156 / 231
第156話 幸せとか
「……んー。気持ちいー」
お風呂から出て髪を乾かされて、水を飲まされて、ベッドに転がった。
うつ伏せで、枕を抱えると、なんかすごく気持ちイイ。
「完全にのぼせてんな……ごめんな」
ふ、と笑いながら、颯がエアコンを入れる。そんな様子を見ながら、オレは首を振った。
「いい。……幸せだし」
「――――……」
顔だけ颯の方に少し向けて、でも寝たままのオレの隣に座った颯が、オレを見下ろして、頭を撫でてくる。
「慧」
「……ん?」
「オレと結婚して、幸せ?」
「――――……」
聞かれたことを自分の中で噛みしめてから、オレは、むく、と起き上がった。
「うん」
まっすぐ見つめて、頷くと。
颯は、くす、と笑って、オレを抱き寄せた。
抱き締められたまま、ゆっくり、ベッドに転がされる。
「起きなくていいのに」
クスクス笑われて。
「だって、ちゃんと顔見て、答えたいじゃん……」
「……ほんと、そういうとこ 可愛いよな……」
抱き締められたまま、よしよし撫でられる。
可愛いって恥ずかしいけど、今は顔見られてないし、まだ耐えられる。やっぱり嬉しいし。
「なあ、慧さ」
「……ん?」
「結婚式、どんなのがいい?」
「――――……結婚式?」
「さっき早くしたいって言ったろ?」
「んー……仲良い奴、皆呼んで、おめでとうって言ってもらえたら、なんでもいいかなあ……」
「これしたい、とかは?」
聞かれて、んー、と悩む。
「……結婚式とか、考えたこと無かったなー……何ならさ、新郎側のほうは、想像してたけど……」
「まあ、そっか」
「颯と結婚するなんて……してる今でもびっくりだけどねー、オレ」
「そうだよな」
ふ、と柔らかい笑みが聞こえる。
「颯は? ……どんな式がいい?」
「慧が嬉しいなら、オレはなんでもいい」
「えー……何それ……」
ふふ、と笑ってしまう。
「じゃあオレも。颯が幸せなら、なんでもいい」
「……とか言ってると、何も決まらないな?」
颯もクスクス笑ってる。
「……えー……じゃああれは? 颯、恥ずかしくない?」
「なに?」
「ケーキカットとか」
「……恥ずかしくはない」
「ほんと?」
腕の中から、颯を見上げると、ん、と微笑む。
「じゃあれ! シャンパンのグラスみたいなの積んで、上から流すやつ。なんかよくホストがやってる?」
「ああ……」
ふ、と笑う颯。
「あれも、恥ずかしくない?」
「ああ。……一人でやるなら恥ずかしいかもしれないけど。慧が一緒にやるんなら」
「一緒に決まってるしー」
ふふ、と。オレ達がやってるとこを想像して、笑ってしまう。
「あれもいいなあ、皆がお花を投げてくれて、その中通るやつー。おめでとーって言われながら」
「――――そういうの全部好き?」
「うん。いいじゃん。楽しそうじゃない?」
「なるほどね。じゃあ、全部やろうな」
クスクス笑って言ってくれる颯に、ん、と笑った。
「楽しみだねー」
「そうだな」
「颯が、多分ちょっと、気まずそうにしてそうなのも、楽しみ」
くふふ、と可笑しくて笑ってしまうと、じっと見つめられて。
ふ、と苦笑されて。
ちゅ、と頬にキスされる。
「慧はすげー笑ってそう」
「……んー? んー……。まあそうだね、絶対笑ってる」
見つめ合って、お互いに、ふっと笑顔。
優しく触れてくるキスに少し瞳を伏せた後。
「……あ。そうだ」
「ん?」
「颯、明日明後日売り子してもらう時あるからね?」
「ん?」
「学内、回りながら、イケメンコンテストの宣伝もするって、皆が言ってたから。売り歩きながら、顔見せてきてね」
笑顔で言ったオレに、ちょっと眉を寄せて、んー、と唸った後。
「……了解」
「はは。ちょっと、嫌そう」
オレが言いながら颯を見つめると。颯は、すり、と頬に触れてきた。
「慧が推薦してくれたし。一位にはなりたいから」
「うん! 楽しみー」
「そういえば、何て書いたんだ? 推薦文」
「……内緒でお願いします」
そう言うと、颯は少し首を傾げて。
「そう言われると、ますます聞きたいな」
「……まあ。いいとこ、色々書いたよ。そもそも去年の優勝者だから、そんなに書かなくても、通るかなーと思ったし」
一生懸命ごまかしていると、颯は、まあいいけど、と笑ってくれた。
……かなり本気で書いたから、颯にそれ言うのは、超ハズイ……。
「売り子、頑張るか」
「うん。頑張ってね。あっ、でも」
「ん?」
「……いや……」
……あんまり愛想ふりまかなくていいからね、優しく笑っちゃったりしないでね、とか。一瞬思ってしまった自分に、矛盾してるなーと思って、言い淀んでいると。
「でも、何?」
颯に聞かれて、ん、と口ごもる。
「……あの……そこまで、颯を好きな人、増やさなくて、良いからね……と」
もごもご言ってると、最後の方には、可笑しそうに笑ってるし。
「つか、オレ、中学ん時から、お前のことばっかだったし」
「――――」
「なんならその前はそういうのに興味もなんも無かったから。オレのそういうのは、慧にしか向いてないって」
「……」
「α同士だから、諦めて、他の子見ようとしてたけど。……慧がΩだったら、中学ん時から、迫ってたと思うよ。……つか、運命。信じてろよ」
もうオレは、ただコクコク頷いて、むぎゅと颯に抱き付く。
好き。颯。
――――……アホみたいに張り合ってた前のオレにも、よく颯の視界に入りに行ってたなっと、今となっては褒めてやりたい。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【本編完結済】巣作り出来ないΩくん
こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。
悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。
心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【本編完結】期限つきの恋
こうらい ゆあ
BL
神崎葵は、聖桜病院の特別病棟で静かな日々を送っていた。
Ω性特有の難病『フェロモン崩壊症』に冒された彼は、かつてイラストレーターとして活躍していたが、今では病室でひとり、スケッチブックに心を刻む。
余命わずかな時間の中、担当医・佐藤悠真との出会いが、閉ざされた白い病室に温かな光を灯す。
葵の海への憧れ、恋への憧憬が色鮮やかに花開くが、時間は無情にも迫ってくる。
限られた時間の中での、儚い恋のお話。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
様々な形での応援ありがとうございます!