【ひみつの巣作り】💖書籍化進行中です✨

星井 悠里

文字の大きさ
120 / 231

第120話 突然言えた。




 教授が来たので話すのは終わり、授業開始。
 授業を聞きながらだけど、今の会話を思い起こす。

 ……昨日の颯、嫉妬とかしてるっぽくはなかった。
 優しかったし。笑顔だったし。
 でも皆が言う感じだと、きっと、知らないαの匂いに、嫌だなって思ったってこと、だよね。

 オレだって、颯が、他のΩの匂いなんかつけてきたら、絶対やだし。
 ……颯がそれに気づいてなかったとしても、そんなの絶対やだと思うし。
 逆の立場だったら、聞かずに、やりすごすことなんて、出来ない気がする。

 颯は、オレが颯の匂いしか分かんないのが可愛いって言ってくれてた。
 オレが、αの匂いに気づいてもなくて、颯のだけが分かるって、言ったから、きっとオレのこと。……多分許してくれて、何も言わないでくれて。でも、相手のαにだけ牽制するために、そうしたんだ。
 ……でもって、そのことで、心配までして、一人になるなら呼んで、とか。
 そんな心配してたってことは、オレに匂いつけたこと、ちょっと後悔してたりとか、したりするのかな……。

 オレが今、颯の匂いをめちゃくちゃさせて歩いてるのは……。マーキングされてるΩってことになるのかなって、結構ハズイ気もするけど。でも、なんか、それだけ、オレのこと……好き、なのかなって、都合のいいことも思っちゃったりすると。やっぱり嬉しいというか。

 ……でもな。
 なんかちょっと――――……。

「――――……」

 そっとスマホを出して、前にいる健人の背中に隠して颯へのメッセージ。
「一限から二限行く時、どこ通る?」そう聞いた。
 授業中だから見ないかなあと思ったら、すぐ既読がついて「三号館から四号館。何で?」とすぐ返ってきた。
「オレも四号館だから入り口で会える? 一限終わったらすぐ行くから」と続けて聞くと「いいよ」と即、返信がくる。
 約束が終わるとスマホをしまって、授業に集中。
 一限が終わると同時に、立ち上がった。

「慧?」
「ちょっと先に四号館行ってる!」
「お前ひとりになるなって言われたんだろ?」

 昴の言葉に、「四号館まで人居るし、颯と会うから平気。教室でまたね!」と返して、教室を急ぎ足で出て、階段を駆け降りた。

 ダッシュで四号館まで走っていくと、入り口に颯の姿。

「颯っ」
 駆け寄ったら不思議そうな表情。

「慧? どうし――――」
「こっち、来て?」

 颯を引いて、四号館に入り、小さめのゼミ室が並んでる教室を抜けて、少し奥の、電気のついてない部屋のドアを開けた。
 中に入ってドアを閉めると、颯にドアの前に立ってもらって向こうからすぐあかないように、寄りかかってもらった。

「颯、オレね」
 そう言った時、颯の手が、オレの頬に触れた。

「慧、もしかして、怒ってる?」
「え?」
「周りにバレたよな?」
「あ。颯の匂い?」
「そう。お前は気づいてないっぽかったけど、周りは気づくだろ。勝手にそんなことして、悪かったと思って――――」

 オレは、颯の頬に触れて、引き寄せて、唇を重ねた。

「……慧?」

 颯がちょっとびっくりした顔でオレを見てる。
 ……まあそうだよね。急に呼び出して、急にこんなとこ連れ込んで、急にキス、なんかしたら。驚くよね。

「……あの、オレっ……」
「ん……?」

「颯のこと、好き、だから……!」
「――――……」

 もっとびっくりされた。
 こんなに唐突に自分から出た、ずっと言えなかった言葉に、かあっと、顔に血が上るけど。

「ごめん、昨日颯に、やな思い、させて。気付かなかったとは言っても……ごめん。オレが、怒るとこじゃないよ、ほんとは、颯が怒ってもいいとこ、だよ」
 颯は何も言わず、オレをじっと見つめている。

「でも、オレ、颯のことが……好き、だから。これから先、何かの事故とかで、オレから、誰の匂いがしても、関係ないから」
「――――……」

「昨日、怒んないで、優しくしてくれて、ありがと。オレ、全然怒ってないし、勝手なこととかじゃないから」

 なんだかとっても真剣な顔で、まっすぐ見つめてくる瞳が。
 なんか好きすぎて。

「颯の匂い、つけてくれていいから。ていうか……颯の匂い振りまいて歩いてるの、ちょっとハズいけど……でも、なんか、嬉しい気もする、し」

 良かった、会いに来て。
 怒ってる? なんて、颯から出るってことは、絶対颯も、気にしてたんだ。

 言いに来て、良かった。
 ……なんか勢いで、好きって、言えたし。いっせきにちょ……。

 不意に颯に抱き寄せられて、え、と思った瞬間、キスされた。

「ん……っ」

 瞬き、繰り返してたけど、キスが強くて、すぐにぎゅっと目を閉じる。
 完全に抱き込まれてしまって、動けない。






感想 457

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【本編完結】期限つきの恋

こうらい ゆあ
BL
神崎葵は、聖桜病院の特別病棟で静かな日々を送っていた。 Ω性特有の難病『フェロモン崩壊症』に冒された彼は、かつてイラストレーターとして活躍していたが、今では病室でひとり、スケッチブックに心を刻む。 余命わずかな時間の中、担当医・佐藤悠真との出会いが、閉ざされた白い病室に温かな光を灯す。 葵の海への憧れ、恋への憧憬が色鮮やかに花開くが、時間は無情にも迫ってくる。 限られた時間の中での、儚い恋のお話。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 様々な形での応援ありがとうございます!