【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
129 / 856
◇そばに居る意味

「ほわほわな気分」*優月

しおりを挟む


「優月には最初から優しいんでしょ?」
「んー……優しいけど、比べてないし……」

「まあ確かに、比べようないか。いやでもね、事実としてさ。 毎日同じ奴と会って、泊めてあげて一緒に朝起きて、1限無いのについてきてあげて、それだけでも、おかしいから。泊めてあげるってだけでも、今まで聞いた事無いからね。もう颯也なんか、玲央が誰だか分かんないとか言っちゃってるし」

 あははははー、と楽しそうに笑ってから。
 勇紀は、オレを見つめてくる。

「……セフレいっぱいとかさ。優月にとったら意味分かんない奴なんだろうけど……今、大分面白い方向に変わってきてるから。――――……玲央と居てあげてほしいなー。もちろん、優月が嫌じゃなければ、だけどさ」

「――――……嫌なら、最初から居ないから」
 
 そう言ったら、勇紀は、そっか、とにっこり笑った。


「あ、優月、今日練習見に来る?」
「お昼は会うけど…その後は分かんない」

「ん……って、さっきまで一緒なのに、昼も会うの?」
「カフェに連れて行きたいって言ってくれたから」

 びっくりしたような顔の勇紀は、遂にはため息で、ふー、と顔を横に振り出した。

「もう普通の男ならまだしもさ。玲央がそんなに誰かにべったりってさ……もう……中身が宇宙人になっちゃってるかもとか思うレベル……」
「……宇宙人て……」

 苦笑いを浮かべていたら。
 勇紀がふ、と、校舎の時計を見上げて。

「あ。授業行かなくちゃだよな。またなー、優月」
「うん、またね」

  何やら、ものすごい情報を、ばばーーーっと好きに話して、
 消えて行った勇紀の後ろ姿を見送りつつ。

 ゆっくり歩き出した。

 ……んーと。
 ――――……そうだなー……。

 ……打ち上げ、そっか。
 玲央と関係ある、玲央の事を大好きな人達がいっぱい居るのか……。 

 まあ。考えてみれば、そっか。

 んー。……ますます行きにくいけど。
 でも、もし蒼くんが平気なら、一緒にちらっと覗いて帰るだけでもいいかな。

 ほんとは、お客さんが居る前で、本番で歌ってる玲央を、すっごいすっごい見たいけど。絶対カッコいいよね。見たいなあ。

 端に立ち止まってスマホを取り出して、蒼くんの画面を開く。

「おはよ、蒼くん。明日の受付の事で話があるので、電話が大丈夫な時間を教えてください」と入れて、お願いしますスタンプを追加。

 ほんとは早く帰れて、歌ってる玲央を見れるのが一番嬉しいんだけど。でもお金もらう以上、お仕事だし。駄目だったら諦めよ。


 ……なんか。
 勇紀の話を聞いてたら。

 オレと居てくれる玲央は、色々すごく珍しいのかなと思って。
 ――――……ちょっと、嬉しくなってしまった。

 ……オレが、めちゃくちゃ好きになってる分の、少しでも。
 玲央もオレの事、好きになってくれてたら。

 ……嬉しいな、なんて、思ったり。
 でも、あんまりそんな事、思いすぎない方がいいかな。

 期待しすぎも良くないし。うん。


 でも、なんか、ますます、玲央に会いたくなっちゃった。
 お昼まで、2コマか。長いなぁ。早く、会いたい。


 ……でもでも。
 なんかここ1週間、まともに勉強できてなかったし。そろそろほんとにマズイ気がする。


 頭の中は、相変わらず玲央でいっぱいなのだけれど。
 切り替えて勉強しようと気合を入れた瞬間、手に持ってたスマホが震える。


 蒼くんから返事かなと思ったら、玲央からのメッセージで。


『優月、眠くないか?大丈夫?』

 見た瞬間。
 ――――……ほわ。と、気分が上がる。


「大丈夫。1限頑張ってくるね」

 そう、返事をしたら。


『ん。頑張れ。2限終わったら早く来いよな? オレもすぐ行くから』
「うん。走ってく」
『走んなくていいから』

「うん」の後に、笑ってる顔文字を入れて。
 いってきます、というスタンプを入れた。



 ……もう、やばい位、ほわほわな気分。で。


 ……ダメだこれ。
 

 さっきせっかく気合入れたのに。
 一瞬で崩れたし……。


 
 玲央と別れた時は、かなり時間に余裕があったはずなのに、教室にたどりついた時はギリギリで。
 もうほとんど揃ってる皆の端っこに、急いで座った。

  
 


しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

処理中です...