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第2章
「いつか」
しおりを挟む「めちゃくちゃ食ったー」
「でしょうね」
「どこに入るんですか、雅己先輩のそのお腹のどこに」
「……なんか今ぽっこりしてるかも」
浴衣の上から、お腹をすりすり触りながら言うと、周りの皆に笑われる。
「あれだけ食べればね、て感じですけど」
「先輩何で太らないんですか?」
「……何でだろ?」
あはは、と笑ってると、他のテーブルの皆もどうやら食べ終わったみたいで、「そろそろ戻るー?」と言い出してる。
皆とテーブルから立ち上がって、バイキングの会場を出て、廊下を進んでいると、前方に啓介。女子マネ二人に囲まれてる。
まあ別に。気にしない。と念じる。
そりゃ多少は、ん、と思わなくはないんだけど。
……啓介を疑うとか、嫉妬するとか。そういうのは、こういうとこでしたくない。せっかく、すごく楽しいし。
啓介が、オレのこと、好きだって思ってくれてるのは、分かってる。
いつも、十分なくらい、伝えてくれてると思うし。
あんなに分かりやすくいつも言ってくれてるのに、ちょっと離れた位で、気持ちを疑うようなのは、全然ない。
「お土産見る人いるー?」
「あ、見る見るー」
通りかかった、フロントの近くのお土産屋さんに寄る。
「どうしようかなーたまには実家に何か買っていこっかな」
「いいんじゃない? あんま帰ってないの?」
要に聞かれて、うん、と頷いて、考える。
そういえば、一人暮らし始めて、啓介のとこに入り浸りで。そのまま引っ越して……全然帰ってないぞー。引っ越し関連も電話で済ませちゃったし。
「あー全然帰ってないかも。ヤバい。買って帰ることにする」
「それが良さそうだな」
クスクス笑われる。
うちの両親はまあ、いい意味で、放任というか。過保護では絶対無い。
自由、というか。まあオレはそれが楽ちんで良かったけど。
一人息子のオレが、啓介とそうなったって言ったら、どうするのかなぁ。
――――……反対するかな。どうだろ。
反対されたら、オレ、どうするかな。
んー。
……お菓子を見ながら、数秒。
……啓介ならオッケイって言われそうな気もするけど。
でも、付き合ってることは言わないっていう選択肢もありかな。
むやみに全部話して、悲しませるならやめた方がいいような気もする。
その内、結婚しないのーとかは言われるかもだけど。
多分結婚しないっていう選択を、絶対だめとは言わないだろうし。
……啓介はどうするんだろ。
やっぱりそういうところだけは、男と女のカップルより、色々、考えなきゃいけないことが、多いよなぁ。
……んー。
まあそれでも……。
「雅己」
あ。啓介。
隣に立って、オレが見てるお菓子に視線を向ける。
「自分の?」
クスクス笑われて、ふ、と笑ってしまう。
「違う、実家。しばらく帰ってないから」
「ああ。せやな」
「旅行終わったら、一回実家帰ってくるね」
「ん。オレこないだ法事で家族は会うたからなぁ。どないしよかな」
「んー。でも、おみやげ持って一緒に地元行く?」
「せやな。それでもええよ」
笑いながら頷く啓介に、じゃそーしよ、とオレも笑う。
……男と女に比べたら、考えること、多いけど。
啓介との関係。……続けたいからなぁ。
「オレも雅己んち、行こうかな」
「ん?」
「一緒に暮らすし、挨拶がてら」
「あ、そう? 来る?」
「……せやけどちょぉ、緊張するなぁ」
「何で?」
首をかしげて聞くと、啓介は、周りを見てから、こそ、と囁いてくる。
「……息子さんをください的なやつ。……せえへんでも、緊張するかも」
「え。……啓介、それしたい?」
「どうやろ。……いいタイミングがあれば。してもええかな」
「……そっか」
ふうん、と頷く。
そうだね。いいタイミングで。
悲しませないで、納得してもらえるような時に。
「まあ……いつか考えようね」
そう言うと、啓介は、オレを見つめて、何やらめちゃくちゃ優しく微笑む。
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