【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「周知」

「きゅんとする」*優月

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 荷物を詰め込む時間より、違う所で、何だかとっても時間がかかった気がするけど。何とか詰め込み終わった。

「忘れてたら取りに来ればいいし。とりあえず学校の物、忘れてなければどうにかなると思うけど。もう平気か?」
「うん。ありがと」

 鞄のファスナーをじー、と閉めながら、玲央を見上げる。

「じゃ行くか」
「うん」

 頷いた所で、鞄を玲央がひょい、と持ってしまった。

「玲央、オレ自分で持てるよ」
「うん。まあ。――――……いいよ、別に」

 でも持つもの一個しかないし……。と思ってると。玲央の手が、オレの頭に掛かって、引き寄せられた。


「なんかまだぼーー、とした顔してるし」

 クス、と笑って、オレを斜めに見つめる。

「……してる?」
「してる」

 クスクス笑って、クシャクシャと、オレの頭を撫でてくる。


 ――――……確かにオレまだ。ずーっと、ぼーー、としてる。
 なんか。さっき気持ち良かったまま。ぼーー、と熱くて。


「オレのせいだろ」
「――――……」

「だから持ってやるって言ってンの」

 ふ、と笑う玲央の瞳が、ドキドキしてしまう位、優しいので。
 もう素直に、ありがとう、と言ってみると。

「ん」
 と、満足げな玲央。

「……優しい、玲央」
「――――……まあ……つか。我慢できずに触ったのオレだしな」
「それでも、優しいよ」

 言うと、玲央は、ちょっとだけ、照れたみたいな顔で、苦笑い。


「まっすぐ、優しいとか言われると――――……照れる」

 ……照れるとか、玲央に言われると。

 オレの方が、照れるし。
 なんか。胸の奥の方が、きゅんとする。

 きゅんとするって。
 ほんとにきゅんとするんだよね。

 不思議。
 ……どこがそんな音、立てるんだろ。

 そんな、よく分からない事を考えながら、玲央と玄関について、靴を履く。


「行って平気?」
「うん。平気」

 頷くと、玲央が玄関を開けて、外に出る。
 あとからついて出て、鍵をかけていると。

 人の気配がして、と同時に。

「優月くん?」

 呼びかけられて、声の方を見ると。


「あ、春さん」

 見知った顔に、ふ、と笑顔になる。

「こんばんはー」
「うん、こんばんは。 何か久しぶりだね?」

「ぁ、そう、ですね」

 隣に住んでる、江波 春仁えなみ はるひとさん。
 背は玲央と同じ位。短めの短髪。面倒見が良い人で、良く声をかけてくれるというか。去年住み始めた時に挨拶に行った時に、同じ大学の先輩だと知って、それから、何かと絡んでくれて。優しい、お兄さんて、感じの人。

 会った時、3年生、今はもう4年なので、あまり大学にも行かないみたいで、学校で会う事はほとんど無い。

「優月くんさ、なんか、家に居なくない?」
「あ。呼びました?」

「実家から果物とかお菓子が届いてさ。分けてあげようと思ったんだけど」
「わー、ごめんなさい……」

「いいんだけど。 結局全部食べちゃったし」

 クスクス笑われて、すみません、と笑うと。
 春さんが、ふと、玲央を見やる。

「あ。えっと……玲央、お隣さん。4年生の春仁さん、だよ」
「……どうも。こんばんは」

 玲央が、そう言って、オレをちら、と見る。

「春さん、オレと一緒の2年で……」
「神月玲央くんでしょ?」

 オレが言う前に、春さんがそう言って笑顔。

「知ってるんですか?」
「うん。バンドの演奏、聞いた事あるし。優月くんと仲いいの、意外。よろしく」

 春さんの言葉に、「玲央、ほんとに有名人だね」と笑うと、玲央は苦笑いしてる。




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