「四半世紀の恋に、今夜決着を」

星井 悠里

文字の大きさ
27 / 36

第26話 祈らない。

しおりを挟む


 無事に新幹線に乗り込んで席を探す。

 本当は駅ビルのフィッティングルームで着替えてから乗りたかったけど、その時間は無かった。
 同窓会の会場はホテルだから、着替えるところもあるだろうと思って、とりあえず余裕をもって新幹線に乗ることを優先させた。
 
 指定席に腰を下ろした瞬間、なんだかほっとして、ふう、と息をつく。
 肩の力が抜けたけど――なんだか、今度は、いよいよだって気持ちで、落ち着かない。

 小さいテーブルを倒して、買ってきたお弁当とお茶を乗せた。もう一度、深く深呼吸しながら、窓の外に視線を向ける。

 予定外に仕事になっちゃったけど――なんとか間に合いそう。
 新幹線がついて、そこから電車に乗って二駅でつくから、ホテルまで歩いて、と検索してみる。
 ホテルについて着替える時間を取っても、開始時間には間に合いそう。ギリギリっぽいけど、急げば間に合う。
 良かったぁ、とスマホを置きそうになって、あ、と思いとどまって、愛梨さんへのメッセージを書く。

「愛梨さん、ありがとう。おかげさまで、お昼食べずに帰してもらえたから今、新幹線に乗れたよ。ちゃんと間に合うと思う」
 そう入れると、愛梨さんからすぐ返事が来た。
『余計なことしてすみません……! でも先輩は言わずに残っちゃいそうだと思って』
「うん。ほんとにありがとう」

 ハートを抱えた可愛いうさぎのスタンプを押して、また返ってきた、「どういたしまして」の可愛い笑顔のスタンプにふふ、とつい顔が綻んでしまった。

 三か月前、蒼真の話をした時から、愛梨さんには、たくさん元気をもらった。
 ――エステとか付き合ってくれて、ジムや健康食とかも。楽しかったな。
 先輩、絶対行ってくださいね、会ってきてくださいねって何度も言ってくれてた。

 私よりも、一生懸命になってくれてた気がする。
 ふっと涙腺が緩みかけて、慌てて、瞬きを繰り返した。

『三か月間、ほんとにありがとう』

 そう送ったら、すぐに、感動して号泣してるみたいな絵のネコちゃんのスタンプが送られてきた。
 何かおいしいものでも、お土産に買って帰ろう。そんな風に思いながらひとつスタンプを押して、今度は遥香とのトーク画面を開いた。

「仕事、無事に終わったよ。今新幹線に乗れた」と送ると、すぐに既読がついて返事が来た。
『良かった。間に合いそう?』
「うん。多分間に合う。ホテルまでの地図も見たし、大丈夫だと思う。ただ、着替えてる暇が無くて仕事着だから、ホテルに着替えたいんだけど」
『一階に更衣室があるから着替えて、荷物は受付で預ければ大丈夫。』
「分かった、ありがとう」

 良かった、と思っていたら、続けて聞かれた。

『荷物とかいっぱいなら、誰かに駅まで迎えに行ってもらおうか? 何時に駅につくの?』
「ううん、大丈夫。十六時四十分くらいに駅に着くんだけど……ギリギリだから急いで歩きたいから。場所も地図で分かったから」
『そっか、分かった。待ってるね』
「うん。後でね」

 やりとりを終えて、スマホをテーブルの上に置いた。
 お弁当を開けて、いただきますと食べ始める。

 窓の外を流れていく景色を眺める。だんだん、高い建物が減って、緑が増えていく。

 ――上京してから、この新幹線に乗る時。「蒼真に会いに帰る」のは初めて。
 いつもは、蒼真に会わないように、してたもんね……。
 社会人になってからは、蒼真も家を出たから、避けなくても会わなくなったけど。

 今日は、同窓会もあるし、実家にも帰るし、他の友達にも会うけれど。
 一番の目的は――蒼真に、会うこと。

 愛梨さんのおかげで、三か月、折れずに、頑張れた。
 遥香が、いろいろ、支えてくれた。
 今日は、愛梨さんと桜木さんのおかげで、帰れた。
 いろいろ皆に助けてもらって、ここにいる。

 あとは、私が自分で頑張るだけ。

 そうは思うのだけど。
 ――なんだかもう、緊張してきた。

 蒼真って今、ほんと、どんな感じなんだろう。
 ……遥香に少しは聞いとけばよかったな。

 ――彼女とか。いるのかな。
 ……って、居る、と思っておこう。そしたら傷が浅くて済むかもしれない。

 傷って……私は、決着をつけて終わりにするために行くのに、傷が浅くて済むとか。
 振られるつもりなのかな、私。

 ドキドキする。
 そういえば、何をどう話すか、決めてないや。

 なんとなく話したいことは、ぼんやりとたくさんあるんだけど。
 どの順番で話したらいいんだろう。
 

「――」

 ちゃんと入れたよね、と心配になって、鞄をあけて、ボールペンの紙袋を取り出した。
 よかった、つぶれてなかった。

 渡せますように。
 蒼真と、話せますように。

 ……違う違う。

 祈らない。

 渡す。話す。
 頑張ろう。







◇ ◇ ◇ ◇


いろいろありまして(近々書きます)
書けてなくてすみません(´;ω;`)ウゥゥ

完結……したい( ノД`)。
話は出来てるのであとは打ち込むだけなので
……どうだろ。

いろいろなお返事も出来てなくてすみません( ノД`)
ほんとに。ほんとに、ありがとうございます(´;ω;`)ウゥゥ
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-

設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt 夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや 出張に行くようになって……あまりいい気はしないから やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀ 気にし過ぎだと一笑に伏された。 それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない 言わんこっちゃないという結果になっていて 私は逃走したよ……。 あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン? ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 初回公開日時 2019.01.25 22:29 初回完結日時 2019.08.16 21:21 再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結 ❦イラストは有償画像になります。 2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。 しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。 そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

処理中です...