430 / 863
◇「周知」
「きゅんとする」*優月
しおりを挟む荷物を詰め込む時間より、違う所で、何だかとっても時間がかかった気がするけど。何とか詰め込み終わった。
「忘れてたら取りに来ればいいし。とりあえず学校の物、忘れてなければどうにかなると思うけど。もう平気か?」
「うん。ありがと」
鞄のファスナーをじー、と閉めながら、玲央を見上げる。
「じゃ行くか」
「うん」
頷いた所で、鞄を玲央がひょい、と持ってしまった。
「玲央、オレ自分で持てるよ」
「うん。まあ。――――……いいよ、別に」
でも持つもの一個しかないし……。と思ってると。玲央の手が、オレの頭に掛かって、引き寄せられた。
「なんかまだぼーー、とした顔してるし」
クス、と笑って、オレを斜めに見つめる。
「……してる?」
「してる」
クスクス笑って、クシャクシャと、オレの頭を撫でてくる。
――――……確かにオレまだ。ずーっと、ぼーー、としてる。
なんか。さっき気持ち良かったまま。ぼーー、と熱くて。
「オレのせいだろ」
「――――……」
「だから持ってやるって言ってンの」
ふ、と笑う玲央の瞳が、ドキドキしてしまう位、優しいので。
もう素直に、ありがとう、と言ってみると。
「ん」
と、満足げな玲央。
「……優しい、玲央」
「――――……まあ……つか。我慢できずに触ったのオレだしな」
「それでも、優しいよ」
言うと、玲央は、ちょっとだけ、照れたみたいな顔で、苦笑い。
「まっすぐ、優しいとか言われると――――……照れる」
……照れるとか、玲央に言われると。
オレの方が、照れるし。
なんか。胸の奥の方が、きゅんとする。
きゅんとするって。
ほんとにきゅんとするんだよね。
不思議。
……どこがそんな音、立てるんだろ。
そんな、よく分からない事を考えながら、玲央と玄関について、靴を履く。
「行って平気?」
「うん。平気」
頷くと、玲央が玄関を開けて、外に出る。
あとからついて出て、鍵をかけていると。
人の気配がして、と同時に。
「優月くん?」
呼びかけられて、声の方を見ると。
「あ、春さん」
見知った顔に、ふ、と笑顔になる。
「こんばんはー」
「うん、こんばんは。 何か久しぶりだね?」
「ぁ、そう、ですね」
隣に住んでる、江波 春仁さん。
背は玲央と同じ位。短めの短髪。面倒見が良い人で、良く声をかけてくれるというか。去年住み始めた時に挨拶に行った時に、同じ大学の先輩だと知って、それから、何かと絡んでくれて。優しい、お兄さんて、感じの人。
会った時、3年生、今はもう4年なので、あまり大学にも行かないみたいで、学校で会う事はほとんど無い。
「優月くんさ、なんか、家に居なくない?」
「あ。呼びました?」
「実家から果物とかお菓子が届いてさ。分けてあげようと思ったんだけど」
「わー、ごめんなさい……」
「いいんだけど。 結局全部食べちゃったし」
クスクス笑われて、すみません、と笑うと。
春さんが、ふと、玲央を見やる。
「あ。えっと……玲央、お隣さん。4年生の春仁さん、だよ」
「……どうも。こんばんは」
玲央が、そう言って、オレをちら、と見る。
「春さん、オレと一緒の2年で……」
「神月玲央くんでしょ?」
オレが言う前に、春さんがそう言って笑顔。
「知ってるんですか?」
「うん。バンドの演奏、聞いた事あるし。優月くんと仲いいの、意外。よろしく」
春さんの言葉に、「玲央、ほんとに有名人だね」と笑うと、玲央は苦笑いしてる。
463
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる