【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆「高校生編」

「わからない」*彰

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 仁と少し話して、そのままになったまま、また時が経った。
 麻友と別れた事について、ようやく誰にも何も言われなくなってきた頃。
 寛人に、いきなり、言われた。

「仁のこと、どーした?」
「――――」

 お昼休み、食事を食べ終わって、ぼんやりしてた時。
 あれから一度も、その話、してこなかったのに。

「……何で今?」

「いや。今ちょうど他に誰も居ないし。思い出したから」
「……あんまり、二人になるタイミングがないから…… 変わってない」

「あの後は、話した?」
「……少し話したけど」

「……キスされた?」
「………」

「されたら、ちゃんと拒んでる?」
「…拒んでるけど……」

「拒んでもキスされるとかって。そもそもちゃんと拒んでねえんだと思うけど」
「――――」

 黙ったオレに、寛人は声のトーンを更に低くした。

「……別にさ。ほんとの兄弟じゃねーし。……ていうか、オレ的には、そこもどうでもいいけど。……仁に応えたいなら、そうすりゃいいと思うけど」

「……寛人って、なんか、許容範囲、広すぎない?」

「そうか? ていうか、オレは、お前にあわせてんだけど」
「あわせてる?」

「お前が、そうしたいなら、いいんじゃねえのって言ってんの」
「そうしたいなんて、言ってないじゃん」

「……だってさ、普通嫌だと思うぜ。いくら可愛い弟だって」
「――――」

「お前の、仁に対しての許容範囲が広すぎるんだよ」

 もうなんか、自分が良く分からない部分まで、見透かしてるみたいに話す親友の言葉が痛くて、机にぺちゃんこにつぶれる。

「でも、これに関しては……やっぱり無理だと思う……」
「ふーん……」

「………未来、見えないもん……」
「まあ、言いたいことは分かるけどな」

 深いため息をつく。

「……あ。噂をすれば。彰、下見てみ」
「?」

 窓から見下ろすと、仁が女の子三人に囲まれて歩いていた。
 仁の足は前を向いてて、女子三人の向きは、皆、仁に向かってる。まあ、いつも通り、まとわりつかれてる、て感じかな。

「ほんと、あいつ、モテるな……まあ、モテるか」
「そうだ、ね」

「……なのに、お前がいいって。……よくわかんねーな。良い兄貴でいいじゃんかなあ? そういう対象にしちまうって、何でなんだろうな」
「……オレが聞きたい」

 その瞬間。
 何だか、すごく面倒くさそうな顔をしながら、仁が、急にこっちを振り仰いだ。ばっちり目が合ってしまった。オレと目が合った瞬間。ふ、と仁が笑った。一瞬前まで、ものすごく嫌そうな顔を、してたのに。

 仁のその笑顔を見て、女の子達も、ぱっとこっちを見上げる。思わず、オレは、窓から引っ込んだ。そしてそのまま、机にまた突っ伏す。


「……つかさあ」

 その光景を、すぐ近くで見てた、寛人は。


「……もう諦めて、受け入れれば?」
「それは……無理」

 オレが言うと、寛人はいよいよ首を傾げた。

「何で無理なの? たまたま、親同士が再婚した、他人じゃんか」
「……もう、十年以上も兄弟なんだよ」

「つか、オレには、あいつが、諦めるとは思えないけどな。だって、あいつ、今、視線を感じたとかじゃねーだろ。ここが、彰の教室だから、見たって感じじゃん。いつも見てんのかな? ほんと、執着がすごすぎて、オレには、わからねえなー……」

「……オレにも分かんないよ」

 はあ。
 ほんとに。


 どうして仁は、オレのこと、好きなんて、思うんだろ。

 ただ好きなのと、キスしたりするのとって、
 重ならないよな。

 仁は、オレのことを兄としては、見てなかったってこと?

 もうほんと……分かんないな。






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