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128.だだっこの?
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朝。朝食を作ってる横で、瑛士さんがコーヒーを淹れてくれてるんだけど。なにやらじーっと視線が飛んできている。
フライパンから、瑛士さんに視線を向けると。
「凛太、ほんとにもう学校行くの? 今日まで休んだら?」
「瑛士さん、さっきから同じこと言ってますね……」
「だってさ、まだ三日目じゃん。いつも三日は休むんでしょ? 休もうよ、オレも今日までは行かないって言ってあるし」
「でも」
「休もうよ。オレが寂しいし」
なんだか喋り方がだだっこのようになっている。
オレはちょっと笑ってしまいながら、焼いていた卵焼きをまな板にのせた。綺麗に切り分けてお皿に乗せる。
「だってもう落ち着いたみたいなんですよね……学校、行きたいですし」
「それはそうだろうけどさ」
だだっこ瑛士さん。
これ、他の人の前ですること、あるのだろうか。ちょっと笑ってしまうのだけれど。
水族館から帰ってヒート。あれはもう夜だったから、翌日が一日目としてその日に楠木さんと有村さんが来た。そして、あの話をした。で、昨日が二日目。今日が三日目。確かにいつもは三日くらいはひきこもっていたんだけど。
昨日の午前中くらいから、もう全然平気になってるんだよなあ、オレ。
「収まるの、早くない? オレ、もっと可愛がりたかったのに」
「……」
朝から何を言うんだ。
恥ずかしいなもう。
ていうか、もう十分可愛がってもらったし。多分、オレの体、もう十分だって思ったんだと思うんだよね。
――とは言えない。
「でも、昨日の午後からはもう全然普通で……瑛士さん、今、オレの匂いしますか?」
「凛太はいっつもいい匂いだよ」
「――」
オレは思わず眉を顰めて、瑛士さんを見つめてしまった。
本当に何を言ってるんだろうこの人は。
すると瑛士さんは口元を押さえながら、ふっと横を向いて、クックッと笑いながら言った。
「そんな顔しないでよ……うん、まあ。凛太はいつも可愛くていい匂いだけど、フェロモンは今は感じないよ」
「……フェロモンじゃなくて、いい匂いって、なんですか?」
「え、普通に。いい匂い」
……普通に、いい匂い。
分からない。
「あ、オレ、ごはんよそりますね」
「オレがよそるよ。魚、そろそろ焼けるでしょ」
「あ、はい」
そうだった。グリルを開くとちょうどいい感じだった。もう瑛士さんのよく分からない発言のせいで鮭が焦げちゃうとこだった。
瑛士さんと話した後から。ていうか、その前からかもしれないけど、瑛士さんは、とにかくめちゃくちゃ優しい。
お砂糖、ぶっかけられてるんじゃないかなってくらい、甘い甘い雰囲気で、オレの側に居てくれた。
ずーっと近くに居て。
何回か、ヒート起こして、その度に死ぬほど甘くて。
――オレは、心にずっとあった迷いが少し吹っ切れたみたいで。
契約なのにいいのかなっていうのが、確実に減ったからなのか。
瑛士さんに甘やかされるのを受け入れたみたいで。
すごく。
幸せだなって、思ってた。
もちろん。瑛士さんみたいな人が、ずっとオレを好きな訳あるかしら。というところには、だいぶ疑問はあるから、ある程度は線を引いてるところもある。その方がいいとも思ってる。
瑛士さんに良い人が出来たら、ちゃんと諦めて祝福しようっていう気持ちは、ちゃんと持っておきたい。――それは瑛士さんには言ってないけど。
だってなぁ……。
「いただきます」
手を合わせて一緒に食べ始めたけど、ふと、向かいに座る、とても綺麗な人を見つめてしまった。朝の光の中で見ると、もう、ほんとに綺麗。
食べてる手も、口も、髪の毛も、瞳も綺麗だし。
男らしい肩とか腕とか、その形が全部、綺麗。
なので、何でこんな人が、オレと結婚してもいいなんて言うのかが謎なところは、変わっていない。
瑛士さんのことは、大好き。
大人で、なんでも出来て、人を助けたりもしてて、穏やかで、でもたまにちょっと
可愛くて。
疲れてるのに頑張って。疲れてても、優しくて。
瑛士さんの触れ方、ひとつひとつも。
その優しいのが全部、伝わってくるみたいな感じ。
今まで瑛士さんと関係してきた人達は、瑛士さんと別れて、よかったんだろうか。よく別れられたよなぁ。
瑛士さんは、オレのことを抱かない、最後の線は越えないって言ってた。
抱いて、その気にさせることは出来ちゃう、とか。結構すごいこと言ってたけど。でも、こんな人に抱かれてたら。絶対好きになっちゃうよね。とは思う。
フェロモンが無くたって、瑛士さんはヤバいと思うので。しかもアルファとオメガという性だと余計。
なので、しない、という選択は、オレの意思を尊重してくれようとしてるってことも、ちゃんと分かる。
そういえば、瑛士さん、お互い割り切った人たちとしか、最近は会ってないとか言ってたなあ。
割り切れるものなのかな。そういうのって。
うーん。……大人の関係。全然分からないな。
「おいしい」
みそ汁を飲んだ瑛士さんが、ふと息をついて微笑む。
――ほんと、箸を持つ指先まで綺麗な人だなぁ。なんて思ってしまう。
「よかったです」
いつもおいしいって言ってくれるとこも。ほんと好き。
嬉しくなって、そう返すと、瑛士さんが微笑んで、それから、また思い出したように。
「今日くらい休んだら……」
また言いだした。
「いえ。瑛士さんもきっと会社に行った方がいいですよ、絶対、楠さん、待ってますよ」
