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第五章
2.関係について
皆が居なくなってから、西条さんの淹れてくれたコーヒーを飲みながら、勉強していた。俊輔と関係を持ってた間は、夜中まで抱かれて、朝ぼんやり目覚めて、学校も行かなかったし、完全に勉強とかから離れてて――何もする気、起きなかったし。
久しぶりにちゃんと勉強してるんだよなぁ……。
良かった、大学、やめることにならなくて。どんなコネが知らないけど……怖いけど、まあ、良かった。
トントン、とノックの音。まだ昼までは少しある。
瑛貴さんかなと思いながら開けると、やっぱりそうだった。
「ケーキ、買ってきたよ」
「あ、西条さんの言ってたお店でですか?」
「そうそう。お昼前だけど、良かったら一緒に食べない?」
「あ、はい」
断るのも変だよね、と頷く。
「俊輔の部屋に行こうよ。お皿もあるし、お茶もいれるから」
はい、と、仕方なく、ついていく。
仕方なくというのは――どこまで話していいか、まだ迷うから。変なことを聞かれないなら、瑛貴さんは全然、苦手とかじゃないのだけど。
紅茶をいれて、ケーキを皿にのせてテーブルについた。
何の本を買ってきたのか、とか、最初はそんな話をしていた。あ、大丈夫でよかった、なんて思った時だった。
「ね、真奈くん」
「――はい?」
瑛貴さんに顔をむけると、なんだか、すごくまっすぐ見つめられる。どき、と揺れるのは――何かを見透かされそうな気がするから。
「これは――真面目に聞くから、よく考えて答えてほしいんだけど。違ったら、違う、でいいからね」
「はい……」
何だろう。フォークを皿に置いて膝の上に手を置いて、向かいの、整った顔を見つめていると。
「オレ、少し考えたんだよね。君がここにいる理由。親戚ではもちろんないし、友達でもなさそう。年も違うし――二人とも、なんか変に遠慮してて、いろいろぎこちないし。ここに泊る理由ってなんだろうなって」
「――……」
「西条さんが、君にいろいろ気を使ってるのは、俊輔がしてることのフォローなのかな、とか」
続けて話される言葉を噛みしめて聞きながら。
次の言葉がすごく怖いような。
「真奈くん、俊輔にここに無理矢理つれてこられたとか、ではない?」
びっくりして、え、と瑛貴さんを見つめ返した。そのまま数秒。返事が出来ない。
「その反応って、やっぱりそうなの?」
「――え、あ、いや……」
首を横に振る。オレをじっと見ていた瑛貴さんは、少し首を傾げた。
「あのさ、オレ、俊輔は従兄弟だし――別に警察に突き出そうとかじゃないんだけど。でも、もし本当にそうなら、君のことを、解放しなきゃ、とは思うんだよね」
「――あの……いえ……」
とっさに違うと言えないのは、確かに最初はそうだったような。でも、あれは、一応取引みたいな形で――でもその取引に、あんなことが入ってるなんて知らなかったから。無理矢理じゃないとも、なんか咄嗟に出ないけど。
でも。でもその後、オレは、凌馬さんのところから、俊輔のところに自分の意志で戻ってきた訳だから――だから、結局のところは。
何度も、首を横に振る。
「あの……オレ、自分で決めて、ここに居るので」
「本当に?」
「はい」
はっきり頷いて、答える。
「本当に、そうなら、いいんだけど」
「本当、です」
今は、違うから。……今は、とは言わない方がいいよね。
そう思いながら、瑛貴さんを見つめると。
「――違ってたらほんと、何言ってんだって話なんだけどさ。君がやってる課題もさ。この時期に、あんなに何種類も課題が出たりするかなあと、思って――……今日、外で何か考えてたら。大学時代に病欠してた友人が、そういえば単位を取るために、一時期頑張ってたのを思い出してさ。もしかして、無理やり、閉じ込められて学校に行けなかったのかなとか――気になってさ。あ、勘違い、しないで。オレは、君を責めたいとかじゃななくて、もしそうなら、解放したいだけだし」
「――……」
「俊輔は――ちょっと色々、難しいとこがあるし。αだってこともあるけど。思う通りにしたいって思いがちだし」
何だろうこの人。
何も言ってないし。俊輔も多分、何も話してないと思うのに。
鋭くて、怖い。
オレは、今、解放されたいとか――思ってない。
だって、ここに、自分で戻ってきたんだもん。
なぜか、じわ、と涙が浮かんできた。
……何で?
何でオレ、今、泣いて――。
無理矢理じゃない、今は。
オレは、俊輔と――居たいと、思ったから。
なのに、どうしてこんなに言葉にならないんだろう。
その時。
俊輔たちが、帰ってきた声がした。
咄嗟に、ほっとした自分。
その様子を見ていた瑛貴さんが、眉を顰めた。
◇ ◇ ◇ ◇
今後についてですが。
やっぱりこの二人は、
最初の無理矢理を克服しないとと思うので。
このままくっつけられません~!
ちょっと頑張ってもらいます(^^;
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