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第21話 ずっと、好きな
しおりを挟む施術台でうつ伏せになって、うとうとしていたとき。
エステティシャンの早川さんに話しかけられて、はっと目が覚めた。
「ごめんなさい……うとうとしてて」
「あ、すみません。起こしちゃいましたね」
「大丈夫です。何ですか?」
「今日で最後ですね」
「あ、そうですね……お世話になりました……」
脚を心地よい強さでマッサージしてくれている早川さんにそう言うと。
「三か月、本当に、よく頑張りましたね、木内さん」
「そう、ですか?」
「はい」
ふふ、と笑う早川さんに、ありがとうございます、と言って、少し考えてから。
「でもエステに来る人って、皆、頑張るんじゃないですか?」
「それが……そうとも限らないんですよね」
「そうなんですか……?」
「ここだけの話ですけど。エステにくれば痩せると思ってる方も多いんですが……結局は、生活習慣を見直さないと、という話なので」
「……そうかもしれませんね。私も、最初の一か月は、ほとんどエステにはこないんだなってびっくりしました」
「木内さんは、伝えたこと、ほんとにちゃんとやってらっしゃるんだろうなーって思っていました」
ふふ、と笑う早川さんに、そうなんですか、と笑い返す。
「お客様がどんどん綺麗になっていくと、やっぱり、私たちも嬉しいですから」
「……私、不純な動機が、あるので」
「あら。そうなんですか?」
「――週末、二十五歳になるんですけど……子供の頃からずっと忘れられなかった人に、少しでも綺麗になって会いたいって思ってて」
そう言ったら、早川さんが、おかしそうにクスクス笑い出したので、ちょっと恥ずかしくなる。
「おかしいですよね、やっぱり……二十五にもなるのに」
「木内さん。それは全然、不純じゃないですよ」
「え?」
「ずっと好きな人に綺麗な姿で会いたいなんて、もう、一番素敵な理由じゃないですか?」
「――」
一瞬、言葉につまる。
ずっと好きな人。
――ずっと、好きな、人。
「いえ……あの。ずっとっていうか……上京してからもう七年は会ってないので」
「でも忘れられないんですよね?」
「――そう……なんですけど。ずっと好きなんて、言えないというか……」
「ずっと忘れられなかったというのは、好きってことじゃないんですか?」
ふふ、と笑って、早川さんが、聞いてくる。
応えられないでいる私の背中をマッサージしながら、早川さんは続けて言った。
「こんなに努力して、会いに行きたいなんて――その相手の方、幸せですねーと、思ってしまいます」
「……私が勝手に、してることなので」
「それでも、木内さん。本当に変わられたと思いますよ。自信をもって、送り出せます」
早川さんの笑顔が、なんだかすごく嬉しかった。
「――また、たまに来ますね」
「ふふ。そうですね。メンテナンスにお越しください」
店を出た瞬間、涼しい夜風が頬を撫でていく。
なんだかとてもいい感じで、最後のエステを終えた。
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