「――それは、そう……」
はー、とため息をついてる瑛士さんに、クスクス笑ってしまう。
(2025/9/21)
フライパンから、瑛士さんに視線を向けると。
「凛太、ほんとにもう学校行くの? 今日まで休んだら?」
「瑛士さん、さっきから同じこと言ってますね……」
「だってさ、まだ三日目じゃん。いつも三日は休むんでしょ? 休もうよ、オレも今日までは行かないって言ってあるし」
「でも」
「休もうよ。オレが寂しいし」
なんだか喋り方がだだっこのようになっている。
オレはちょっと笑ってしまいながら、焼いていた卵焼きをまな板にのせた。綺麗に切り分けてお皿に乗せる。
「だってもう落ち着いたみたいなんですよね……学校、行きたいですし」
「それはそうだろうけどさ」
だだっこ瑛士さん。
これ、他の人の前ですること、あるのだろうか。ちょっと笑ってしまうのだけれど。
水族館から帰ってヒート。あれはもう夜だったから、翌日が一日目としてその日に楠木さんと有村さんが来た。そして、あの話をした。で、昨日が二日目。今日が三日目。確かにいつもは三日くらいはひきこもっていたんだけど。
昨日の午前中くらいから、もう全然平気になってるんだよなあ、オレ。
「収まるの、早くない? オレ、もっと可愛がりたかったのに」
「……」
朝から何を言うんだ。
恥ずかしいなもう。
ていうか、もう十分可愛がってもらったし。多分、オレの体、もう十分だって思ったんだと思うんだよね。
――とは言えない。
「でも、昨日の午後からはもう全然普通で……瑛士さん、今、オレの匂いしますか?」
「凛太はいっつもいい匂いだよ」
「――」
オレは思わず眉を顰めて、瑛士さんを見つめてしまった。
本当に何を言ってるんだろうこの人は。
すると瑛士さんは口元を押さえながら、ふっと横を向いて、クックッと笑いながら言った。
「そんな顔しないでよ……うん、まあ。凛太はいつも可愛くていい匂いだけど、フェロモンは今は感じないよ」
「……フェロモンじゃなくて、いい匂いって、なんですか?」
「え、普通に。いい匂い」
……普通に、いい匂い。
分からない。
「あ、オレ、ごはんよそりますね」
「オレがよそるよ。魚、そろそろ焼けるでしょ」
「あ、はい」
そうだった。グリルを開くとちょうどいい感じだった。もう瑛士さんのよく分からない発言のせいで鮭が焦げちゃうとこだった。
瑛士さんと話した後から。ていうか、その前からかもしれないけど、瑛士さんは、とにかくめちゃくちゃ優しい。
お砂糖、ぶっかけられてるんじゃないかなってくらい、甘い甘い雰囲気で、オレの側に居てくれた。
ずーっと近くに居て。
何回か、ヒート起こして、その度に死ぬほど甘くて。
――オレは、心にずっとあった迷いが少し吹っ切れたみたいで。
契約なのにいいのかなっていうのが、確実に減ったからなのか。
瑛士さんに甘やかされるのを受け入れたみたいで。
すごく。
幸せだなって、思ってた。
もちろん。瑛士さんみたいな人が、ずっとオレを好きな訳あるかしら。というところには、だいぶ疑問はあるから、ある程度は線を引いてるところもある。その方がいいとも思ってる。
瑛士さんに良い人が出来たら、ちゃんと諦めて祝福しようっていう気持ちは、ちゃんと持っておきたい。――それは瑛士さんには言ってないけど。
だってなぁ……。
「いただきます」
手を合わせて一緒に食べ始めたけど、ふと、向かいに座る、とても綺麗な人を見つめてしまった。朝の光の中で見ると、もう、ほんとに綺麗。
食べてる手も、口も、髪の毛も、瞳も綺麗だし。
男らしい肩とか腕とか、その形が全部、綺麗。
なので、何でこんな人が、オレと結婚してもいいなんて言うのかが謎なところは、変わっていない。
瑛士さんのことは、大好き。
大人で、なんでも出来て、人を助けたりもしてて、穏やかで、でもたまにちょっと
可愛くて。
疲れてるのに頑張って。疲れてても、優しくて。
瑛士さんの触れ方、ひとつひとつも。
その優しいのが全部、伝わってくるみたいな感じ。
今まで瑛士さんと関係してきた人達は、瑛士さんと別れて、よかったんだろうか。よく別れられたよなぁ。
瑛士さんは、オレのことを抱かない、最後の線は越えないって言ってた。
抱いて、その気にさせることは出来ちゃう、とか。結構すごいこと言ってたけど。でも、こんな人に抱かれてたら。絶対好きになっちゃうよね。とは思う。
フェロモンが無くたって、瑛士さんはヤバいと思うので。しかもアルファとオメガという性だと余計。
なので、しない、という選択は、オレの意思を尊重してくれようとしてるってことも、ちゃんと分かる。
そういえば、瑛士さん、お互い割り切った人たちとしか、最近は会ってないとか言ってたなあ。
割り切れるものなのかな。そういうのって。
うーん。……大人の関係。全然分からないな。
「おいしい」
みそ汁を飲んだ瑛士さんが、ふと息をついて微笑む。
――ほんと、箸を持つ指先まで綺麗な人だなぁ。なんて思ってしまう。
「よかったです」
いつもおいしいって言ってくれるとこも。ほんと好き。
嬉しくなって、そう返すと、瑛士さんが微笑んで、それから、また思い出したように。
「今日くらい休んだら……」
また言いだした。
「いえ。瑛士さんもきっと会社に行った方がいいですよ、絶対、楠さん、待ってますよ」
「――それは、そう……」
はー、とため息をついてる瑛士さんに、クスクス笑ってしまう。
(2025/9/21)
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