28 / 36
第27話 心の準備
しおりを挟む新幹線はトンネルの中に入った。
急に窓の外が真っ暗になって、窓に自分の姿が鏡みたいに映った。
なんだか緊張した顔をしてる。
両頬を手で挟んで、ぎゅーと目をつぶる。頬を軽く叩いて、気合を入れる。
三か月前に比べたら、引き締まったとは思う。姿勢も良くなった。
姿勢って大事だよね。デスクワークも多いから、どうしても前かがみになっちゃってたけど。
そこらへんは、筋トレやストレッチも有効だった。
……とりあえず、良かった、頑張って。
今まで生きてきた中で、いちばん、まっすぐ綺麗に立てる気がする。
ドキドキする。
七年も、逃げて、会わなかったのに。
いまさらこんなにドキドキしてるなんておかしいな。
私がこんなに蒼真のことでドキドキしてるなんて、
絶対蒼真は知らない。考えもしてないし。
逃げて会わなかったことも、蒼真は気にしてもいないかも。
幼馴染が大人になってく途中で離れたってだけ。特に男女の幼なじみだし。普通のことだもんね。
私が勢いつけて話しに行っても、蒼真的には、どうした? ってなる可能性も普通にあるかも。
……でも、もう逃げないって決めたんだから。
とりあえず、蒼真と二人で話せるように頑張ろう。
同窓会の間は、二人は無理な気がするから……終わった後、どうにか誘わないとなぁ……。
新幹線が速度を落とし始める。
アナウンスが流れる。よかった、予定通りの到着。
蒼真と、同じ街に戻ってきた。そう思うだけで、そわそわして落ち着かない。
……うわわ。まずい。ほんとにドキドキしてきちゃった。
新幹線を下りて、乗り換えた電車のドアの端に立ち、流れていく外の景色を眺める。
……そういえば今回って、学年全部とかでなくて、中学の三年の一クラスだけなのに、ホテルでちゃんとするんだなぁ。
中学に近い地元の飲み屋で、とかありそうなのに。
昔から結構地元で有名なホテルで、結婚式とかをするホテル。
遥香がここで結婚式したから、決まったのかもしれない。
私もいつかここで……と思ってたけど、まだまだ道のりは、遠そうだから。
こんな機会で、また中に入れるの嬉しいな。
まだ高校の同窓会もないし、同窓会自体、出るのは初めて。
卒業以来の人たちも結構いるから……ほんと男子なんて分かんないかも。
女子は結構覚えてるけど、メイクで分かんなかったりするかな。
……名前、覚えてるかも不安になってきた。
そうだ、昨日実家に帰れたら、卒業アルバム見ておこうと思ってたのに。
……まあ、笑顔で乗り切ろう。
うん。今日のミッションは、蒼真と話すことだし。
んん。ちょっとまって、さすがに、蒼真のことは、分かるよね、私。
全然分かんない感じに変わっちゃってる可能性も……無いこともない、のか。
もし会っても、誰?っていうくらい変わってて、結局話もしないで帰ったら。
愛梨さんには爆笑されそうな気がする……。
いや。そんなはずない。大丈夫。
……って何が大丈夫? と自分に突っ込みながら、降りる駅名がアナウンスされたのを聞いた。
とにかく頑張ろ、と何回目だろうという気合を入れて電車を降りて、エスカレーターで上る。
ボストンバッグを腕にかけなおして、改札を出た。
南口を出て、左。看板を見つけて、歩きだそうとしたその時。
視界の端に、流れから外れて、ひとりだけ立ち止まっている影があった。
ふ、と何気なく視線を向けた。
その瞬間、周りの音が、消えた。
この場所だけ空気が止まっているみたいだった。
え。――うそ。
足が止まる。
その人は私に気づいて、歩き出した。
近づいてくる。
「彩葉」
呼ばれて胸が跳ねた。体が、勝手に震えて、固まった。
一瞬で、分かった。
昔のままの、呼び方。
忘れたくても忘れられなかった、声。
――蒼真だ。
待って。
心の準備、まだ――。
逃げたい気持ちになりながらも、足がすくんで動けない。
192
あなたにおすすめの小説
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。
しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。
そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる