108 / 149
第四章
19.「俊輔の後輩」*真奈
食事の後、海を見ながら帰ってきて、凌馬さんが居るという店にやってきた。
バイクを下りてヘルメットを俊輔に返してから、連れられて店の中に入る。でっかい音で音楽がかかった喫茶店。
ドキドキしながら中に進むと、別に特攻服ばかりが居る訳ではなかった。よかったー。暴走族のたまり場なのかと……。
「中は普通のクラブだから」
俊輔がそう言ってたけど、ほんとにそんな感じ。でもオレ、クラブとやらもあんまり知らないから、どっちにしても、ドキドキはする。
「真奈、何か飲んでていいぞ。……宗!」
「あ、俊輔さん!」
カウンターで飲み物を作ってた「宗」と呼ばれた人が慌てて近づいてきた。すごく嬉しそうに。
「お疲れ様です! 来てくれたんですねー」
「ああ。凌馬は?」
「奥です。どうぞ」
「案内いいから」
案内しようとした彼に、「こいつに何か飲ませといて」そう言いながら俊輔はオレに視線を流した。
「あ、はい! 分かりました」
頷いた彼と目を合わせてから、俊輔は、奥の方に進んでいった。
「えーと……オレ、宗一ね。俊輔さんは宗って呼んでくれてるから……宗、でいーよ」
「宗さん、でいいですか?」
「オレ、俊輔さんの一個下なんだけど。年は?」
「あ、オレも」
「じゃあ、宗、でいいよ。ため口で全然」
「……うん。真奈、だよ」
この人にまた会うことがあるのかなぁと思いつつ名乗る。こっち来てとカウンターに誘われて、椅子に腰かけた。
「何飲みたい?」
「コーヒーとかあれば……」
「アイスで良い? ミルク入れる?」
「あ、うん。ありがとう」
頷くと、手際よくアイスオレを入れてくれて、オレの前に出してくれる。
「いただきます」
なんだかすごく見られてる気がして、なんだろ、と思いながら、冷たいアイスオレを喉に流し込んでいると。
「あのさぁ、お前ってさ」
「……?」
「しばらく前にさ、別のクラブに、乗り込んできたりしたことある?」
「……」
俊輔に会った日のことだろうか。そう思いながら、宗を見ていると。
「俊輔さんに、連れていかれたりした?」
これに頷いたらその後のことを聞かれたりするんだろうか。そう思ったら返事も不用意にできない……。
答えられずに困っていたんだけれど、否定をしなかったことで、宗は、肯定と受け取ったみたいだった。
「答えにくいならいいや。……でも、良かった、なんか無事で」
「……? どういう意味?」
思わずそう聞いてしまうと、宗は、ふ、と笑った。
「オレ、あん時俊輔さんと居たんだけど……実はすっげー気になっててさ。オレのものになるならとか、俊輔さんが超珍しいこと言って、しかも男。しかもお前、βだよな? 全然意味わかんなくて、何で? って思ってさ。その後、話一切聞かねーし。生きてるのかなってすげー気になってて」
「――――……」
「あ、違うよ? 俊輔さんがそういうヤバい人って意味じゃなくて……いやでも、ほんと全然意味わかんなかったから、気になってただけなんだけど」
あはは、と笑ってる宗に、苦笑が浮かぶ。
「あのすぐ後、凌馬さんの通達で、完全に薬からは手を引けってことになってさ。持ってても使っても売っても除名って。どうされようが文句言うなっていう一言付きだから、多分もう、やってる奴はいないと思うんだけど」
「……」
「でもあれ、あそこに凌馬さんは居なかったわけだから、多分俊輔さんの提案だと思うんだよね」
宗の言葉を聞きながら、ぼんやりと、そうなんだ、と思う。
じゃあもう、あの時のあいつらにも、秀人を追いかける理由はないのか。そうしてくれたって、ことなのかな。
そういえば、俊輔の部屋に行って少しして、秀人のことを聞いたら、もう追手が行くことはない、て、それだけ言われたっけ。
そういうこと、だったのか。
ていうか、そうしてくれたって、言ってくれたらいいのに。
言葉が全然足りないんだよ、俊輔。
むー、と眉を寄せて、俯いていると。
「真奈、俊輔さんと来たし……飲み物入れてやれ、とかまた珍しいこと言ってるし」
宗は、んー、と考えて、首をかしげてる。
「お前、ほんと謎。 あ! もいっこ聞きたいことあった」
「……??」
「集会来た? 少し前」
「…………」
「俊輔さんがお気に入りのバイクに初めて人乗せたんだけど、全然普通の知らね―奴だったって聞いてさ。……真奈?」
「……そう、かもだけど…………別にそんなすごい意味、ないと思うんだけど」
屋敷から一緒に出るし、オレがバイク乗れないから乗せただけな気がするし……。
「あー、全然分かってねえな。オレらが、絶対誰も乗せなかったバイクに人乗せる意味」
「……?」
「オレらにとって、バイクってかなり意味、あるからな」
「…………」
うーん……。
……でも俊輔もう族引退してずいぶん経ってるみたいだし、バイクにそんなに意味ないんじゃないだろうか。
「なあなあ、そんでさあ……お前って、今、俊輔さんと居るとか?」
なんて答えればいいんだろう。ほんとオレが勝手に答えていいんだろうか。
「なあなあ、どーなの? この話微妙過ぎて、誰とも話せねーし。オレ、このままじゃ気になって夜も眠れな……」
その時。ぽか、と軽く、宗の頭が小突かれた。
「いて。……あ、俊輔さん」
「尋問すんな」
軽く睨んでる俊輔と、苦笑いの凌馬さんが立っていた。
宗は焦ったみたいに、そんなつもりじゃ、と騒いでる。
……俊輔と凌馬さんの、可愛がってる後輩、てとこなのかな。
なんか色んな情報が見事に結びついてて、すごいな。とか。思ってしまう。
あなたにおすすめの小説
氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。
水凪しおん
BL
※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。
過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。
「君はもう、頑張らなくていい」
――それは、運命の番との出会い。
圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。
理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
おバカでビッチなオメガが、表向きスパダリイケメンだけど本当は腹黒執着ストーカーアルファにつかまって、あっという間にしまわれちゃう話
トオノ ホカゲ
BL
おバカでビッチなオメガ・藤森有は、ある日バイト先のカフェで超ハイスぺイケメンの男を見つける。その男・一ノ瀬海斗は弁護士で年収2000万(推定)、顔は超イケメンで高身長の細マッチョ、しかも紳士で優しいという完璧さ。有は無理を承知でアタックをかけるが、なぜだかするすると物事はうまく運び――?
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
過疎配信者の俺の声だけが大人気配信者を眠らせてあげれるらしい
スノウマン(ユッキー)
BL
過疎配信者の白石 透(しらいし とおる)のリスナーには、透の声でないと寝れないというリスナー、太陽が居た。彼の為に毎日配信してあげたいが、病弱な透には週一程度が限度だった。
だが、それすら叶わなくなる。両親が金と手間のかかる透の事を追い出すことにしたのだ。そんな時に手を差し伸べてくれたのが太陽で、一緒に暮らすことになる。だが彼の正体は大人気配信者で!?
【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>