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第1章
「昔からずっと」
しおりを挟む「……堪忍」
謝ってるけど、笑ってるし。
「謝ってないよね……」
「可愛えから、無理。今のは、雅己が悪いやろ」
「……何がだよ??」
「お前からキスすんのも」
「……ちょっとしただけ、じゃんか」
「好きかもとか。……かもって何って感じやけど、でも可愛ぇ」
「……かもは、言葉のあや……」
ぐったりして、もはやなすがままに抱き締められていると。
啓介は笑った。
「何でさっきの話で、オレの事好きやってなったんか、ようわからんけど」
「んー……?? ああ、さっきの話……」
何だっけ。キスされて、全部ぶっとんだけど。
えーと……。
「……ああ、なんか…… 他の奴と比べられるとか嫌とか……もうその時点で嫌だなって思う奴も居たみたいで。和馬もそう思いかけてたらしいんだけど」
「雅己はなんて言うたの?」
「んー。ほぼ啓介と一緒。選んでくれたなら、そこからもっと好きになってもらえばいいじゃん、みたいな事言った」
「ああ。それでオレが同じような事言うたから、好きかも、か」
啓介はクス、と笑って、オレの頬にキスすると、そっと離してくれた。
「――――……でもオレらのが普通やない?」
しゃもじと茶碗を持ちながら、啓介がオレを見て。
「毎日さ、色んな奴と会うて、自然と比べてると思わん?」
「んー?」
みそ汁をお椀によそって、カウンターに置いて、啓介を振り返る。
「毎日会う奴いっぱい居るけど、そん中で、オレはお前と居たいって思うから居るんやし。どんな奴でも、自然と、色んな奴と比べて、好きな奴を決めてると思わん?」
「……まあ、そうだね」
「その女の子は、正直なんやないの? 言わなきゃええのに。ちょっと考えさせて、だけでええやん」
「確かに」
「でもそれで選んでくれたんなら、むしろオレは、ええと思う」
「――――……うん。そーだね」
ふ、と笑ってしまう。
「オレはさ、ただ何となく、考えてくれるならいいじゃん、て思っただけなんだけどさ」
「ん」
「……好きかもって言ったのはさ」
「うん?」
「……啓介と、色んな事話してきてる気がするけど……オレはお前が言う事が、いつも好きだなって思うかもなーって」
「――――……」
「違う事言う時でも、その考え方が好きかもって。今まで、嫌いって思った事、ないかもって、なんか、思ったんだよ」
「かもかも、気になるけど」
くす、と笑う啓介。
「……はっきり全部覚えてないと思うから、かもって言ってるだけ」
「ああ、そういう意味の、かも、なんや」
「そう」
返事をしながら、カウンターからテーブルへと料理を運ぶ。
「雅己、麦茶飲む?」
「うん」
「ええよ、すわっといて」
「うん」
啓介がコップを置きながらオレの目の前に座った。
「いただきまーす」
2人で手を合わせて、食事開始。
啓介は、ふ、と笑って、オレを見つめた。
「オレ、お前の事、嫌いって思うたこと無いって言うたよな?」
「あ、うん」
「一緒って事?」
――――……そう聞かれると、ちょっと恥ずかしいけど。
……でも、そうかも。 あ、また、かもって言っちゃった。
「うん。そう」
かもを付けずに頷くと、啓介は、ふ、と嬉しそうに笑んだ。
「――――……オレ、後で母さんに、引っ越しのこと、電話してみる」
「……ん」
啓介がますます嬉しそうに笑うのを見てると。
やっぱ、オレも嬉しい。
なんか。
色々認めて受け入れてしまうと。
……オレってもしかして、昔からずっと啓介の事が好きだったのではないだろうかと。 ちょっと思ってしまう。
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