【ひみつの巣作り】💖書籍化進行中です✨

星井 悠里

文字の大きさ
214 / 231

第211話 颯の好きなところ

しおりを挟む
「ではでは! 読ませて頂きます」
 そう言って、さっきの紙をひろげる女の子に、もう一人の子がマイクを差し出す。

「ドキドキですね、颯さん!」
 司会者がそんな風に颯に話しかけてて、そうですね、なんて颯が笑う。

 いやいや、一番ドキドキなの、オレだから!

 なんか、異様に静かになる会場。
 ……わー。そんなに真剣に聞かないでほしいんだけど……。颯は、読もうとしてる女の子二人の向こうで、こっちを向いて立ってる。

「颯は、ルックスもいいし、なんでもできて、本当にカッコいいと思うので、推薦したいのですが。もう一つ、推薦の理由があります。
 颯を知る人は、颯のことをクールとか、ちょっと怖いとか、言うことがあるんですけど……颯は、周りのことをよく見て、人を大事にしてて、あったかくて――あと、なんかたまに可愛い時もあったりして。
 オレは、ただカッコいいだけじゃなくて、颯のそういう優しいところが大好きなので、このコンテストで、皆の前でそれが少しでも伝わったらいいなと思ってて――それも推薦理由です。
 実行委員さん、颯のいいとこ、ステージで、引き出してくれたら嬉しいです。よろしくお願いします」

 文章を読み終えた女の子は、「以上です」と微笑んだ。

 ひええー恥ずかしいかもしれない……! ていうか、どこを見てていいか分からなくて、自分のつま先をじっと睨んでたオレは、顔を上げられないまま、固まっていた。

「本当は、推薦者の推薦理由は、発表しないんですけど、颯さんのさっきのコメントを聞いたら、どうしても、発表したくなっちゃって。慧さんにお願いして、許可をもらいました。慧さん、最初はめちゃくちゃ恥ずかしがってましたが、なんとかオッケイ頂いたので、発表しましたー」

「颯さん、どう思いますか?」
「さきほど颯さんが言ったこと、慧さん、いろいろ書いてますね」

 司会者たちの言葉に、珍しく、颯が、ずっと黙ってる。

 え。……なんか、まずかった……??? へんなこと書いたかなオレ。
 ドキドキしながら、自分のつま先から顔を上げて、颯に視線を向けると。

「なんか――言葉にならない、ので。マイク、いいですか」
「え? あ、はい」

 司会者の人に、マイクを渡した颯が「慧」と手を広げた。「え」と思ったのだけれど。なぜか、自然と引き寄せられて、颯に近づくと、むぎゅ、と抱き締められた。

「――ありがと」

 それは、オレにしか、聞こえない声だったと、思うんだけど。

 抱き締められた瞬間から、なんだか異様に盛り上がってる会場。
 音楽が鳴り始めて、ライトまでぐるぐるまわってるし、さっきのシャボン玉まで、飛び出した。

 ステージ上にいると、観客の声、余計聞こえるのかも。こんなとこで、いろいろしてたの、すごいなぁ。とか、ぼんやりと思っていたら。

「慧」

 笑顔の颯に、ちゅ、と頬にキスされて。
 ひええーーーと真っ赤になったところで、もうぎゃーぎゃーと会場が沸いてる。

 ていうか、絶対、屋台の皆がうるさいと思うのだけど。でも会場全体から拍手と歓声。
 皆、面白がってるに違いない。

 それから、颯が優勝者スピーチなんかしてたりしたけど、ずっと隣に居させられたせいで、正直、何言ってたか、全然聞き取れなかった。

 ぽわぽわしたまま、ステージ上で、記念撮影。何故かオレも颯の隣に入れられて。なんだか大騒ぎの中、イケメンコンテストは、終わった。



 ステージを下りて、実行委員や司会者の人達が颯に挨拶したあと、オレに向かって、「盛り上げてくれてありがとう」なんて言ってたけど、オレが盛り上げたわけじゃないし、と思いながら、なんとなくやりとりして、別れて、颯と二人になった。

 周りは、バタバタ片付けに入ってる実行委員の人達が居るだけ。
 颯とオレは、向かい合って、顔を見合わせた。

「慧、ぼーっとしてる?」
「……うん。なんか最後の方はもうずーっと、ぼーっと……」

 颯は、ふ、と微笑むと。

「慧」

 むぎゅ、と抱き締められた。
 ――颯の。匂い。ほっとする。ぎゅ、と颯の背中の服を掴む。

「慧と結婚してたおかげで、優勝しただろ?」
「……でも、一番は颯が、カッコいいからだけど」
「慧といるから尊いって、そんなコメントがすごかったって、聞いた」
「――そうなの?」
「ああ。結婚しててよかったな?」

 クスクス笑って、颯がそんな風に言い、腕の中のオレを見下ろす。
 目が潤む。

「――うん」

 頷いた瞬間、ちゅ、とキスされて。

 そのキスに浸る間もなく、「あー居た!!」と、聞き覚えのある声がたくさん近づいてくる。

「こんなとこでイチャついてないでくださいよ」
「ほらほら、いくぞー」
「そうだよ、早く店いって、打ち上げ―!」
「颯、おめでとー!!」


 途切れることなくめちゃくちゃ騒がしい皆に、颯と顔を見合わせて。
 ふ、と笑いが零れた。



しおりを挟む
感想 453

あなたにおすすめの小説

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

最強βの俺が偽装Ωになったら、フェロモン無効なのに狂犬王子に求愛されました~前世武道家なので物理で分からせます~

水凪しおん
BL
前世は日本の武道家、今世は平民β(ベータ)のルッツ。 「Ωだって強い」ことを証明するため、性別を偽り「Ω」として騎士団へ入団した彼は、その卓越した身体能力と前世の武術で周囲を圧倒する。 しかし、その強さと堂々とした態度が仇となり、最強のα(アルファ)である第一王子・イグニスの目に止まってしまった! 「お前こそ俺の運命の番だ」 βだからフェロモンなんて効かないのに、なぜかイグニスの熱烈な求愛(物理)攻撃を受ける日々に突入!? 勘違いから始まる、武闘派β×最強王子のドタバタ王宮BLファンタジー!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...