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32.お姫様だっこ
しおりを挟む「それから、どうしたんですか?」
「んー。それで……もちろん、こっそり竜くんから凛太を受け取るっていう選択肢もあったんだけど――その時、オシャレしてきてくださいっていう、竜くんの意図が分かった気がして」
「……?」
「多分、凛太の相手が良いαだってことに、したかったんでしょ、竜くんは」
「――」
なるほど……。
「まあ、オレ、容姿とαっぽさには自信あるし」
「……?」
「何か反対意見、ある?」
「瑛士さんはαっぽくはないですよ? すごそうなオーラはありますけど」
「……凛太にとってのαっぽいっていうのが気になるけど、まあ今はいいや。とにかく、オレを見て、ピンキリのキリのαだなんて言う奴は居ないでしょ? そう思って、見せつけて帰ってきた」
「――えと……具体的には……?」
「んーと……そうだな、ドアを開けて、すみません、と少し大きく言って、注目を浴びた」
「……まあ浴びますよね」
なんかヤバい人が来たって、絶対ざわついただろうな。
「凛太が寝てるのはもう見えてて、その横に居る、なんか面白そうな顔してる子が竜くんだろうなと思って――その奥の、おじさん二人は教授か、と……いろいろ見えてたんだけど、気づかない振りして、凛太居ますか、って聞いて」
「……」
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「竜くんが、ここに居ますって教えてくれたから、オレは、敢えて中を通って、凛太のとこまで歩いて、敢えて聞こえるような声で、めちゃくちゃ優しく凛太に話しかけて――起きなかったから、とりあえず、隣に居る子に、竜くんかな? て聞いたら、そうです、て頷くから、奥の人たちが教授かを聞いて――で、挨拶してきたよ。三上凛太と婚約中の北條瑛士ですって。式に出るからって言われたからよろしくお願いしますって伝えてから、凛太を抱き上げて――ちょっと挨拶して、連れて帰ってきた」
「抱き上げてって……?」
「お姫様抱っこ」
ふ、と笑う瑛士さん。ううう。恥ずかしすぎるのでは、オレ。……来週学校行っても、授業以外誰にも会わないように過ごせるように、頑張ろう。
心に誓っているオレに、瑛士さんは、ふふ、と微笑んだ。
「α同士ってさ――ランクが分かるんだよ。大体ね。オレが高いのは、ほぼ全員のαが分かったと思う――だからもう、君の結婚について、何か言ったり、あんな風に馬鹿にしてくることないと思うよ」
「――はぁ……」
そう、なのかな?
そんなちょっとの時間の、それだけで、そんな嬉しい感じになるかなあ……?
とは思ったのだけれど。
「ありがとうございます」
「ん?」
「……瑛士さんが、オレのために、なんか……色々考えて、動いてくれたの、嬉しいです」
「当たり前でしょ。オレのお願いが元なんだし。それで凛太が、やりづらくなることは、許容できない。良かったよ昨日、行けて。竜くんに感謝だね」
「そうですね。いつも、竜は、助けてくれるので。αの中で一番仲良しです」
そう言うと、そうなんだ、と瑛士さんは頷いた。
「――もしかして、本当のこと話したい友達って」
「あ、そう。竜です」
「――αだったんだね。そっか。てことは、Ωだったことも話してたの?」
「なんか、よく分かんないけど、竜には、オレのヒートの後の匂いが、バレちゃって……普段は、なんにも感じないみたいなんですけど。なんですかね? ヒートの時ですら、多分、誰もフェロモンを感じないって医者には言われてるんですけど……」
黙って聞いていた、瑛士さんは、ふぅん、と頷いて、少し考えてる。
なんか視線を落とすと、まつげが長いのがすごく見えて、すごく綺麗。
世にはこんなに綺麗な人がいるんだなあと。瑛士さんに会ってから何度思ったかな。
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