227 / 231
番外編 バレンタインデー 10
しおりを挟むゆっくりと唇を離して、颯のことをじっと見つめる。
「……あのさ、颯。さっきから気になってること、話してもいい?」
「いいよ。なに?」
くすっと笑って、颯がオレをじっと見つめ返してくれる。
「……さっきも、今もさ――颯に食べさせるのも、食べさせてもらうのも、オレ、なんかすっごく照れるみたいで」
「へえ? そうなんだ」
颯が口元を押さえて、ちょっと笑いを押し殺してるように見える。
「てか、照れるでしょ。颯は平気なの? つか、何で笑うの?」
「平気、てのとは違うかな。食べさせてる時の慧、可愛いし――照れるのかと思ったら、またそれも可愛いなぁと」
颯はそう言って微笑むと、すり、とオレの頬に指を滑らせる。
可愛いって、そんな言わないでよ。それもまた照れるから! と思いつつ、とりあえず話は終えてしまおうと、颯を見つめる。
「とにかくそれでさ――さっき話したんだけど、匠に一粒食べさせてもらったってやつなんだけど……」
颯が、ふ、とオレをじっと見つめ返す。
「匠にとってなんの意味もないって分かってても、やっぱりあれは、やめた方がよかったかなって思って」
「――」
「だから……今日、何も考えないで、食べさせてもらっちゃって、ごめんね?」
「――ん、あぁ……うん」
颯は少し眉を寄せて、なんだか困った顔でオレを見て、それから、小さく頷いた。
「オレ、これからは気を付ける――あ、もちろん、颯がそんなの気にしてないのは分かってるんだけど。これは、なんかオレの問題というか」
「ん……」
「それに……颯が誰かに食べさせてもらうのとかも、想像したら嫌だし」
颯はまた少し複雑そうな顔をして、オレを見つめながら、すりすりと頬を撫でてくる。
「―― に、何の意味もって……」
「え?」
すごく小さな声でつぶやくように言った颯。
今、何て? と颯を見上げたオレに、颯は少し黙ってオレを見つめてから、小さく首を振った。
「――いや。なんでもない。それで?」
先を促されて、ん、と頷いてから言葉を続ける。
「だから、なんとなく、食べさせるのって特別な気がするから、颯だけにするから。今日は、なんか、ごめんね?」
「――ん。分かった。オレも、そうする」
ふに、と頬をつまんで、颯がオレを、じっと見つめる。
「……颯?」
「ん」
「……なに?」
「んー……」
ちょっと困った顔で見つめてきてた颯に、ぎゅ、と抱き締められる。
「颯?」
「慧はさ――結構、モテてたよな?」
「ん? ああ、昔?」
「オレと結婚するまで」
何だろ、その質問?
首を傾げながら、オレは少し颯の腕の中から顔を上げる。
「まあ……好きって言われることは、結構あったけど」
「だよな。モテてる実感も、あったよな?」
「んー、まぁ……なに? なんの質問?」
「――今も、モテてると思う?」
なんの質問なんだろうとますます思いながら、眉を寄せてしまうけど。
「思わないよ」
そう答えると、颯は、何だか考え深げに少し黙った。
「だって、オレが颯と運命の番だって皆も知ってるし。オレを好きになる奴なんて、居ないでしょ。それに特にオレ、Ωだからさ、颯以外のフェロモンは受け付けなくなってるって聞いたし。恋愛対象として見られないと思う」
「ああ……そういう感じか」
なるほど。
そう言って、颯は、ふー、と息をついた。
「何々、何の質問なの?」
「――いや。まあそうだよな……運命の番で結婚してる相手に、好きとかは……言えないよな」
「んん? なに、どういう意味?」
「――――慧」
なんだかすごく真剣な顔をして、颯がオレを見つめてくる。
「確かに、番だってことは知ってるだろうけど……慧のことを好きになる奴はいると思う」
「――う、ん……?」
「どうにかなりたいってだけじゃなくてさ。ただ好きになる奴も」
「――」
「そこはそう思っておいた方がいいと思うよ」
「――――ん。分かった」
頷いて、少し考える。
「……颯は、いいの? オレのこと、好きな奴が居て」
思うまま聞いたら、颯はちょっと固まってオレを見つめた。
1,370
あなたにおすすめの小説
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
【本編完結済】巣作り出来ないΩくん
こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。
悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。
心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる