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◇最悪な部長命令
しおりを挟む部長って言っても、かなり若い。どんだけ仕事出来れば部長に抜擢されるんだか。取引先の人が、先輩を狙ってるとか。……普通その部下に言う? まあ……この人は言いそうだけど。
会社の上司……ってより。
むしろ、チームに居た時の、先輩達に雰囲気が似てる。まあずっと上品だけど、凄味があるっつーか。……兄貴とかこの人とか、そんなばっかが上司に居る会社ってどーなの。
あ、でも、他の部の部長は、割とおじさんで、いかにもな人が多いか……。
「大事な先輩の為だろ。何もないにこした事は無いけど、お前が張り付いてれば、何も無くて済むだろうから。明日も有給扱いにしてやるから」
「……有休ってもともと権利なのでは?」
出来たら別で取りたい。あれ? でもこの2年間あんまり取った事ねえな……。
「ばかだなぁ、三上、この会社の有給消化率なんて、いまだめちゃくちゃひくいぞ? 使えてラッキーってなもんだって。なんなら土日旅行して帰ってくれば? 交通費会社持ちだ。さすがに土曜の宿代は無理だけど。それだけ出せば2泊3日の旅行だし。良くないか?」
「――――……」
少し惹かれるが、いやいや、先輩とだよな?
うーん…………。
――――……まあいっか。先輩はどうせオレととか、ねえだろうし、好きに帰して、1人でうまい店堪能して、なんなら京都のイイ女引っ掛けて……。
どうせもう、部長の中に、オレが断る選択肢は入っていなそうだ。
「……分かりました。行きます」
「お、そうか。よし、じゃあ、渡瀬、オレの席に呼んで。お前は、出張の手続きして」
「はい」
一緒に部屋に戻り、部長が席に戻ったのを確認してから、先輩に部長が呼んでる事を伝える。すぐに部長の所に行った陽斗先輩は、え、という顔で、オレの方を見てくる。
はー、と、息を付きながら、出張の届け出用紙を書いていると。
先輩が戻ってきた。
「三上、オレと一緒に京都行くんだって?」
「……はい」
「いいのか? 用事ないのか?」
「頼まれたので、行きますよ」
――――……オレと行きたくないって事で聞いてんのかもしんねえけど。
そう思いながら、言うと。
「――――……そっか。分かった。じゃあ、その届け書いて出したら、今三上がやってた仕事、振り分けるからよこして。来週に回せるものは回して」
「はい」
「20分位で出たいから、急げる?」
「はい」
急ぐのは、日々、慣れてるし。
そんな風に思いながら頷いた。
早々に退社して、電車で移動しながら先輩がネットで新幹線を予約しようとしてる。平日の昼間の電車は、やけに空いてて、なんか変な感じ。
座席も空いているので、2人並んで座る。
――――……あー。これで京都まで行って、明日まで一緒?
思ったより、かなりキツイかも……。
なんか気まずい。
営業に2人で回る時も多かったけど、車移動が多いから、オレは大体運転してるし、営業先の話とかされてるから、あんまり間が持たないとかもないんだけど――――……。
「空いてるから自由席にするけど良い?」
「はい」
自由席なら離れて座ってもいいし。
その方がいいかも。
「向こうの会社に着くの18時前位かな……」
「……わざわざ京都までとか、あるんですね」
「あるよ。こっちがミスった時は、最大限、対処しないと」
「――――……でも今回、先輩のミスじゃないですよね」
「まあそうだけど。仕方ない、あっちがオレに来いって言ってんだから、行かないと。上司連れて来いとか、色んな事言う奴いるから。覚えときな。 何で、とか言ってても始まんねーの。動かないと」
「――――……はい」
まあ。ほんと。清々しいな、この人の考え方は。
めんどくせーけどしょうがねーな、とかじゃなくて。
一番スムーズに、うまくいく方法を探す。多少手間がかかろうが、面倒だろうが、愚痴も言わない。
そういう姿勢は――――……好き、なんだけど。
……は。好きとか、何言ってんだ、オレ。
好きじゃねえし。
いや、ただ、仕事の話だし。一般論で。
姿勢として、良いなっつー、話で。
――――…………何、頭ん中で、1人で、言い訳してんだ、オレ。
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