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第五章
11.拍子抜けとか*真奈
ベッドに入って、しばらくぐっすり、眠っていた。
瑛貴さんが来たのも、知らない。
不意に、目が覚めた。
ぱっちり、突然。
何で起きたんだろう、と思ったけど、少しして水音が聞こえてきたから、多分、俊輔が洗面所に行く音で目が覚めたのかな。少し眠りが浅くなっていたのかも。
――話し声は何も聞こえないから、瑛貴さんは部屋に帰ったのかな。
しばらくして、俊輔が部屋に入ってきた。分かったけど、寝たふりを続ける。起きてしまったら、どんな顔をしたらいいか、分からないから。
ベッドが軋む音がした。腰かけたのが分かる。
少しして、ふわ、と髪の毛に触れられた。ビクつきそうになったけど、どうやらバレずに済んだみたい。
嘘みたいに、優しい触れ方。
――触れてるかどうかも怪しいみたいな。
本当に、薄い外側一枚にだけ触れてるみたいな、そんな感じ。
胸、ドキドキしてる。聞こえないかな、ドキドキ……。
まぶた、ぴくぴくしてないかな。暗いから大丈夫かな。
――――このまま。
組み敷かれて、抱かれたり……するかな。
――――キスは、嫌じゃないって、受け入れた。
キスしてたら止められなくなりそうって、俊輔は言ってた。止められなかったら、どうするのって聞きかけて、途中になってるけど。
俊輔は、オレとまだ、そういうこと、したいのかな。そこは、話せなかったし、よく分からない。
大事にしたいって言ってくれて……抱くためじゃないって、言ってくれて。
オレは、ただ、一緒に居ればいいのかな。
どう接していいか分からなかったのは、オレも俊輔も同じみたいだった。
――オレのこと、大事に、しようと思ってくれてるのも、今は、分かる。
というか――。
こんな、触れてるかも微かにしか分からないような、触れ方。
大事に、してなかったら、しないと思う。
なんだか、きゅ、と胸が締め付けられた瞬間。
俊輔の手は離れた。
ぎし、と小さくベッドが軋み、俊輔は隣に寝転がった。
あ、よかった。
……バレなかった。もうここまで来たらそのまま寝るしかない。
オレはもはや顔の筋肉を動かさないことだけ集中。……できてるかよく分かんないけど。
そしたら、今度は、頬に触れられた。
すり、と、また薄く表面をなぞるみたいに触れてくる。
――抱き寄せられて、キスされて、俊輔を受け入れること。
もうずっと、当たり前みたいに、続いてきたこと。
しばらくされてないけど、触れられたらすぐ、受け入れられる気がする。
する、かな。今日。
ドキドキ、していると。ぐい、と引かれて、ドキドキが最高潮に達した次の瞬間。その腕の中に、抱え込まれた。
そっと、優しく。ただ、抱き締めるだけ。
――――えっと……。
オレの気持ちは。
拍子抜け。
とか、いう奴ではないだろうか。
髪を撫でられて、頬を撫でられて。抱き締められて。
なんか、めちゃくちゃ大事そうにしてくれてるのは分かるのだけれど。
―――抱かれないのかぁ。
なんて。思っちゃったよ……。
むしろ、オレが拒絶されてる感じがするかも。
なんて意味が分からない。
少しすると、お酒が入ってるからかな。だんだん呼吸が浅くなってきて。
俊輔はすう、と寝息を立て始めた。ふ。と。顔が緩む。
最初はあんな怖くてさ。毎日、ほんと怖くて。めちゃくちゃされてさ。
あの日、もう絶対無理だって、思ったのに。
あれから、もう人が変わったみたいに、優しくなって。
キスですら、聞いてくるし……キスが激しくなると、悪い、とか言うしさ。
こんなに優しく触れて、抱き締めて、すやすや寝ちゃうなんてさ。
もう、違う人みたい。俊輔。
――オレは、そっと、背中に腕をまわして。
ぴと、と手を張り付かせた。
俊輔が抱いてくれないなんて。
思っちゃったじゃん。もう。
意味分かんないし。もう。
くっついて、すり、と頬を寄せる。
俊輔の、穏やかな寝息。
なんか、胸が。きゅ、と締め付けられる。
広い部屋の広いベッドで、こんなにくっついて――――……。
よくわかんないよ、もう……。
そんな風に思いながらも。
オレは。
ふ、と何でか、口元が緩んで。
……そのまま、うとうとと、眠りについた。
(2025/10/15)
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