144 / 149
第五章
8.瑛貴と*俊輔
静かな夜。
真奈が寝室に入っていってから、オレは一人、窓から空を見上げた。
昼に真奈と話した後、和義を呼んで昼食を取った。その後、午後はずっと真奈は課題をやっていて、「大分進んで終わりが見えてきた」と夕食の時に嬉しそうに話していた。瑛貴も一緒だったが、昼の話なんて無かったかのように、普通の会話だけだった。
「もうバレてるんだから、わざわざ別の部屋で寝なくてもいいよ」なんてふざけたことを言ってる瑛貴に、和義も悪乗りして、結局今夜から真奈はオレの部屋で寝ることになった。
少しため息をついた時、ドアが静かにノックされて、そっと開かれた。顔をのぞかせた瑛貴と、目が合う。
「――もう寝た?」
「ああ」
頷くと、瑛貴が入ってきて、ソファに腰かけた。オレもその前のソファに腰かけたタイミングでまたドアが開き、和義が酒やつまみを持って入ってきた。ある程度並べ終えると、和義は出て行った。
しばらく、酒やつまみの話をしていたけれど、ふ、と瑛貴が笑う。
「――俊輔の好みがあんな感じとはね」
「……別に好み、とは言ってねえだろ」
素直に認めるのもムカついてそう言うと、瑛貴は、ちらっとオレを見て、ははっと笑った。
「面白いな……?」
「面白くはない」
「……面白いよ。俊輔が、そんな必死な感じになるとかさ」
「――オレ、必死?」
「必死だろ」
クスクス笑う瑛貴に答えず、酒を喉に、流し込む。
「つか、俊輔、男ありだった?」
「――いや。無しだった」
「だよな? Ωでも、男は無しだったよな?」
「……ああ」
頷くと、ますます面白そうな顔で瑛貴がオレを見つめてくる。
「しかも、βの男とか――最初から、ん? とは思ってたんだけど、無いよなっても思ったから、なかなか事情が飲み込めなかった」
「――――」
ため息しか出てこない。
絶対面白がってめんどくせーから隠したかったんだよな……。
そんな風に思っているオレに、瑛貴は、意味ありげな視線を向けてくる。
「それで――何が、よかったんだ?」
「何がって?」
「体――とかじゃないよな、真奈くんは男なんだしさ」
ため息をつきつつグラスをテーブルに置いて、オレはソファの背もたれに寄りかかった。
「体も良かったよ――体っつーか……反応とか」
「へえ。可愛いんだ、反応」
「……まあ最初は、無理やりだったから、可愛いも何も無かったけど」
「――お前、マジでやめろよな、それ。犯罪だからな」
きつくなった視線に、オレはため息をついた。
「一応、会った時……全部捨てて、オレのものになれ、とは言った」
「……は?」
「で、真奈は一応、頷きはした――まあ、βだし、抱かれるとかは、絶対思ってなかったと思う……」
「……なんな訳、それ」
瑛貴が眉を思い切り寄せて、低い声を出しているので、仕方なく、会った時の経緯から、凌馬のところから連れ帰ってくるまでのことを話すと、瑛貴は、大きなため息をわざとらしくついて、前髪をかき上げた。
「ギリギリ犯罪なんじゃねえの?」
「……まあ。そうかもな」
「あー最悪。αの権力持ちとか、ほんと迷惑」
「……似たようなもんじゃんか」
「オレはそういう力の使い方はしてないし」
またため息。
「……よくそれで、戻ってきたよな、真奈くん」
「まあ……確かに……」
「……それで俊輔と真奈くんの空気は、微妙な訳ね。まだ手探りか」
ふ、と苦笑して、瑛貴はオレを見つめた。
「それにしても、梨花、な――あいつの俊輔狙いは、前からだからな……とんだ災難だなぁ、真奈くん……」
「……まあ。そう、だな」
「かわいそ。オレは、優しくしてあげよう」
「……触んなよ」
瑛貴のふざけた感じのセリフに、咄嗟にそう答えた瞬間。
目の前で瑛貴が、ぴしっと、音を立てるかのように固まった。
「――――……は?」
数秒後、漏れてきたのは一言だけ。
……あー、まじで、めんどくせえ。思った瞬間。
「なになに、俊輔。なに、妬くの? 俊輔に、ヤキモチとかいう感情、あったの? うわ、ほんとに驚いたな……」
いつもおそらく、冷静沈着に授業こなしてるんだろう、この従兄弟は。
たまにハマると、こんな風になって、うざく絡んでくる。
マジで余計なこと、言った……。
楽しそうな顔から、視線を逸らして、背もたれに更に埋まった。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
Ωの庭園
にん
BL
森 悠人(もり ゆうと)二十三歳。
第二性は、Ω(オメガ)。
施設の前に捨てられ、
孤独と共に生きてきた青年。
十八歳から、
Ω専用の風俗で働くしか、
生きる道はなかった。
それでも悠人は、
心の中にひとつの場所を思い描いている。
誰にも傷つけられない、
静かな庭園を。
これは、
そんな青年の物語。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。