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第四章
9.「意味不明……」*真奈
しおりを挟む西条さんが出て行って、また三人になる。
アイスも食べおわってしまうと、なんだかオレは、手持ち無沙汰。
俊輔もだし。……聞いてないけど、絶対凌馬さんもアルファだと思う。
父さんが生きてて、アルファで驚いたけど、今までアルファって近くにいたこと無いんじゃないかな。
学校も普通の公立だったから居なかったし。大学には居たけど、近づきはしなかったし。
なんか、二人を見てると、「特権階級」という自分では使い慣れない言葉が、勝手に浮かぶ。
何で族なんかやってるのか知らないけど、凌馬さんも絶対お金持ちっぽいし。なんかもう。居るだけで雰囲気違うもんな……という感じなので。
どうしてこんなでっかいお屋敷の意味不明に広い部屋で、こんな二人と、オレは向かい合って座ってるんだか、まったく意味が分からないとしか、言えない。
なんでここに居るのかな、オレ。
俊輔だってそうなのに、凌馬さんまで揃っちゃって、さっきまで西条さんも居たし、もうほんとに……うーん……。
手持無沙汰に耐えられなくなって、オレンジを手にとって、必要以上にものすごくゆっくり少しずつ、皮を剥いて、ものすごくすこーしずつ食べてると、たまに凌馬さんが話しかけてくる。……俊輔はほとんど話しかけてはこない。
普段居るのは俊輔なんだし、普通は逆なんじゃ……と思いながら。普通ってなんだっけ……とか思いながら過ごしている内に、なんだか眠くなってきて。
「……」
不意に、ふわ、とあくびが出そうになって、なんとなく失礼かなと、口元を抑えたら、「真奈」と俊輔に、呼ばれた。
「?」
口元を抑えたまま、俊輔を見ると。
「オレンジ食べたら、寝ていいぞ」
「……」
――――あくび。したから?
「無理して起きててまた熱上がったら困るだろ。つか、上がってねえか?」
立ち上がった俊輔が、オレの額に触れるけど。
「――――」
ていうか、俊輔の手の方がよっぽど、熱い。それに気づいたみたいで、俊輔も、一瞬ちょっと困った顔をした。
……ほんとにちょっと酔ってるんだな……。そう思ったら、ふ、と笑ってしまう。
「笑うな」
「……あ、ごめん」
少しだけ笑んだまま、ちょっとだけ謝ったら。
俊輔が。また少しだけ、オレを見て笑った。
……口角がちょっと上がっただけ、な気もするけど。
「熱は、無いと思う、熱くないから」
「でも、もう寝てていいぞ? まだオレンジ食うのか?」
「ううん。もういい。……歯、磨いてくる」
立ち上がると、俊輔が今までオレの座っていた椅子の隣に腰かけて、凌馬さんと向かい合って座った。
「……つか、凌馬、今何も言うな」
「は?」
「ムカつくことしか言わなそうだからしゃべんな」
「はー? なんだよそれ」
後ろで、凌馬さんが可笑しそうに笑ってるのが聞こえる。
オレンジのまま歯磨きつけたらまずそう、と思ってぶくぶくうがいをしながら、鏡の中の自分を見る。
なんか鏡ちゃんと見るの久しぶり。
ちょっと痩せたかなあ。
とりあえず、ちゃんと食べないとだよね。
なんか今まで、目の前で強そうな二人を見てたから、比べてしまうとちょっとオレ細くて、自分でも大丈夫かな?と思ってしまう。
歯ブラシを口にくわえて磨き始める。
「…………」
凌馬さんと俊輔は、親友、て感じなんだろうな。
文句みたいな感じで言い合っても、なんか全然、関係が壊れる感じ、しないし。
言いたいこと言い合って。仲、良いんだろうなと分かる感じ。
……出会い方が普通で、年も同じだったら。
オレも、俊輔とあんな風に、友達として付き合えてたのかな?
…………つか、付き合いたいのか? オレ。
ふと頭に掠めた思いに、すぐに自分でも首を傾げた。
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