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◇狼狽えまくり。
しおりを挟むやっぱり、他の男とだったら、何のためらいも無く、一緒に入って満喫すると思う。断る不自然さが無理。突っ込まれたら耐えられない。仕方ない、一緒に入ろう。
心は決めたけれど、とりあえず先輩が体を洗い終わって、湯舟の中に入っててくれると良いなと思って、だいぶ遅く、風呂場に向かった。
「三上、超遅いー! なあ、悪い、水持ってきて? ゆっくり入りたい」
「持ってきますね」
ああ、良かった。もう温泉に浸かってた。
安心しながら、部屋に戻り、冷蔵庫を開ける。
ペットボトルの水を2本持って、風呂場に戻る。
「はい、先輩」
「ん、ありがと」
ペットボトルを渡しながら。
温泉、ちょっと濁ってて良かった……なんて思う、アホな自分。
ため息をつきながら、服を脱いで、中に入る。
体を洗って、シャワーを浴びた。
別にこっちが裸なのは構わないんだけど――――……。
はー。
湯舟、広くて良かった。
少し間を空けて、お湯につかる。
自分用のペットボトルを開けて、水を飲んでいると、先輩がくす、と笑った。
「なんかさー、あれやりたいよな」
「なんですか?」
「あれ……何て言うの? あの――――……お盆にさ、日本酒とさ」
「ああ、お湯に浮かべて、お酒飲むやつですか?」
「そうそう、それ」
「でもあれ、お風呂で酒飲むと事故が多いって、やめてるとこが多いって、前聞きましたよ?」
「……三上って、つまんねー事言うのな」
む、と、ふくれて、お湯に埋まってる。
ちょっと可愛い気がして、そんな事を思っている自分に苦笑しつつ、また水を飲んでいると。
ふ、と上を向いた先輩が、めっちゃキレイ、と笑った。
「月。綺麗だよ」
笑みを含んだ、楽しそうなそんな声に、何気なく、先輩の方を見て。
「――――……」
上向いてるから、やけに目立つ、白い首筋。
ドキ、と胸が弾んで。
――――……や、ば。
……マジで、ヤバい。
もう、今日、夕方からだけで、一体何回そう思ったか分からないけれど。
「三上? 見えた?」
「あ、はい――――…… うん。月、綺麗、ですね」
先輩の声に、咄嗟に上を見て、何とか、答えたけれど。
「な?」
ふ、と笑って。
先輩が笑う。
――――……何回も、ヤバいと思いながらここまで来たけど、今が、一番ヤバかった。
白い首筋が、あんまりキレイで。
触れたい、とか――――……。
「そういえば、三上って、彼女いるの?」
「……え? あ、彼女?」
「うん」
「……今は、居ないです」
居たら、こんなにヤバくなってない――――……か?
……つか。
…………最近全然その気になんなくて。
久しぶりに合コン行って、一晩だけの関係は持っても、続ける気にもならず。
「ふうん? モテそうなのにね」
そんな事言いながら、先輩は空を見上げるのをやめて、くる、と振り返ると、膝立ちになって窓から下の庭園を見下ろしてる。
腰までしか湯船に浸かってねーし。
もう見ない見ない見ない。
頑なに視線を逸らし、ペットボトルの水をひたすら飲んでると。
「社内にもお前の事好きな子、何人か居るの知ってる?」
「……あー……何となくは分かりますけど。でも兄貴に、絶対ダメって言われてて」
「え??」
「社内の女、適当に食ったら殺すって」
「殺されちゃうの?」
「……そうみたいですね」
先輩は、ぷ、と笑って、大変だね、とオレを見てくる。
温泉でちょうどいい感じに頬が赤くて。
髪も濡れてて、普段と違う。
少し、幼く見える。
なんか、可愛い――――……って。
いやいや。
可愛くない。可愛くない。
男。
自分に言い聞かせるとともに、なんとか、会話に神経を戻そうと、頑張ってみる。
なんの会話中だっけ、今。
先輩何て言ってたっけ……。
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