を開いて、買ってきた氷の袋の中から、少し小さめの氷を出すけれど、まだ口に入れるにはでかい。

 水道を出して、手の中の氷を少し溶かす。

「ほら、樹」
「あ、うん。ありがと」

 近付いてきて、受け取ろうとした樹の手をさえぎり、口の所に持っていく。

「え……あ」

 少し戸惑いながらも、反射的に開いた唇に、氷をつるん、と挿し入れた。

「っ」

 樹が、氷が入った唇を、抑えてる。



「――――……」


 なんか。
 ――――……オレの手から、樹の口に、氷が入って。
 って。


 ……なんか、すごく……やばい。



 って――――…… オレは、バカだな。


 はー、とため息をついて、気を取り直して顔を上げる。


「……口やけどしたの? 大丈夫か?」

 なるべく平静を装って言いながら、樹を見ると。
 樹は、かあっと赤くなって、固まってた。


「あ、ごめ……ん、なんか……恥ずかしく、なって――――……」
「――――……」



 つか。
 もう……勘弁してほしい。


 誰も居なかったら――――……。
 抱き締めて、キスしてる。




 しかも――――…… 触れるだけのキスなんかじゃ、
 絶対もう、我慢、出来そうにない。

 本当に、やばい。
 

 どう、この衝動を抑えれば良いのか、
 昨日まで、どう抑えてたのか。

 よく、わからない。




 


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